零式戦闘機 [Kindle]

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  • 【電子版】

  • 零戦という戦闘機そのものの歴史文学、というよりも、零戦の誕生に至る経緯から敗戦までの歴史を零戦を主軸に起きながら記録した作品とでも表現できようか。

    単に零戦という戦闘機の評価、歴史的意義、戦歴にとどまらず、開発経緯や、誕生後は戦争の進展、状況から敗戦までの流れを記録している。零戦を工場で組み立ててから飛行場までどのように運んでいたかを詳細に記述することによって当時の道路事情、交通事情などが見えてくる。

    あとがきには昭和43年とある。終戦から23年後くらいに書かれた作品ということか。今で言えば、昭和50年代からバブル崩壊の平成初頭くらいの歴史を振り返るくらいの時間感覚になるのだろうか。そう考えると昔のような、最近のような不思議なタイミングの作品であったのであろう。

  • 著者の視線は冷静だ。

    前回読んだ零戦設計者堀越二郎氏自身による「零戦その誕生と栄光の記録」に比べると、
    零戦の誕生からその死まで、そこに関わった人々の行く末までに、気を配っている。
    例えば、機体を運んだ牛車の牛が戦争中の飼料不足から餓死したことや、
    戦争最末期に口上があった名古屋地区を襲った地震や空襲によって、
    製造工場に学徒動員されていた一般市民や中学生たちが惨死した事実も明確。
    著者も書いているが、戦闘機の性能、構造の知識において素人であったことが、
    かえって活きているのだろう。零戦に直接関わった人たちの理想より、
    零戦という兵器によってもたらされた人々の運命や現実を、ひたすら正確に著している。

    声高に反戦をいうのではない。平和平和とむやみに煽るわけではない
    その手法は淡々と事実を積み重ねていくことだけで、
    読者の心のなかに戦争というもののリアリティをあぶり出していく。

    記録文学とはこういうものだという名作である。

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プロフィール

吉村 昭(よしむら あきら)
1927年5月1日 - 2006年7月31日
東京日暮里生まれ。学習院大学中退。在学中、大学の文芸部で知り合った津村節子と結婚。
1966年『星への旅』で太宰治賞、1972年『深海の使者』で文藝春秋読者賞、1973年『戦艦武蔵』『関東大震災』など一連のドキュメント作品で第21回菊池寛賞、1979年『ふぉん・しいほるとの娘』で吉川英治文学賞、1985年『冷い夏、熱い夏』で毎日芸術賞、同年『破獄』で讀賣文学賞および芸術選奨文部大臣賞、1987年日本芸術院賞、1994年『天狗争乱』で大佛次郎賞をそれぞれ受賞。吉川英治文学賞、オール読物新人賞、大宅壮一ノンフィクション賞、新田次郎文学賞、太宰治賞、大佛次郎賞などの選考委員も務めた。
徹底した資料調査・関係者インタビューを背景にした戦史小説・ノンフィクションで、極めて高い評価を得ている。上記受賞作のほか、三毛別羆事件を題材にした『羆嵐』が熊害が起こるたび注目され、代表作の一つとみなされる。『三陸海岸大津波』は2011年の東日本大震災によって注目を集め再評価を受け、ベストセラーとなった。

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