なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか? [Kindle]

著者 :
  • ダイヤモンド社
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  • # なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?

    山口揚平

    ## 概要

    印象的なタイトルだが、ピカソについて語っている本ではない。ピカソのお金との向き合い方を引き合いに、お金とは何か考えましょうという本。お金は発行している国家の信用により、その価値が担保されているが、国家の信用が揺らいでいる今、お金がどのように変わっていくのか、また変わっていく世界でどのように生きていけばよいのか、筆者の考えが示されている。「お金ってなんですか?」という問いに、自分の考えをちゃんと持ててない人にはおすすめな本。

    ## メモ

    * 価値の交換には、マネタイズ: value to money, キャピタライズ: credit to money, value to valueの3種類がある。現在大手企業が、その企業の信頼に基づいてポイントをキャピタライズしており、そのスケールは非常に大きい。そして今後、個人もキャピタライズをしていく時代がやってくる。

    * 現代は国家の信頼が高くない国においてもネットワークが非常に発達している。そのような国・地域では、等価交換がお金を介した価値の交換よりも盛んなことがある。

    * 等価交換は、なにかほっこりしたものである。自分の経済の数%を、等価交換で行ってみると、その威力を感じるはずだ。

    * 銀行は、我々の預金を担保にお金を貸し出しているのではない。貸したお金を担保に、お金を貸し出しているのだ(ざっくりいうと、1の貸し出したお金を担保に、10のお金を貸し出すことができる)。→実体経済と金融経済の乖離

    * これからは金融系座ではなく、信用経済の世界になる。

    * 生命保険は、不安を糧に稼ぐ。自分が死ぬことにベットするギャンブルであり、賭けに参加した人が勝利する条件はその人が死ぬときである。

    * ギャンブルは、欲望を糧に稼ぐ。宝くじなど公共賭博は、市場経済が働かないため、ヤクザの賭博と比べると法外なテラ銭を取られる。にもかかわらず多くの人が購入する。興味深いことに、生命保険とギャンブルの市場規模はどちらも20兆円ほどで、ほぼ同じである。

    * お金は。そのモノが持つ言語化できない価値を、ばっさり、非情に表現する。
    →お金は、だれもが理解できる数字であるため、非情に鋭利なメディア特性を持つ。

    * キャピタライズが主流になる世界では、お金に現れない、文脈、ストーリーが大事である。

    * 信用は以下の式であらわされる。
    信用 = (専門性×確実性×親密度)/利己心
    利己心の占めるウエイトが非常に大きい。確実性は、コミットメントのこと。

    * 利己心、私欲というノイズを削ることで、自分の使命が見えてくる。→自分を透明に保つ

  • ピカソは、すごいお金持ちだったという。自分の絵が描きあがると、知り合いの画商たちを読んで、その絵について語った。さらにそれぞれの画商に、値つけを競わせた。また、細かい支払も小切手を使ったそうな。ピカソのサインのある小切手ということで、多くの人が換金しなかったからだ。結果、死んだときにはすごい資産を形成していたという。単に、知恵が回るということでかたずけられるはなしではないだろう。ピカソはお金というものについて、理解していたのだ。

     日本人はお金の理解が足りないという。お金には、使う、ためる、稼ぐ、殖やす、流すというステップがあって、日本人の多くは、せいぜい使う、ためる、稼ぐで止まってしまう。最近になって投資によって殖やすという視点も出てはいる。著者の主張は「流す」ことの大切さにあるのだろう。流すとは、新しい価値を想像するために、何かに寄付するのでもいいし、自分で事業を立ち上げるのもいい、こういう価値があってほしいというものに対して投資するのも流すプロセスのひとつだ。

     本書のすべてを理解したり、うなずいたりできたわけではないんだけど、なかなか面白い視点だったと思う。

  • お金に対する考え方の整理のため。ピカソを例にお金を取り巻く構造を提示している。

    「信用」を基点においていく社会、もしくはその要素を一定程度含んだ社会に今後遷移していく。無機的な貨幣経済への反動が背景。価値を創造していくことから、信用をベースに個人や企業で貨幣に変わるものを生み出し、価値と交換したりお金を生み出したりしていく動きが起こる。お金からお金を生む動き以外の動きは上記。

    そのため、今後は信用を築いていく必要があり、それらは時にセーフティネットとして機能する場合もある。この感覚は少しわかる。

    何よりもお金の話をするにあたり、「どう生きるか」という切り口からアプローチしていることもあり、現状の自分に当て込みやすかった。信念や使命の発見も必要であり、そのためには利己を抑制し、探すことを止める。ここはブッダの思想に近いところがある。内を探すというより、「探すのを止める」というところがまさにそう。

    事業に対しても、ニヒリズムっぽく「ゲーム」と言っているのではなく、分析の結果、「価値と信用創造ゲーム」と言っているのが、冒頭の「お金はコミュニケーションツールに過ぎない」と部分とフィットして、やはりこれも腹に落ちる。

    2013年時点でのクラウドや電子マネーのは早いキャッチだと感じるし、それに対する見立ても22年時点、当たっているとも感じた

  • ゴッホとピカソを対比した、クリエイターのマネタイズに関する本と期待して読みましたが、そういった内容のものではないようでした。両者の生き方に対する考察もなく、一般的なお金に関することが書かれています。

