世界から猫が消えたなら [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ずっと読んでみたかった小説。川村元気さんの著作は「四月になれば彼女は」「百花」のどちらも大好きなので期待してたのだけど、なんだか文章も稚拙だしストーリーの詰めも甘いし、色々と違いすぎてびっくりしちゃった。
    こっちはまだ処女作だから……、ということであれば数年で見違えるほどの文章力がついたんだろうか。すごい。

    とはいえ「世界から猫が消えたなら」というタイトルと題材はとても好き。世界から何かを一つ消すたびに、一日延命できる。分かりやすいギブアンドテイクだ。
    誰に言われたわけでもないとは思うんだけど、私は小さい頃からなぜかずっと「何かを得るためには、何かを失わなければならない」という強迫観念にも似た感覚がある。この世界は必ずそうやって均整が保たれてると信じてる。

    電話、映画、時計、猫。
    それらがなくなったとき、私はそのことに気がつけるんだろうか?
    失って初めてその大切さに気がつく、とはよく言うけれど、失ったことにさえ気が付かずに生きているとしたら?そのことを考えると、冷たい風に吹かれたような気持ちになる。
    小説は良いところで尻切れとんぼのようなラストだったけれど、なんにせよ私はまだ生きている。自分にとって大切なものもひとまず分かる。
    だから、生きているうちに、大切なものがまだ失われていないうちに、できることがあるのなら。先延ばしにせずに行動にしていったほうがいいのだろうね。

  • 脳腫瘍で余命がいくばくもないと発覚した時、世界から何かをひとつなくすと寿命を一日増やしてやると悪魔が取引を持ちかける。

    あちこちの書評でみんな良いといってるので読んでみたのですが、多分肌に合わないだろうな、と思って読み始めたらやっぱり肌に合いませんでした。著者が高名な映画プロデューサーだということもあるのでしょうが、いかにも日本の映画っぽい作り込みやテンポが自分にとっては合わなかったです。
    泣きどころの設定とかがえげつなかったりするものの、「死を想う」という大切なテーマに肉薄した良作ではあると思いました。映像にすれば2時間で語り切れるくらいの深みというのもポイントで、これは映画で観てナンボなのかもしれませんね。

  • ざっくり紹介するとギブアンドテイクなお話。
    誰しもがみんな、失ってからわかる大切さ。それがひしひしと伝わる。
    心がギュッとなる素敵な本でした。

  • 不治の脳腫瘍で余命は「一週間も怪しい」と宣告された郵便配達員の僕のところに、自分そっくりの悪魔が現れ「世界から何かひとつを消すたびに寿命を一日延ばしてやる」と告げる。電話、映画、時計。逡巡しながらもそれらを消し生き長らえてきた僕は、いよいよ猫を消すか否かの選択に迫られる。

    悪魔が提示する「次はこれを消しますか、それとも死にますか」の選択を前にして、その消されてしまうものにまつわる思い出や後悔や大事な人なんかを思いながら、自らの人生を総決算していくといった、ゆったりと流れる走馬灯のような一週間を送る主人公。この彼が死を前にしているというのにまあ心の綺麗な男で、寿命を延ばすために消したはずのものから「死ぬ前にやるべきこと」をきちんと拾い集めて、悔いのない一生にしようと奔走する。正直言うとこの綺麗さやひたむきさはちょっと胡散臭い。たかだか30歳程度の青二才がここまで綺麗に悟れるか、と。

    彼の心の綺麗さに文章も呼応しているかのように、とにかく直感的に「これは綺麗だなあ」と感じ取れる言葉が並ぶ。合う人には凄く合いそうだけど、僕にはちょっと難しかった。自分の人生とか夭逝してしまう自分とかに対しては、もっと劣情があってしかるべきだと思ってしまう、そんな自分が捻くれてる様に感じられて、ちょっとやるせない。
    映画化されてるのを知ってるから余計に思うのかもしれないけど、映像にすることを前提にこれ書いたんだろうなあと。言葉で物語を作るならもうちょっと感情をこねくり回してくれると入りやすいんだけど。

