アルバート氏の人生 [DVD]

監督 : ロドリゴ・ガルシア 
出演 : グレン・クローズ  ジャネット・マクティア  ミア・ワシコウスカ  アーロン・ジョンソン  ジョナサン・リス・マイヤーズ 
  • トランスフォーマー
3.35
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感想 : 49
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4522178009945

感想・レビュー・書評

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  • 彼女の不幸な生い立ち、暗い過去が少なからずも今の彼女を形成している。
    それから女性軽視の時代。生き辛さがあっても、たとえ男装という仮面をかぶっての日々であっても自分の夢を持っていたことは強みだった筈なのに…。
    恋は盲目では済まされない、、小さな箱庭の世界で規律正しくは生きられても刺激ある外の世界(人)とのことは思い描くようにはいかないものだ。
    しなやかに。例え、細く頼りない枝でも折れなければ、いつかはその先に芽吹き花をつけられただろうに。切ない。

  • 主人公のアルバートは女性であることを隠してホテルでウェイターとして働いている。19世紀のダブリンで孤児である女性が働くためには男性として生きるしかなかった。

    アルバートの男装がばれないか、好きな女性が振り向いてくれない、ダメな男と付き合って堕落していくことなど、ハラハラ感が絶妙にストーリーに寄り添っていくので、物語に惹きこまれていく。

    唯一わかりずらいのが、アルバートが女性が好きであるということの説明が直接的にされないまま、同僚のメイドである女性に求愛していく部分だろう。映画の中で好きな女性に対する想いの描写が切実感を持って描かれるとより、主人公の気持ちに同化できると思う。

    ただ、ある意味、女性が女性を好きということをドラマチックに描くこと自体がナンセンスなのかも知れない。異性を愛することと同性を愛することが同等であるという社会であれば、この映画の描写で問題ないのかもしれない。

    原作が舞台であるということも関係があるのだろう。舞台は観客たちが、演じられる世界の常識を、短い時間の演技の中に見つけ出し、劇場の空間内で共有する。男性として働いている女性が偶然出会うことなども現実的にはあり得ないが、物語の世界を理解できればすんなり受け入れられるだろうし、女性が女性に求愛することも、そういうことなんだなと、観客はすぐに察することができる。

    ホテルの仮装パーティーでのドクターの発言に象徴されるように、皆、多かれ少なかれ、何かを演じている。アルバートだけが特殊なのではない。
    同様に女性を隠して生きている男性との交流により、アルバートは自分に素直になり、自分の夢を実現する、その希望を持てるようになることが、この映画の魅力。

    ただ、その意味でラストは残念だった。物語のダイナミズム的にはこのようなストーリー展開はある意味王道だと思うけど、夢を成し遂げて、ハッピーエンドという超肯定的な話だったらよかったのになと思う。

    登場人物としては、女性を隠して男性として働いているペンキ職人ヒューバートが魅力的。
    共感力、包容力もありつつ、リーダーシップ決断力もある人生を生き抜く女性。悩める主人公の精神の礎。
    こんな人が実際にいたらどれだけ人生豊かになることか。

    この人物が魅力的なだけに、どうして、主人公はこの人に恋しないで、メイドの若いかわいい女性に恋をしてしまうのかなと思ってしまう。
    ただ、恋愛ごとって理屈ではないからね。

    女優のグレン・クローズの演技、気迫が伝わる映画でもあった。ドレスを着て街へ出る部分の、似合わなさのリアリティ表現など。

  • 観終わったときは主人公の人生についてドクターと同じような切ない気持ちになったのだけれど、あのまま夢は夢のままであったほうが逆に幸せだったかもしれないと思えてきた。
    それぐらい夢について想像するときの表情がとても魅力的。

    またヘレンは男女の愛情とは別の気持ちでアルバート氏に惹かれていたのかなとか、ペンキ屋と妻との関係もこんなところから始まったのかもしれないなとか、とにかく観終わってからもいろいろ想像させられる映画だった。おもしろかった。

    いちばん印象に残ったのはドレスを着て海に行くシーン。
    女装にしかみえない…

  • 19世紀のアイルランド、アルバート(グレン・クローズ)は、ダブリンにあるホテルでウエイターとして働いていた。だが、人付き合いが苦手で、もの静かなアルバートには誰にも明かすことのできない大きな秘密があった。ある日、アルバートはホテルの改装工事にやって来た陽気で端正な容ぼうの塗装業者ヒューバート(ジャネット・マクティア)と出会い……。

