恋 [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
4.11
  • (14)
  • (16)
  • (6)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 135
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (418ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 複雑な読後感。
    面白くて引き込まれる感じがあったにもかかわらず、いつまでも続く変わった片瀬夫婦のありようや、ふうちゃんの心理描写に途中少しうんざりしつつ、それでも最後まで読み進めたのは、主人公が片瀬夫妻でも矢野ふみこでもなかったからかもしれない。
    全く興味本位だけでいえば、マルメロを移植してまでふうちゃんを大切に思っていたのに、なんで鳥飼に会わなかったんだろうということが残念な気がした。
    心理合戦とでもいうのか、裏の裏をかくようなちょっとには立ち入れない『秘密』の中に生じる意識が、理解できることばかりでないことが、後半少し私がイラつくことになった気もする。
    編集者の佐川のような第三者的な人物から見た評価が一番安心できたのは、作者にとっては残念なことかもしれないと思う。

  • 鳥飼はノンフィクション作家をしている。連合赤軍浅間山荘事件の資料を探していて新聞に事件と同時に載ったある若い女の事件に興味を持った。軽井沢の別荘地で男性を射殺し、居合わせたもう一人の男性に重傷を負わせたという。その犯人の名は矢野布美子、当時22歳。現在は45歳、鳥飼のひとつ上ぐらいである。当時の話を聞こうと何度か接触をするが断られる。しかしある時彼女の方から連絡が来た。末期がんにおかされているという。そして彼女の病室に通って聞いた話は…。

  • 贅沢な時間。

    高橋真梨子を聴いていると、ついつい小池真理子を離れて歌詞カードに目がいってしまう。二人の女の間を揺れ動く男心。要するに気が多い男なんだねワタクシ。
    かみさんと付き合っていたとき「あなたは女を愛せない人ね」と言われたことがあったっけ。
    それにしても高橋真梨子の歌がこんなにエロチックだとは、何気なく聴いていたときは気付かなかった。『はがゆい唇』なんて凄い。

    「仄白い 乳房を映して
    綺麗 そう呟いてる」

    うーむ (・・;)汗

  • 内容紹介

    〔直木賞受賞作〕連合赤軍が浅間山荘事件を起こし、日本国中を震撼させた一九七二年冬。当時学生だった矢野布美子は、大学助教授の片瀬信太郎と妻の雛子の優雅で奔放な魅力に心奪われ、かれら二人との倒錯した恋にのめりこんでいた。だが幸福な三角関係も崩壊する時が訪れ、嫉妬と激情の果てに恐るべき事件が!?

    12月16日~26日

  •  
    ── 小池 真理子《恋 1995‥‥ 早川書房》[Kindle]
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/B00C2R9W3K
     
     
    (20231128)

  • この世で最も好きな文学作品。読むたびに新たな感動がある。小池真理子作品は文章が読みやすいので、なお没入できる。栄華から退廃へのジェットコースターは、三島を想起させる。

  • 読了して数日、どうしてもラストに納得がいかなくてモヤモヤしていたのが自分の中でやっと解決できたので投下。
    私は布美子にどうしようもなく同情していたんだと思う。だから布美子に面会しなかった夫妻が許せなかったし、大久保を恨んですらいたんだと思う。あの正論パンチ、憎ったらしいったらないです(私が単純すぎなんですねw)
    物語なのにノンフィクションかのような錯覚を引き起こさせるのは、表現力、文章力、官能的な世界観諸々、彼女の見事な手腕の賜物です。
    この作品に出会えたことに感謝し、小池真理子氏に敬意を表します。

  • これは、紛れもなく純粋な愛の物語である。
    本作で起こる事件と、浅間山荘事件とは、まったく無関係なのだが、あの時代の空気感、多くの若者の熱狂を象徴する浅間事件を同時に挿入することで、主人公・布美子と、片瀬夫妻の異質さがより際立ち、くっきりと濃い翳を読者の胸に落としていく。
    この光と影/表と裏の取合せの妙、構成力が非常にドラマティックで、物語の大きな魅力のひとつになっている。
    表の世界(身近に学園紛争やデモがある)に暮らす布美子が、片瀬夫妻との出会いによって、非日常の影の世界に誘われていく姿にも不自然さはないが、ある時、思いがけずドアの隙間から目にしてしまったものが、魔的であるが故に甘美で、布美子と共に翳に呑まれるようにしてページを繰り、気づけばドアの内側に自分が立ちいって「秘密」を共有することとなる。
    何より重要なのは、この作品が、愛について、決まりや正しさを求めるのではなく、どの愛が、誰にとっての真実だったか、という点だ。
    物語として、布美子の真実は提示されるが、読む人によっては、見出される「真実」は異なるように思う。
    小池真理子氏の美しい文章を味わうには、最適な作品であると同時に、愛を問うというテーマにおいて、いつの時代にも旧びることのない傑作。

  • 第15回(2015/5/16)大四次之会 課題テーマ「苦手な恋愛小説への挑戦」にてチョイス。選択理由は、直木賞受賞作であったこと、恋愛小説のカテゴリに属しながらホワイダニットのミステリでもあったこと、Kindle本が存在したこと。挑戦としては長編だったが、読了できたのはおそらく以上の理由に助けられたからだろう。
    思いのほか読みやすかったが、そのわりにどうしてか登場人物の誰にも共感できず、登場人物の誰にも魅力を感じられなかった。主人公と片瀬夫婦の関係は明らかに異質で、誰もが容易に共感できるものではないと思われるが、当然わたしは置いてけぼりにされた。回想編布美子の年齢は、憧れる対象に影響されやすいのか。片瀬夫婦を失ったら生きていかれないなど思い込んだら仕方ない。自分たちの世界が壊されるのが嫌で猟銃を持ち出してしまうんだもの。それにしても、彼女が裁判でも打ち明けなかった事件の真相というのに、期待をし過ぎてガッカリしてしまった。

    主人公に感情移入して物語の世界に入り込むことができず、客観的にも主人公の恋の行方に対して興味が持てないわたしは、やはり恋愛小説を楽しめないのかも知れないが、もう少し他の本も読んでみようと思うくらいには興味が持てた。ひとまず次は三島由紀夫の通俗小説を読もうかな。

  • きっとこれにかかわった3人にとっていい思い出になっていると思う。

  • 貴族世界にどっぷり浸かることができ読み応えありました。
    ありえない世界だし、主人公がハマる夫婦も世間から見れば異常なのですが、人間皆が本来持っている愛情の普遍性を感じられ、小池真理子さんの文章力に脱帽です。

  • 引き込まれた。小池さんは本当に上手だなぁ。かなり一途な大学生布美子と魅力的な他大学の助教授夫妻の危うい関係。新しい男の登場でバランスが崩れた。映画にしたら綺麗なんだろうなぁ、軽井沢。ドラマがあるんだ、見てみたい。

全15件中 1 - 15件を表示

著者プロフィール

作家

「2023年 『ベスト・エッセイ2023』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小池真理子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×