へ〜たさんの感想
2013年7月6日
ヤマもなく、オチもなく、ただただ紀州熊野の田舎町の日々が描かれる。殺伐とした文体とあいまって、濃密な小説。 信じられないほど複雑な血縁関係、近親相姦、白痴の子供とのセックス、殺人など、ショッキングに描こうと思えばいくらでもショッキングに描ける事件は、しかし、土を掘り、セメントを流し込む、ごく単調な土方作業でもあるかのように淡々と描かれる。そして、それは実際に数十年前の「路地」における日常だったのだろう。 中上健次の代表作との誉れ高い一冊だが、それほど評価の高い小説だとは思わなかったなあ。
(なかがみ・けんじ)1946~1992年。小説家。『岬』で芥川賞。『枯木灘』(毎日出版文化賞)、『鳳仙花』、『千年の愉楽』、『地の果て 至上の時』、『日輪の翼』、『奇蹟』、『讃歌』、『異族』など。全集十五巻、発言集成六巻、全発言二巻、エッセイ撰集二巻がある。 「2022年 『現代小説の方法 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」