「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書) [Kindle]

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  • 朝日新聞出版
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感想・レビュー・書評

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  • タイトルにある「やりがいのある仕事」を必ずしも否定しているわけではなく、それを仕事に見出すことにこだわらなくて良いといった話です。本書の肝となる主張は概ね以下に集約できそうです。

    ①仕事は人間の価値を決めるものではない
    ②自分が本当に必要とするものを見極める
    ③社会がどうなっていくのか意識する
    ④他人の目を気にしすぎない(①②にも関連する)

    4章のQAは蛇足にも思えました。

  • 著者の作品は初めて読みました。社会人生活が長く共感できない部分とできる部分に差はありますが、共感できない意見についても「そういう考え方もあるのか」という発見があります。
    著者が小説家になった経緯も語られていて、そこが一番おもしろかったです。小説家としても変わった部類の人なので一度、著者の小説も読んでみたくなりました。

  • 仕事に「やりがい」を求めなくても良いという本。

    好きなことをするにも、それまでに準備がある。朝起きるところから始まる。好きな仕事をやっていたとしても、その前にすべきことがあるのだ。

  •  それなりに大学生していた時には就活に強い違和感を持っていた。スタジアムで行われた合同企業説明会で、真黒スーツの人間が会場中にひしめき合っているのを観戦席(休憩スペースに充てられていた)から見下ろした時は、何ともやりきれない気持ちになり、ムスカの例のセリフを心の中で思って平静を装った。

     結局通常コースの就活からはドロップアウトして数年経った。この本の内容はこれまで何となく自分で考えていたこととリンクする部分も多く、どこかほっとしたような気持ちになった。

    「今一つ勢いというものを持てなくて悩んでいる人には、この本は少し役に立つ、と僕は思う。それは、「勢いをつける」という機能ではない。勢いが出なくても、「人間として基本的に大丈夫だ」ということ、そういう気持ちを持ってもらえるという機能を、この本に盛り込みたいと考えている。」(p15)

     人間の価値は、仕事の種類によって決まるわけではない。仕事ができるから、できないからと言ってそれが人間の優劣になるわけでもない。頭では理解しているが普段は忘れがちなことが、明快な言葉で綴られている。筆者の仕事観、仕事における作法、時々人生観、未来予想図などが盛り込まれた一冊。

     心に残ったことをいくつか書きとめる。
    ・時代を読むよりも、自分の未来、自分の将来像をイメージして仕事を考える。
    ・人間に「投資」するという考え方。
    ・常に勉強する。すぐに役に立たなくてもかまわない。
     「新しいものに興味を向けて、何か自分にとって役に立つものはないか、と探す」。

     日本・世界全体の社会の将来について
    ・人間の仕事量は減ってゆく
    ・上昇傾向にある分野は、いずれ大多数の労働力が不要になる
    ・娯楽関連の仕事は増えているが、省エネの観点から制限される可能性がある
    ・メディアよりコンテンツ、メジャからマイナ、ジェネラルからスペシャルへ


     一歩引いて社会を眺めるようなドライな内容が多いと感じたが、筋は通っているし納得できる。ああ確かに、「人間として基本的に大丈夫だ」、とうなずいてしまう。生活していくために必要な金、その金を得る手段で最も簡単なのが仕事することなのだ。終身雇用制なんてとっくに幻なのだから、自分が生きたいように生きられるよう、将来ありたい自分に向かって進めるよう、働くのだ。
     企業戦士としてバリバリ働いて、人生を仕事にささげてきたような人とは、そりが合わないかもしれない。

  • 読み進める中で、「確かに、やりがいのある仕事があると思いこんで、自分の作り出した幻想に縛られているところがあるなぁ…」と感じた。
    森さんは冷たいと言われることがある、と書いてあったが、むしろこんなに正直に歯に衣着せぬ書き方で思いを綴ってくれる分やさしいのでは、と思う。

  • 一度病んだだけではなかなか腹落ちしないかも。

    仕事にやりがいはいらない。やりがいは幻想?湾曲された、こうあった方がいいと思い込んでいるモノ?