    タイトル通りアルバート氏の人生そのものだったがいったいこの映画は何を云いたかったのだろうか?
    観終わった直後は釈然としなかったが、アルバートは性愛を求めていたわけじゃなかったのだと考えると、胸にすとんと落ちた。
    主演のグレン・クローズはすでに本作を上演していて、自ら主演と脚本と製作を担当し映画化に踏み切っている。
    19世紀のアイルランドで、男として生きた女の物語ではあるが、同性愛者やトランスセクシュアルではない。アルバートは婚外子として生まれ里子に出され、14歳に男たちに輪姦された。ひとりで生きるには女であることを隠して生きる術しかない厳しい時代。ウェイターとして働いていたホテルに、偶然男装して生きる女性が現れる。身長186センチの大柄な男塗装職人、ヒューバート。のちにヒューバートも女であることが明かされた。彼(彼女)はアルバートに比べ長身でハンサム、人受けが良い。ヒューバートの家を訪れ、ヒューバートが愛する女性と一緒に生活しているのを目の前にして、アルバートはチップをためいつかたばこ屋を持ちたい夢を更に広げる。つまり、若くて愛らしい同僚のメイド、ヘレンを「妻」として迎え、店頭に彼女の姿を思い描くのだった。誰がみてもヒューバートは外見だけでなくほれぼれとする生き様をしている。一方、アルバートは人付き合いが苦手でもの静か。しかし、アルバートにも次第に自信が芽生え始める。ヘレンに対してアプローチを開始しデートの約束を取り付ける。初老の男と若い娘のカップルは滑稽に映る。ヘレンに若くてハンサムな見習いボイラー職人のジョーも言い寄り、金をふんだくれと言われる。ヘレンはその後妊娠しジョーに逃げられてしまうのだが・・・。アルバートはヘレンとジョーが別れ話で言い争う最中に、赤ん坊と3人で暮らそうとプロポーズした後、ジョーともみ合いになり頭を強打。誰にも看取られずに自室で亡くなってしまった。その後、雇い主ホテルの女主人は、アルバートが貯めたチップを見つけかすめ取った。そのお金で、ヒューバートは新たに全室塗装という大きな仕事の注文をもらうことになる。
    結末に、ヒューバートが赤ん坊とヘレンの面倒をみるラストをほのめかしてある。アルバートの最期は不憫に思えて仕方がなかった。(ヒューバートの妻はチフスで亡くなっていた)
    途中、アルバートはヒューバートの妻が死んだのを知りヒューバートにいっそに住まないかと切り出し、ヒューバートが「妻を深く愛していた」と断るシーンがある。アルバートはヘレンにもヒューバートに性愛を望んでいなかったのではないか。婚外子として生まれ家庭の味を知らずに育ったアルバートはただ温かい家庭を求めていただけなのではと思い至った。
    ヒューバート役のジャネット・マクティアが良かった。彼女の演じる作品を観てみたい!

    ※ドレスを着て浜辺で戯れるシーンは中途半端だったような気もする

  • 切ない映画

  • 「アルバート氏の人生」(Albert Nobbs)は、2011年に製作アイルランド映画。
    ロドリゴ・ガルシア監督作品。女優のグレン・クローズが製作・主演・共同脚色・主題歌の作詞の4役を務めた。
    圧倒的な階級社会と貧困に加え、「彼女」が夢を叶えるには、男性として生きるしかなかったという命題を抱えて生きた、余りにも切ないストーリー。

    2011年の第24回東京国際映画祭コンペティション部門で上映され、最優秀女優賞を受賞、第16回サテライト賞では主題歌賞を受賞、第84回アカデミー賞では、主演女優・助演女優・メイクアップの3部門でノミネートされた。

  • グレン・クローズの熱演。配役もぴったり。
    地味だが良作。

  •  19世紀のロンドンで男性として生きたウェイターの女性を描く。

     男装は止むに止まれずだが、恋愛対象が女性なのは自分の意思の様子。まだ同性愛という言葉がなかった頃の同性愛者を描いた映画。なんともせつない。
     前半がちょっとストーリーの進みが遅かったか。ヒロインのウェイターは随分魅力的だと思ったら『アリス・イン・ワンダーランド 』のアリスの人か。
     

  • 映画天国にて。
    アルバート氏の規則正しく清潔な感じが好感がもてた。
    もっと幸せに生きられたら。時代のせいだね。
    面白かった。

  • 「映画天国」のLGBT特集にて。仕事を得るために男装して、執事として働き続けた女性の話。グレン・クロースの演技が凄く、見所はほぼそれに尽きます。

    文字通り自分で自分を抑圧して生きてきた彼女が、老年になってようやく自己を解放する勇気を持ったわけですが、うまく行かない。思いを寄せた若いメイド(ミア・ワシコウスカ)にはつれなくされ、独立開業の夢の実現を目の前にしながら、不意に生涯を閉じる。かなりほろ苦い話です。

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著者プロフィール

1959年8月24日、コロンビアに生まれ、メキシコで育つ。映画監督、脚本家。父はノーベル賞作家のガブリエル・ガルシア=マルケス(1928-2014)。ハーヴァード大学で中世史を学んだ後、アメリカン・フィルム・インスティチュートへ。これまでに、10本を越える長編映画を監督している。脚本家、撮影監督、演出家としても活躍中。

「2021年 『父ガルシア=マルケスの思い出』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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