  • 『コンサル一年目』
    情報をたくさん集めるのではなく、本質を抽出する


    観想力・空気はなぜ透明か

  • 「コンサル一年目が学ぶこと」にて本質を追求するための参考図書として紹介されていた本。

    タイトルは「なぜゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?」だが、ゴッホとピカソの逸話は少ししかなく、ほとんどはお金、価値、信用といったものの本質について論じている。

    個人的には、お金とは直接関係がない「使命を見つけるための最良の方法は、それを探すことではなく使命でないもの(私心・私欲)を徹底的に削ることである」という話が一番印象に残っている。
    この話から「本質を見つけるためには、実はそれ自体を探すことではなく、本質でないものを見ないようにするということが近道である」と抽象化して読み取った。

    本題のお金に関して印象に残っているのは以下の話。


    お金とは、価値の結果であり、信用を数値化したもの。
    Webにより個人の信用は可視化され、永久に保存される社会となった。
    個人の信用が可視化されお金に換えることが可能な社会では、私たちは皆「上場」していて「株価」がついているということになる。


    少額でも小切手を多用し、実質0円で買い物を続けていたピカソの話は「そんな手があったのかと目から鱗だった」
    ※小切手を換金して買い物の代金を得るよりも、ピカソのサイン入りの小切手の方が店主にとっては価値が高く換金しない(=信用をお金に変えているということ)

    本書を通じて、お金はコミュニケーションの手段の一つでしかなく、絶対的なものでは無いということがよく分かった。
    本書から得たエッセンスを自身に加えて、これからも物事の本質を見抜く力を磨いていきたい。

  • コンサルや投資の仕事の人って、
    「お金は価値を表す。給料の高さは社会に与える影響力に比例する。」
    「会社の売買はその会社を良い方向に導くためのもの」
    なんてことを言ってる(イメージがある)が、
    この著者は違う。
    数字の話じゃなく、血の通った捉え方をしてくれる。

    以下、引用。
    法人の売買は法律によって認められているが、それは時に、お金による暴行であり、自然や人間がつくり上げた価値を冒涜する行為にみえることもある。
    資本主義がもたらした格差や富の偏在は、課題ではあるが問題の本質ではない。本当の問題は、お金という数字が持つその鋭利なメディア特性にあるのだ。
    お金という鋭利な刃をコミュニケーション媒体とする資本主義システムを採用したことによって、僕たちはみずから世界を分かち、文脈やつながりを分断し続けてきた。その結果として感じている息苦しさ、自分の存在さえも一般化・匿名化されることによる自身の意味の喪失感こそが、資本主義の問題の本質である。

  • 物事の本質を見極めるために。

    そもそも仕事で最近直面しているのが、一体何が本質なのか?その本質を見極めるためには、いかに冷静に事象を見ていけるかという事だ。

    僕にとっては仕事のミッションは明確で、今の会社で社会に与える価値も明確だが、肝心の信用が欠けているかもしれない。この本読んで今真っ先にやる事は、どうやったら信用を獲得していけるかを発見した。

    最近ではSNSで信用を上げていく事もできるだろうし、また日々の自分の行動によって信用を得ていく事はできるだろう。

    作者の言わんとしている事が、我々の会社の価値観と非常に似ていて、我々の手法をどこかで学ばれたのかと思いたくなりました。

  • 91歳で生涯を閉じたピカソが、手元に遺した作品は7万点を数えた。それに、数カ所の住所や、複数のシャトー、莫大な現金等々を加えると、ピカソの遺産の評価額は日本円にして約7500億円にのぼったという。そんなピカソのエッセンスは現代のエッセンスとも全く変わらない。それを丁寧に説明していく本。

    詳細は下記。
    https://note.com/t06901ky/n/nc1ae32e164d0

  • 半分くらいまでと、あとはパラパラ読み。
    アートの興味から借りたので、全く違うくて経済の、お金のお話しでした。

    働きながら、別の活動を、お金を流そうなど、今興味ある話もあってうんうんとうなづきながら読めた。

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著者プロフィール

山口揚平(やまぐち・ようへい)
事業家・思想家。早稲田大学政治経済学部卒・東京大学大学院修士(社会情報学修士)。専門は貨幣論、情報化社会論。 1990年代より大手外資系コンサルティング会社でM&Aに従事し、カネボウやダイエーなどの企業再生に携わったあと、30歳で独立・起業。劇団経営、海外ビジネス研修プログラム事業をはじめとする複数の事 業、会社を運営するかたわら、執筆・講演活動を行っている。NHK「ニッポンのジレンマ」をはじめ、メディア出演多数。著書に、『知ってそうで知らなかったほんとうの株のしくみ』(PHP文庫)、『デューデリジェンスのプロが教える 企業分析力養成講座』(日本実業出版社)、『そろそろ会社辞めようかなと思っている人に、一人でも食べていける知識をシェアしようじゃないか』(KADOKAWA)、『なぜ ゴッホは貧乏で、ピカソは金持ちだったのか?』(ダイヤモンド社)、『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今身につけるべきこと』(SBクリエイティブ)、『新しい時代のお金の教科書』(ちくまプリマー新書)などがある。

「2021年 『ジーニアスファインダー 自分だけの才能の見つけ方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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