江戸川乱歩傑作選(新潮文庫) [Kindle]

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  • 乱歩の初期を代表する傑作9選。1960年発行。

    「二銭銅貨」(1923)
    乱歩の処女作。
    知能の優劣を誇示するためだけに友人のプライドを傷付けた、
    若者の純粋な残酷さが印象的。暗号を主にした探偵小説。

    「二廃人」(1924)
    大学時代に夢遊病で殺人を犯し、人生を廃人として過して来た老人。
    実は無実で健常者だったことを、騙した友人から今更暴露される。
    2度までも人生を弄ぶ友人はひどい奴だが、なによりも老人の情けなさに尽きる。

    「D坂の殺人事件」(1925)
    団子坂殺人事件。明智小五郎のデビュー作。
    人間観察者として人を喰った態度は既に健在。
    サド・マゾをオチに持ってくるあたりに乱歩らしさを感じる。

    「心理試験」(1925)
    明智小五郎シリーズ第2作目。
    明智が心理テストを“正しく”使い、知能犯を鮮やかに追詰める。
    金貸し老婆と青年の設定はドストエフスキー「罪と罰」の引用だろう。

    「赤い部屋」(1925)
    退屈しのぎで猟奇趣味に走る有閑倶楽部の面々の鼻を明かすラストが面白い。
    怪奇と現実のオンオフをしっかり切り替える、職業小説家 乱歩ならでは。
    作品からは、乱歩の頭に完全犯罪のアイデアが次々と湧き上がる様が伺える。

    「屋根裏の散歩者」(1925)
    ご存知!代表作。これまた明智小五郎登場。
    完全犯罪を思い付いて興奮し、欲望に耐え切れず実行、絶対バレナイと高を括り、
    最後は明智の推理に追詰められる犯人の心理描写が見事。

    「人間椅子」(1925)
    これまた怪奇小説の名作。丁寧な言葉遣いの中に不気味な狂気を感じさせる。
    秘め事から始まり、対象者に告白せずに居られない心境はストーカーそのもの。
    オチで種明かしされても払拭しきれない気味悪さが残る。

    「鏡地獄」(1926)
    乱歩独特の不思議な世界観を描いた怪奇小説。
    完全球体の鏡の中に入って発狂してしまった男の話。
    同様の世界観を持った作品では「押絵と旅する男」(1929)の方がショッキング。

    「芋虫」(1929)
    乱歩のグロテスク趣味の極み。カフカの「変身」が思い起こされる。
    戦争で両手両足、聴覚、言語機能を失った男とその妻の話。
    読者はこのグロテスクな生き物から目を背けたくても離せなくなる。
    そこには妻の異常な快楽があり、「変身」以上に痛ましい最期が待つ。

    乱歩の怪奇性はすべて、人間の狂気をじっくり描いたことにある。
    誰もが密かに持つ かすかな狂気である。
    だから共感してしまった読者は、内なる夢の世界に入り込んでしまう。
    そしてそこから帰れなくなりやしないか、
    という不安が乱歩怪奇小説の本質だと思う。

  • ああ、世の中には、まだこんな面白いことがあったのか

  • 新潮文庫の100冊として書店で並んでいたので読んでみた。江戸川乱歩初読み。昭和初期を代表とするミステリー作家だと知ってはいたけど勝手な作品のイメージから好みではないと避けてきた。が読んでみたら面白かった。イメージ通り不気味でグロテスクで妖しい世界観だったけど。時代を感じさせるモノ(見世物小屋ete)や今ならNGワードとされる表現が多く出てきて時代を感じる。読んだことはないけど乱歩と同世代でライバルでもある横溝正史の作風と似てるのかも。日本のミステリーの原点を読んだという満足感で読了。

  • 「二銭銅貨」★★
    「二癈人」★★
    「D坂の殺人事件」★★
    「心理試験」★★★
    「赤い部屋」★★★
    「屋根裏の散歩者」★★
    「人間椅子」★★★★
    「芋虫」★★★
    「鏡地獄」★★★

  • 何度読んでも褪せることのない名作。

  • ダラダラ読み続け、やっと読み切った、、、笑

    やっぱり天才的!!
    面白すぎる

    人間椅子がやっぱり好きですけど、
    1番キタのは芋虫だな、やはり
    谷崎み感じる
    好きやな〜って感じ笑

    明智小五郎の探偵シリーズめちゃくちゃ好きなんだが
    もっと読みテェ〜〜ってなりました

    やっぱ乱歩サイコー

    Edgar Alan Po
    江戸川乱歩
    は、普通に洒落すぎてて感動した

  • 紙の本にて読了

    一番好きなのは「二銭銅貨」。
    明智小五郎、キャラクターとしては知っていたけど、彼が出てくる物語を読んだのはこれが初めて。こんな感じだったのかと意外なところ(?)があって少し驚いたりした。

