マネーロンダリング入門 国際金融詐欺からテロ資金まで [Kindle]

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  • 幻冬舎
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感想・レビュー・書評

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  • クレディスイスのようなプライベートバンクがどのような理由でマネーロンダリングの温床になっていたのかという話から、カシオ事件やライブドア事件、北朝鮮の兵器開発、バチカンと紛争ダイヤといった実例について、金銭の動きをフローにしてどのように資金を洗浄したかを解説している。
    通貨スワップのマッチングビジネス、というアイデアは非常に面白い。本書の刊行から10年経っているが、ビジネスとして始めてる人がいるのか気になる。
    今なら暗号通貨を絡めた洗浄方法等もあるのではないかと思う。

  •  マネーロンダリング(以下、マネロン)というとちょっとおどろどろしい雰囲気があります。暴力団やテロ組織の資金洗浄とか、新聞やニュースでもよく目にする言葉です。

     金融機関で働いている人でも、自信をもって説明できる人は結構まれだと思います。きっと概念はわかっていると思いますが、実際にしょっちゅう見るわけでもなく、むしろ日常業務ではレアキャラだと思います。

     本作は、そのような立ち位置のマネロンが、具体的にどのようになされるのか、どのようにして可能か、そしてその底に流れる思想について説明してくれます。

     私が理解しているところでは、マネロンとは、お金のトラックが出来なくする、という事です。とりわけいわゆる『悪いお金』(麻薬の販売代金、わいろの現金とか)を、その出自が分からないように送金とか為替を行ってゆくような行為です。

     お金の流れを追えないようにするのは簡単。得たお金を常に現金で取引をするだけです。ただし、それが大金になったり、あるいは国を跨ぐときに問題になります。従い、マネロンの肝は金融機関を使って大金を送金するないし為替取引を行い、『クリーン』にすることにあります。


     これにあたり、第三章で説明されるコルレス銀行やコルレス口座の説明が秀逸。海外送金をするときに実際の物理的なお金は動かず、帳簿上、自国と外国の間の通貨の残高を増減させるだけ、という話です。
     この海外送金をオフショアバンクやプライベートバンクを使い、さらには法人口座を使う等すれば誰から誰にお金が流れたか分からなくなります。いわゆる地下銀行のアイディアも類似の考えです(全く伝わりませんね。ごめんなさい。。。)。

     これ以外にも、日本で通帳で入金、海外でキャッシュカードで出金などの荒業を使えば送金なしでお金の移動が可能になります(外国人労働者が使用したり、海外逃亡犯を助けるようなケースで使用されそう)。


     さて本作のもう一つのポイントは、橘氏のビビッドな筆致です。
     ライブドア事件、カシオ詐欺事件、ヨハネ・パウロ1世暗殺に絡むバチカン・マネロン事件(私はこれが一番好き)、イスラムテロを支えたマネロン銀行の話等々、話が具体的で躍動感があるということです。これは他の金融小説の中で筆者がいかんなく実力を発揮しているところです。


     もうひとつ。
     マネロンは狭義ではいわゆる資金洗浄ですが、広義の脱税的行為もカテゴライズされます。そこで思いが至るのは、なぜ人・団体が脱税するのかということです。
     もしある国で脱税をするような事案が多いとすれば、それは税金という言わば居住・登記権利等々サービス料みたいなものに対して、『高い!』と感じる方が多いということではないでしょうか。であれば、お金はその国から離れて行きそうです。企業や団体が送金コストを可能限り抑えるために、一部はグレーゾーンに陥ることも出てくるでしょう。
     その点ではある意味、マネロン事件とは国家の選別の証左になるのではないかと思います。勿論、私をはじめ一般人は自分の国を離れるということなど到底できません。しかし、企業や小金持ちなどが税金(ショバ代)が高いと思ったとたん、国家の選別が始まってしまう気がします。
     日本の公的サービスは税金に比して高いと感じますか?安いと感じますか?

    ・・・

     本作は本棚整理の一環で再読しました。面白かった。処分用の段ボールではなく本棚に戻すこと決定。
     マネロンとはどういう事なのかを学べる以外に、国家とは何か、国家の権限とは何かまで考える材料にもなる良書だと思います。

  • 今のところその予定はないけど‥

  •  壮大な印象のタイトルだが、読んでみると「マネロンは意外に身近」という気になってくる。いくつかの金融事件を平易な言葉で紹介しながら、プライベートバンクの実情や国家の策謀などをわかりやすく解説している。

     最初に出てくるカシオの詐欺事件はまったく知らなかったので興味深く読んだ。有名なスイス銀行や北朝鮮の偽札の話などは、幻想を打ち破られるような展開。地下銀行とテロリストの話はちょっと考えさせられる。

     最後のマネロン入門は実際に自分がやることをちょっとだけ想像しながら楽しく読んだが、実行することはないだろう。多分。おそらく。もしかして・・・?

  • ライブドア事件についての解説が興味深い。とても複雑なスキームで、取り締まる方も大変だと思った。

  • マネー感覚がなさすぎて、完全なる無縁な世界だけども、世界はやっぱりお金で動いてる。本の半分ぐらいは戦争経済の話のような気もした。世界の法体系のきめ細やかな複雑さが逆にこういった人たちにはありがたいのかもしれない。
    スマホの普及で個人間決済も可能になり、このままマネーの情報化が加速を続けると、グローバル化ということすら概念として消えるぐらいお金の流通は見えなくなっていくんじゃないかな。

  • 蛇の道は蛇。。。

  • 事例集的な感じでちょっとまとまりがなく、入門者には分かりにくい箇所がいくつか。
    でも、話はとても面白く、引き込まれてしまった。

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著者プロフィール

2002年、金融小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。著書に『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(幻冬舎)、『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』『橘玲の中国私論』(以上ダイヤモンド社)『「言ってはいけない? --残酷すぎる真実』(新潮新書)などがある。メルマガ『世の中の仕組みと人生のデザイン』配信など精力的に活動の場を広げている。

「2023年 『シンプルで合理的な人生設計』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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