江戸川乱歩傑作選(新潮文庫) [Kindle]

著者 :
  • 新潮社
4.41
  • (26)
  • (13)
  • (7)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 234
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (282ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 乱歩の初期を代表する傑作9選。1960年発行。

    「二銭銅貨」(1923)
    乱歩の処女作。
    知能の優劣を誇示するためだけに友人のプライドを傷付けた、
    若者の純粋な残酷さが印象的。暗号を主にした探偵小説。

    「二廃人」(1924)
    大学時代に夢遊病で殺人を犯し、人生を廃人として過して来た老人。
    実は無実で健常者だったことを、騙した友人から今更暴露される。
    2度までも人生を弄ぶ友人はひどい奴だが、なによりも老人の情けなさに尽きる。

    「D坂の殺人事件」(1925)
    団子坂殺人事件。明智小五郎のデビュー作。
    人間観察者として人を喰った態度は既に健在。
    サド・マゾをオチに持ってくるあたりに乱歩らしさを感じる。

    「心理試験」(1925)
    明智小五郎シリーズ第2作目。
    明智が心理テストを“正しく”使い、知能犯を鮮やかに追詰める。
    金貸し老婆と青年の設定はドストエフスキー「罪と罰」の引用だろう。

    「赤い部屋」(1925)
    退屈しのぎで猟奇趣味に走る有閑倶楽部の面々の鼻を明かすラストが面白い。
    怪奇と現実のオンオフをしっかり切り替える、職業小説家 乱歩ならでは。
    作品からは、乱歩の頭に完全犯罪のアイデアが次々と湧き上がる様が伺える。

    「屋根裏の散歩者」(1925)
    ご存知!代表作。これまた明智小五郎登場。
    完全犯罪を思い付いて興奮し、欲望に耐え切れず実行、絶対バレナイと高を括り、
    最後は明智の推理に追詰められる犯人の心理描写が見事。

    「人間椅子」(1925)
    これまた怪奇小説の名作。丁寧な言葉遣いの中に不気味な狂気を感じさせる。
    秘め事から始まり、対象者に告白せずに居られない心境はストーカーそのもの。
    オチで種明かしされても払拭しきれない気味悪さが残る。

    「鏡地獄」(1926)
    乱歩独特の不思議な世界観を描いた怪奇小説。
    完全球体の鏡の中に入って発狂してしまった男の話。
    同様の世界観を持った作品では「押絵と旅する男」(1929)の方がショッキング。

    「芋虫」(1929)
    乱歩のグロテスク趣味の極み。カフカの「変身」が思い起こされる。
    戦争で両手両足、聴覚、言語機能を失った男とその妻の話。
    読者はこのグロテスクな生き物から目を背けたくても離せなくなる。
    そこには妻の異常な快楽があり、「変身」以上に痛ましい最期が待つ。

    乱歩の怪奇性はすべて、人間の狂気をじっくり描いたことにある。
    誰もが密かに持つ かすかな狂気である。
    だから共感してしまった読者は、内なる夢の世界に入り込んでしまう。
    そしてそこから帰れなくなりやしないか、
    という不安が乱歩怪奇小説の本質だと思う。

  • ああ、世の中には、まだこんな面白いことがあったのか

  • 新潮文庫の100冊として書店で並んでいたので読んでみた。江戸川乱歩初読み。昭和初期を代表とするミステリー作家だと知ってはいたけど勝手な作品のイメージから好みではないと避けてきた。が読んでみたら面白かった。イメージ通り不気味でグロテスクで妖しい世界観だったけど。時代を感じさせるモノ(見世物小屋ete)や今ならNGワードとされる表現が多く出てきて時代を感じる。読んだことはないけど乱歩と同世代でライバルでもある横溝正史の作風と似てるのかも。日本のミステリーの原点を読んだという満足感で読了。

  • 「二銭銅貨」★★
    「二癈人」★★
    「D坂の殺人事件」★★
    「心理試験」★★★
    「赤い部屋」★★★
    「屋根裏の散歩者」★★
    「人間椅子」★★★★
    「芋虫」★★★
    「鏡地獄」★★★

  • 何度読んでも褪せることのない名作。

  • ダラダラ読み続け、やっと読み切った、、、笑

    やっぱり天才的!!
    面白すぎる

    人間椅子がやっぱり好きですけど、
    1番キタのは芋虫だな、やはり
    谷崎み感じる
    好きやな〜って感じ笑

    明智小五郎の探偵シリーズめちゃくちゃ好きなんだが
    もっと読みテェ〜〜ってなりました

    やっぱ乱歩サイコー

    Edgar Alan Po
    江戸川乱歩
    は、普通に洒落すぎてて感動した

  • 紙の本にて読了

    一番好きなのは「二銭銅貨」。
    明智小五郎、キャラクターとしては知っていたけど、彼が出てくる物語を読んだのはこれが初めて。こんな感じだったのかと意外なところ(?)があって少し驚いたりした。

    話の内容はおぞましかったり不気味なものがあったりするのに、語り口がどこか優しいので、読んでいると不思議な感覚がついて回っていた。


    これを機に全作品読破したいなあ。

  • 人間椅子はもちろん、二癈人が好きすぎる

    二銭銅貨
    二癈人
    D坂の殺人事件
    心理試験
    赤い部屋
    屋根裏の散歩者
    人間椅子
    芋虫
    鏡地獄

  •  もう、ほんとにB級ドラマの原点として一級品ですね。ちゃんと落ちをつけてくれる親切さとか、恐いもの、気持ち悪いもの見たさを満たしてくれることとか。

     トリックも面白いのですが、やはり「狂人」に対する憧れともとれる表現でしょうかね。自分でも「気ちがい」ではないかと何度もいいながら、礼節を忘れないところなんか、ぐぐっときますね~。

     「気ちがい」って昔はよく使ったなあ。今は変換もできないよ。世の中ずいぶん変わりましたね。とかそんなことも考えさせられました。プー太郎は昔もいたんだね。でも引きこもっているわけじゃなくて堂々とぶらぶらしてたのね。そんなゆるさは、懐かしく思いますね。

  • 椅子の中から、天井の上から。
    覗くという背徳とエロス。

全23件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

江戸川乱歩の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×