終末のフール (集英社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 集英社
3.55
  • (15)
  • (50)
  • (44)
  • (13)
  • (0)
本棚登録 : 703
感想 : 44
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (319ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あと3年で小惑星が地球に衝突するといわれている世界で、どのように最後を迎えようか考えながら過ごす人々の物語8選。

    映画「アルマゲドン」のような英雄もいなければ感動もないが、それぞれの物語に登場する人々の何気ない会話にほっこりした。
    個人的には「3.籠城のビール」「7.演劇のオール」「8.深海のポール」がお気に入り。

    伊坂幸太郎さんの作品に登場する人物は変わり者が多いけど、会話のキャッチボールで出てくる言葉のセンスが素敵で好き。
    自分も洒落た(?)言葉選びができる人になりたい。

  • 「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

    8年後に人類は滅ぶ。

    生きるとは。死ぬとは。
    いま、ここ、自分がいる意味とは。

    家族とは。恋人とは。
    人との繋がりとは。

    幸せとは。

    「世界の終わりがそこで見てるよ」と。

  • 世界が終わる。不思議な設定。
    以外と普段とおりの人びとの生活がある。

  • 伊坂幸太郎も好き。終末ものも好き。読まねばならない!
    終末が来る事による混乱が落ち着いた時期の話なので、思いの外、皆さん普通(?)に生活していらっしゃる。

  • 8年後、小惑星が衝突し地球は滅亡する。
    そう予告されパニックに陥った5年を経て、小康状態にある余命3年の世界。
    残された時間の中で人生を見つめ直す8つの短編。

    復讐をする者、新しいことをはじめる者、自ら命を絶つ者、子供を産む者、何も変わらない者…

    自暴自棄になった人間の醜さや脆さに直面し大切な人を失った人々が絶望の淵を彷徨いながらも、残された未来を穏やかに過ごしていけるような希望の詰まった作品だった。


    "明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?"
    "あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?"

    この言葉を見て、3年後確実に終わる人生と明日終わるかもしれない人生、そう大差がないような気がした。
    これが私の人生、と胸を張れるように今はもがいて足掻いて精一杯生きようと思う。


    この本を読んでいる最中
    実際に、数年後地球に衝突する可能性が高い小惑星が発見されたニュースが流れてきてちょっと焦った。

  • 8年後隕石が地球に衝突し、地球がなくなってしまう
    話は、その事実が発表されてから5年後の話。
    世の中が荒れて、そして小康状態が訪れた時の話。

    武田幸三をモデルにしたキックボクサーのセリフがかっこよかった。
    「世界があと何年で終わるとしても、生き方に変わりはない」
    「あなたの生き方はあと何年生きるつもりの生き方なのか?」

    親子が和解したり、子供を産むか産まないか迷ったり、復讐を果たして死のうとしていたり、警察官の父親が、責任感から混乱を治めようとして逆恨みされて殺されてしまったり過剰に演出し数字を取ろうとするメディアに妹を殺され、復讐しようとしたり、幼い兄弟の母親が死んでしまったり、食料の奪い合いで奥さんをなくしたり、人を殺してしまった罪悪感から娘を残して自殺してしまう両親がいたり、でもこれって普段生きていても起こりうることなのだと思う。
    私は終わりが約束され、それが私の努力ではどうにもならないとわかったらとても荷が軽くなると思う。
    でも、会社に行くかなー?

  • 今の気持ちに(母、股関節の人工関節手術で入院中)とてもそぐった話だった。
    P246「演劇のオール」
    「外から観る人はいろんなこと言えるけどね、考えて決めた人が一番偉いんだから」

  • マヤ文明の終末論が話題になってますよね。
    ほんと偶然なんですけど、こんな本を読んでいました。


    『終末のフール』 伊坂幸太郎 (集英社文庫)


    八年後に小惑星が地球に衝突し、世界が終わる。
    人々はパニックを起こし、逃げまどい泣きわめき、人を殺し、略奪をし、または絶望して自殺をし、世の中は大混乱に陥った。

    そんな状態から五年が経過し、世の中が少しずつ落ち着きを取り戻した、終末まであと三年、という世界が物語の舞台である。
    パニックのさなかの話ならよくあるが、そこを通り過ぎて、いろいろな物事の本質が見え始めるころ、人は何を思うのか、というところが面白いと思った。


    仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住人たちの8つの物語からなる連作短編集である。

    「週末のフール」「太陽のシール」「籠城のビール」「冬眠のガール」「鋼鉄のウール」「天体のヨール」「演劇のオール」「深海のポール」という、かなり無理やりなタイトルが、どこかあっけらかんとしていていい。