    話の内容はおぞましかったり不気味なものがあったりするのに、語り口がどこか優しいので、読んでいると不思議な感覚がついて回っていた。


    これを機に全作品読破したいなあ。

  • 人間椅子はもちろん、二癈人が好きすぎる

    二銭銅貨
    二癈人
    D坂の殺人事件
    心理試験
    赤い部屋
    屋根裏の散歩者
    人間椅子
    芋虫
    鏡地獄

  •  もう、ほんとにB級ドラマの原点として一級品ですね。ちゃんと落ちをつけてくれる親切さとか、恐いもの、気持ち悪いもの見たさを満たしてくれることとか。

     トリックも面白いのですが、やはり「狂人」に対する憧れともとれる表現でしょうかね。自分でも「気ちがい」ではないかと何度もいいながら、礼節を忘れないところなんか、ぐぐっときますね~。

     「気ちがい」って昔はよく使ったなあ。今は変換もできないよ。世の中ずいぶん変わりましたね。とかそんなことも考えさせられました。プー太郎は昔もいたんだね。でも引きこもっているわけじゃなくて堂々とぶらぶらしてたのね。そんなゆるさは、懐かしく思いますね。

  • 椅子の中から、天井の上から。
    覗くという背徳とエロス。

  • 文章から何とも言えない気持ち悪い感じを受ける。何だかヌメッとしていておぞましい。そして変態的。特に人間椅子は非常に気持ち悪い。が、視点としては新鮮で面白かった。

    それぞれのストーリーの最後にオチを付けるのが好きらしいが、オチの前に予想が付いてしまうというのが良くも悪くも少し残念だった。

  • 明智小五郎は魅力的な探偵だな。
    短編集だけど、ほとんどの話にゾッとしました。
    江戸川乱歩ってこういう本なんだねーと恥ずかしくも今更知った。他の作品も読んでみよう!

  • 乱歩の傑作短編集。
    やはり乱歩は長編よりも短編のほうが上手い。

  • 江戸川乱歩ってなんか不思議な作家だな、って印象が強い。

    たぶん少年探偵団のおかげで親の目をかいくぐって、子供が読んでも良い本に区分されていたきがする。
    ところがそんな記憶のままに高校くらいで再開した乱歩といったら!
    え、あれ、これ読んでよかったんでしたっけお母さん?と思わず確認したくなるような、フェティシズム溢れる作品群に、ギャップのアップダウンで驚くわけです。

    で、あーそうだ、乱歩ってものすごえぐいのよねー
    と、大人になってハラハラドキドキ、あのときの衝撃をもう一度!
    って身構えると今度はまた、あれれ、
    あ、なんか、こんな感じでしたっけ?感が。

    勝手に翻弄され、おやおやって思い、怖がってた子供の頃を思い出したり、でもやっぱり、芋虫はすごいし、人間椅子はもう、この単語だけでご飯三杯いけますの!なんて思ったり。

    乱歩は変わらずそこにあるのに、あたしがかってに変わっているのかな。
    乱歩からのキョリであたしの相対的な恐怖感も変動する。
    不思議だなあ、乱歩。
    古いのに、古臭くない。
    レトロなのに、生き生きしてる。

    あと何回あなたに会うんだろうね、乱歩さん。
    また会う日までね。お互い元気でね。

  • ・収録作品・
    二銭銅貨
    二廢人
    D坂の殺人事件
    心理試験
    赤い部屋
    屋根裏の散歩者
    人間椅子
    鏡地獄
    芋虫

    荒 正人・解説

  • 心理試験

  • 推理要素を含む話が多めの短編集。

    【目次】
    ・二銭銅貨
    ・二癈人
    ・D坂の殺人事件
    ・心理試験
    ・赤い部屋
    ・屋根裏の散歩者
    ・人間椅子
    ・鏡地獄
    ・芋虫

  • 体調に関わらず読める珍しい本。

    ミステリーと奇妙な話を純粋に楽しめる、小説らしい小説。ミステリー好きな人には必ずすすめたい一冊。

  • 生まれて初めて読んだ江戸川乱歩。カテゴリ分けが難しいですね。感じたのは「世界観がしっかりしている」ということ。それが世間的には頻繁に映像化され、個人的には再読に耐え得ると思う理由なのではないかと。普通、推理・探偵要素が強い作品は犯人やトリックが分かったら終わりじゃないかと思うんですが、それでも、もう一度読む気になります。この本は。

  • アガサと同年代の江戸川乱歩だが、
    やはり時代の古くささがあって、
    歴史小説のようにも感じた。
    猟奇的、狂気的小説は好きだ。
    芋虫は是非とも読むべき。

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著者プロフィール

1894(明治27)—1965(昭和40)。三重県名張町出身。本名は平井太郎。
大正から昭和にかけて活躍。主に推理小説を得意とし、日本の探偵小説界に多大な影響を与えた。
あの有名な怪人二十面相や明智小五郎も乱歩が生みだしたキャラクターである。
主な小説に『陰獣』『押絵と旅する男』、評論に『幻影城』などがある。

「2023年 『江戸川乱歩 大活字本シリーズ 全巻セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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