風立ちぬ・美しい村・麦藁帽子 (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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  • 『静寂な自然の中に刻まれた情景描写と心理描写』

    「風立ちぬ」
    高原のサナトリウムで結核療養中の節子と主人公。
    移りゆく二人の死生観、幸福観を、繊細に美しく描く。

    どの作品も、じっくりと味わうには何度か読まないと…

  • 読むきっかけは、何を隠そう同名のジブリ・宮崎駿作品を観たから。
    映画では堀越二郎と堀辰雄を合わせ持った人物で描かれているけれど、単純に彼に興味を持った。そうでなくては、今後私は堀辰雄と出会ってなかったかもしれない。


    「風立ちぬ、いざ生きめやも」

    サナトリウムと言う人里離れ、死が漂う隔離された場で静かに二人だけの幸せを探し、育む純粋な愛の物語。

    激しく求め合ったり、物語性に富んでるわけではない。
    ただそこには彼が愛した女性が彼に生き甲斐を見いだし、生きたいと願う気持ちと、彼女を見守り寄り添う作者の生活が、そっと綴られ、死と隣り合わせにある生を深く感じる作品だった。

    ただのフィクションではなく、堀辰雄自身の体験に基づいているという事。それが作品にリアリティーを感じさせ、しかしどこか美しく不思議な雰囲気を漂わせているのは、これが伝記ではなく小説だからなんだと感じた。


    美しい村、麦藁帽子、旅の絵、鳥料理、そして風立ちぬ。
    すべてを通して感じたのは、彼が書く自然や生きるものすべてに現実が現実でありながらも現実ではなく感じるまでのなにか静けさのようなものでした。

    彼と出会えて良かった。その一言に尽きます。

  • 若い時に読むといい本がある。太宰治だったり風と共に去りぬだったり、ライ麦畑だったり。反対に年を重ねたほうが読みやすい本もある。本書を中学生の頃読んだ時は何がなんだかさっぱりわからなかった。しかし今読むと逆に他愛ない純愛ストーリーだったんだと驚かせる。

    ここに描かれた5編の短編は、いずれも戦前のトレンディードラマだ。国内でさえ汽車で旅行するのが贅沢な時代に館山に海水浴に行ったり、軽井沢に避暑に行ったり、神戸を旅行することは庶民にとっては憧れのことだったに違いない。

    時代が時代だけに男尊女卑というか、作者が上から目線で女を捉えているのは面白くはないが、反面そんな時代だからこその純粋な愛情表現が微笑ましい。

  • 『美しい村』・『麦藁帽子』・『旅の絵』・『鳥料理』・『風立ちぬ』という構成の本。『美しい村』を読んでいる途中で飽きてきたのだが、ミーハーで『風立ちぬ』のみを読むよりも、最初から読んで良かった。『美しい村』を読んでから『風立ちぬ』を読むべきだ。

    どことなく死のにおいが漂い、村上春樹の『ノルウェイの森』と似た印象を受けた。ファンタジー要素はなく、ジブリ映画になったのが信じられない。

  • 「風立ちぬ」のみ読破。

    愛する人がどんどん弱っていく姿を見ながら、自分は傍にいることしかできない。。

    哀しい話でした。

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著者プロフィール

東京生まれ。第一高等学校時代、生涯親交の深かった神西清(ロシア文学者・小説家)と出会う。このころ、ツルゲーネフやハウプトマンの小説や戯曲、ショーペンハウアー、ニーチェなどの哲学書に接する。1923年、19歳のころに荻原朔太郎『青猫』を耽読し、大きな影響を受ける。同時期に室生犀星を知り、犀星の紹介で師・芥川龍之介と出会う。以後、軽井沢にいた芥川を訪ね、芥川の死後も度々軽井沢へ赴く。
1925年、東京帝国大学へ入学。田端にいた萩原朔太郎を訪問。翌年に中野重治、窪川鶴次郎らと雑誌『驢馬』を創刊。同誌に堀はアポリネールやコクトーの詩を訳して掲載し、自作の小品を発表。1927年に芥川が自殺し、翌年には自身も肋膜炎を患い、生死の境をさまよう。1930年、最初の作品集『不器用な天使』を改造社より刊行。同年「聖家族」を「改造」に発表。その後は病を患い入院と静養をくり返しながらも、「美しい村」「風立ちぬ」「菜穂子」と数々の名作をうみだす。その間、詩人・立原道造との出会い、また加藤多恵との結婚があった。1940年、前年に死去した立原が戯れに編んだ『堀辰雄詩集』を山本書店よりそのまま刊行し、墓前に捧げる。1953年、春先より喀血が続き、5月28日逝去。

「2022年 『木の十字架』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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