    私は「天体のヨール」が一番好きだ。

    天体オタクの二ノ宮くんがすごい。
    達観しているのか、それとも単なる変人か。
    実に味のあるキャラクターなのだ。

    彼は小惑星が向かってくるのが楽しみだと言い、その瞬間は望遠鏡をのぞいているという。
    矢部が人を殺したことも自殺をしようとしていることも、自分の両親が殺されて、今、庭に埋まっていることも、そして彼が新たに発見したらしい小惑星のことも、すべて同じぐらいの軽さで語られていることが、終末の“始まり”から五年、“終わり”まで三年を残した、凪状態の不気味さを強調しているようで怖い。

    そしてこの「天体のヨール」だけ謎めいたラストになっている。
    矢部は月を眺めたあと、首を吊ったのだろうか……


    「籠城のビール」は、実に伊坂さんらしい一編。
    “逃げる”というキーワードはどこか『ゴールデンスランバー』を思わせる。

    籠城犯が、籠城されている家族に助けられる、という話。
    頼りになる協力者もいて、物語というのは出来事ありきでなく、人がいてこそのものなのだなと、温かい気持ちになった話だった。


    「冬眠のガール」の田口美智も天然で可愛くて魅力的な女の子だ。

    両親が入水自殺をし、ひとりぼっちになってしまった四年前、彼女は三つの目標を立てた。

    「お父さんとお母さんを恨まない」
    「お父さんの本を全部読む」
    「死なない」

    父の本を四年かけて全部読み終えた美智は、新たにひとつ目標を立てた。

    「恋人を見つける」

    あと三年で世界が終わるのに、新しいことをしようとしている!

    美智が読んだ本の中に書いてあった言葉がとてもよかった。

    「新しいことをはじめるには、三人の人に意見を聞きなさい。まずは尊敬している人。次が、自分には理解できない人。三人目は、これから新しく出会う人。」

    彼女は順番に会いに行くのだが、その中の“自分には理解できない人”である、元家庭教師の小松原との会話が面白かった。
    終末を目前にして、この飄々とした感じ、この前向きな感じは何なのだろう。

    「桜が春の短期間しか咲かないのを恨む人はいない。
    桜はそういうものだから。」

    というのは哲学的だなぁ。
    いい言葉だ。


    「演劇のオール」は、役者志望の主人公が、いろいろな人の疑似家族を演じる話なのだが、偶然の導きで全員が集まってしまったラストシーンが悲しい。
    犬の名前が「タマ」なのが笑える。


    「深海のポール」は最後にふさわしい話だったね。

    この渡部父子は、他の話にもちょこちょこ登場し、「籠城のビール」では、犯人たちを逃がす手助けをする。

    「こんなご時世、大事なのは、常識とか法律じゃなくて、いかに愉快に生きるかだ」

    渡部・父は、マンションの屋上に櫓を組み、隕石が落ちて洪水になった街を眺めて、最後の最後に死ぬのだそうだ。
    みっともなくても、一分一秒でも長く最後まで生きる、というこの「深海のポール」のテーマは、この短編集全体のテーマでもある。


    解説にもあるが、人はいつか死ぬものだと頭では分かっているのに、実際に自分が死ぬときのことは実はあんまり考えていない。
    それはまあ、考えても仕方がないから、というのもあるが、本当は現実から目をそらしているだけだ。
    私もそうだ。

    死に方を考えることは生き方を考えること、とはよく言われることだけれど、この物語は“余命三年、あなたはどうしますか?”と、ストレートに聞かれているようなところがいっそ清々しいし、最期の時をどう過ごすかという、ともすれば重くなりがちなテーマが、軽めのトーンでさらりと描かれてあるのがとてもいいなと思った。


    ともあれ、生きるの死ぬのより、とりあえず目の前のことを頑張るというちっちゃいスケールで、今日も一日が暮れてゆく……
    ああ……(笑)

  • 隕石が地球にぶつかるまであと8年と言われ、そこから5年が過ぎ残り3年になった世界。昔読んだ新井素子さんの「ひとめあなたに…」をちょっと思い出す。混乱や生への執着よりも人の暖かさや心の豊かさを感じた。伊坂さん、こんなに優しい話も書くのかと改めて多才さを確認した。まあ確かに8年後って言われたら最初は混乱するもののそんなにいつまでも続けられるもんでもなさそう。 「冬眠のガール」の「3人の人に意見を聞きなさい」というのは覚えておこう。 タイトルがお笑いコンビのハライチのネタみたいで、特にヨールって…?w

  • 有名な作家さんなのに、読んだのは初めて。「あなたの今の生き方は、どの位生きるつもりの生き方なんですか?」という言葉があるという紹介にひかれて読み始めた。皆死んでしまう前の、もしかしたらほんの短い最後のささやかな日常なのかもしれないのだが、どのストーリーにも作者の心根の温かさが垣間見えて良かった。