    そもそも、僕はタイトルから「猫が消えた場合の世界を考える実験的な小説なのかも」と期待してしまって、ペット界で犬が覇権を握った場合だとか鼠のせいで大航海時代が上手く進展しなかった場合だとかを想像して勝手にわくわくしていたのが悪いのだ。けど、映画化の主演が佐藤健と宮崎あおいの時点でそんな話なわけねーじゃん、と分かっているのに無駄な妄想をしてしまう捻くれた性格が、こういう作品を楽しむことを僕に許さない。素直に生きてこなかったツケだ。

  • 設定はおもしろい。
    自分の命と引き換えにこの世から一つのものを消す。
    当たり前にあったものがなくなる世界。


    内容はなんとなくこちらが想像できる内容でした。親子のハートフルな話なのか、設定を面白く展開するのか、中途半端に感じました。


  • 23歳の誕生日、映画館でこの本の映画を観た。映画館なのに嗚咽しながら観て、帰りに母に産んでくれてありがとうとプレゼントを買って帰らせた作品だった。
    主人公と同じ30歳、初めて本で作品を読んだ。23歳と30歳では受け取り方が微妙に違う。
    いつ死ぬかわからないから今を大切にとか、親を大切にしようとか、そういう気持ちで終わるのではなくて、ただぼーっと主人公に共感しながら静かに読み終わっていた。後悔しないように生きようじゃなくて、後悔こそが生きた証か、そうか、と何か肩の荷が少し降りていた。
    "人間というのはとかく、選んだ人生から選ばなかった方の人生を眺めて、うらやましがったり後悔したりしている生き物ですから"
    悪魔の言葉通り、人間らしく小さな後悔を繰り返して積み上げて生きればいいかと思った。
    本もまた、年始に両親に会う楽しみを膨らませる作品だった。

  • 死を目前にすると懐古や後悔ばかりに目が行ってしまうが、やはり想いを繋ぐことこそが最も意味のある行為だと思った。
    「何かをするのに遅すぎるということはない。たとえ、明日死ぬとしても。」
    そんなメッセージが伝わってくる。

  • 【2016.06.02】

    私たちにとってモノとは何だろうか。思い出であろうか、自分の価値を反映するものであろうか。それがなくなることで、私たちが失うものは何だろう。もしモノ①が無くなれば、そのモノ①に抱いていた価値や役割はまた別のモノ②に宿り、そうなることで生活が変わらないのであれば、大切なのは無くなったモノ①ではなくその価値や役割であることが分かるのではないか。しかし、本当にそのモノ①の概念が無くなってしまったとき、私たちはそれに気付くことができずに、新しいモノ②に依存してしまうのだろう。

  • サラリとした文章でサラッと読めて
    ハラリと泣いてた
    実際死ぬってわかったら、こういう感情なのかも…
    と思った

  • 川村元気さんは「百花」を読んで好きになった。「百花」は、認知症を通して家族を描いた。「世界から…」は、死を通して家族を描く。英語でも言う。Love is not feeling. It’s actions. 積読本からなんとなく惹かれる表紙のものを片っ端から読んでいるんだけど。死生観に関するものが続いている。私、死ぬんかな。

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著者プロフィール

かわむら・げんき
1979年、横浜生まれ。
上智大学新聞学科卒業後、『電車男』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『君の名は。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、’11年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。’12年に初の小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞にノミネートされ、佐藤健主演で映画化、小野大輔主演でオーディオブック化された。2作目の小説にあたる本作品『億男』も本屋対象にノミネートされ、佐藤健、高橋一生出演で映画化、’18年10月公開予定。他の作品にアートディレクター・佐野研二郎との共著の絵本『ティニー ふうせんいぬものがたり』、イラストレーター・益子悠紀と共著の絵本『ムーム』、イラストレーター・サカモトリョウと共著の絵本『パティシエのモンスター』、対談集『仕事。』『理系に学ぶ。』『超企画会議』。最新小説は『四月になれば彼女は』。


「2018年 『億男 オーディオブック付き スペシャル・エディション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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