  • 終末をテーマにして繋がっていくストーリー展開が面白い。

  • 本当に終わりを迎えた時の人間の脆さがどう描写されるのかもみてみたかった。

  • 『現実とぴったりとは重なっていないけれども、ズレながら重なっているというのがフィクションのいいところだと思います』

    まさにこれ。終末なんてSFの世界のハズなのに、本当にそういう世界がどっかにあってもおかしくないと思わせてくれる。死という塩をかけるからこそ、生がより甘く感じる。登場人物が本当に生きている。

    また読みたい1冊。

  • 伊坂幸太郎の作品好きで読みました。

    明日死ぬとしたら生き方が変わるんですか?のセリフが心に残りました。

    仕方ないことだけど終わり方が気になってモヤモヤした。

  • 隕石で地球滅亡、という話は映画でもたくさんあります。けれど、パニックそのものではなく、パニックがひと段落して小康状態になった時点、しかも、数年後には週末が来るのが分かっている世界の話を書きたいと思ったのでえす。それは、いつ死ぬか分からないのに安穏と生活している僕たちの、譬え話としては適しているようにも思えました。
    (今回の話を書くにあたって)決めたのは、「タイトルは韻を踏むこと」「毎回、主人公や話の雰囲気を変えること」そして、「『許す』という思いをどの短編にも盛り込むこと」というルールでした。そのころの僕の作品は、復讐ものやギャング物のような「許さない事」「許されない人」というものばかりだったため、今度は逆に、
    に、「終末を前に、許すこと」を描いてみようと決めたのです。

    (『3652』伊坂幸太郎エッセイ集 p.111より)

  • 短編は好きじゃないけど、こういうちょっとずつ繋がりのある短編は、みんなが主役で脇役な現実世界みたいで好きだっt

  • 小惑星が落ちてくるという宣告が八年前、それから五年が経過した頃。
    パニック状態から小康状態になった今、あと三年で終末を迎えるという
    時間の中をどう生きていくか、生きることの意味を知る物語。

    あと三年しか生きれないと言われたらどう生きるかということが
    テーマの作品だったのでさぞかし重たくて辛い内容だと思って読んでいましたが、意外と明るくテンポ良くストーリーが
    展開されていき、それぞれの章で登場している人達が
    もがき苦しんでいる訳でもなく淡々と過ごしているので
    三年しか生きれないという概念がすっかりと忘れてしまうほどでした。

    それなりに登場人物の人達も三年という歳月に囚われていることも
    ありますが、それよりもどんな環境であっても自分の置かれた状況を
    慌てずに冷静になって分析をして、何が自分にとって一番大事なことか、
    何を一番大切にすべき事柄なのかを明確にしてその後の行動に移っているところが凄いなと思いました。

    冬眠ガールの中で印象的だった言葉で
    それと同時に
    「三年後に全部が終わるって考えるじゃなくて、
     三年後から冬眠に入るって考えれば良いんだよ。」
    と言っていた登場人物もいて、
    こうゆう発想の転換というかプラス思考も生きていくうちには多いに必要だなとも思いました。

    練習をし続けるボクサーの言葉で
    「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?
     あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?
     できることをやるしかないんですから」
    というのが印象的で不器用だけれど、やることをやり、
    それしかできないのなら仕方のない・・・という事柄が
    何だか自分の心の中でしっくりと気ました。

    この作品では小惑星が落ちてきてあと三年しか生きられないという
    設定になっていますが、この中での人々のパニック状態が
    ついこの間まで緊急事態宣言だったコロナ禍の状況を俯瞰で見ているかのように思えて他人事とは思えなかったです。

    そして小惑星が地球に衝突するという設定はこの作品だけでなく、
    病などで余命わずかということに置き換えると
    より切実な問題となり、自分の命や生き方について
    深く考えさせられました。

    どんな状況に置かれてもどんな惨めな姿になってしまっても、
    最後まで自分を見失わず、自分らしく、その日が来るまで、
    毎日をきちんと生きていくことが大事だなというのが
    この作品で更に強く思い、これから日々を大切な人たちと大事に生きていきたいと思いました。

    一日一生 大事です。

  • とてもリアリティがある話だった。終末は誰にでもくる。

  • 「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」のセリフが印象に残った。この本が出版されたのがあの3.11東日本大震災前だったのに気づいた時ちょっとゾッとした。

  • いろんな話が交差するので好きな感じだった。ただ終わり方が少し気になった。でもしょうがないのかも

全44件中 1 - 20件を表示

著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

伊坂幸太郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×