    仕事は生きるために(お金がないと何もできない世の中で)、なんぼか楽しく生きるための手段
    と考える方法もある

  • 学生時代読んだことがあったが社会人になり再読。

    悩みの解決となるキー(キィ)は具体論、客観論、抽象論にある という思考法を学べたのが有益だった。

  • 小説家である著者の仕事・やりがいへの考察。
    客観的な物言いで説得感があった。やりがいという妄想に縛られず目の前の仕事に懸命に取り組む事、その中で何か感じるものが自分の特性なんだなと思う。
    お金が得られてそれで好きな事ができて幸せなら良いじゃないかという論調も、本を読む前は「給料ありきで働きたくない」と思う気持ちはあったが、それはそれでアリかなとふと柔らかく思った。柔軟に働きたい。

  • 森博嗣さんの、本は本当に面白い。
    物事を客観的に見ると、いままでみていたのに見えていなかったことに気づく。
    環境や周りの目に、人間がどれだけ影響されているかを思い知らされる。
    もっと自分のための人生を生きよう。

  • 固定観念や周りの評価を気にせず、やりたいことをやればいいというようなスタンスの本だった。

  • 仕事について考えたくて、この本を手に取った。

    「自分の時間と労力などを差し出して、その代わりに対価を得る行為が仕事」

    「自分で褒めるためには、何が自分にとって価値のあることなのかを、まず考えなくてはならないだろう。それが、流されないための唯一の方法だ。」

    「自分がどれだけ納得できるか、自分で自分をどこまで幸せにできるか、とういことが、その人の価値だ。その価値というのは、自分で評価すればいい。」

    周囲の雑音に流されずに、自分自身が自分のことをわかっていること。それが一番難しくて、自分を保てずに、また自分で考えることをせずに日々を送ってしまう。

    自覚的に日々を送ること。

  • 人は働くために生まれたわけではない。働かないほうが楽しいし健康的だという文章に惹かれた。一生働かなくてもお金があれは働く必要もない。再読したい。

  • 内容はタイトルの通り。面白い。仕事に価値なんてない、という考え。

    最近は自分も、同じ考えになりつつある。生活の手段として、仕事はもちろん必要だと思うが。

    ただ、著者の場合は小説で大いに稼ぎ、もはや働く必要がないようだ。一方自分は、明日のパンのために働く社畜。この差はあまりにも大きい(笑)。

    著者は理系ならではの、クールでロジカルな思考をする。悩み相談でも、その場しのぎの慰めなどは一切入れない。

    それは決して「冷たい」わけではない(著者自身はそれを気にしてるが)。相手のためを思ったら、そういう現実的な回答になると自分も思う。

    ハッタリのない、非常に誠実な回答だと思う。それは"親心"だ。文章から察するに、コミュニケーション能力も高い。

    それでいて、ときに不器用さを装って、謙遜したりする。なかなか手ごわい相手だ(笑)。

  • 飲み屋で隣にいたおじさんの話を聴いたレベルの読後感。著者がおそらく認めているように、じっくり練って書いた話でもないので、その分あまり深みもなく。
    本当に苦しんでいる人には多少は心が軽くなるのかも?私には物足りない内容だった。

  • 身も蓋もない話。
    でも森博嗣節絶好調。
    万人には当てはまらないけど、当たり前の事をスパッと言ってくれるのは痛快。
    1日1時間で、計7日間で書いたそうだ。流石である。

  • 読み易く味があり奥深い。
    日本人全員がこんなマインドだとありがたいのだが。

  • 会社の人事として、「我が社で仕事をすることは楽しいし、やりがいがある!」と言いたくて、断続的に仕事についての本を読んできた。が、そのような夢物語を言う必要はないし、もしかすると有害でさえある、ということが腑に落ちた本。あぁスッキリ。

  • kobo読了

  • ・仕事は人生の中でそんなに重要ではないし、人の価値は仕事で決まるものではないという主張。
    ・仕事はお金を得ることと命令に従うことのバランス。仕事の意味はお金でもいいのでは?
    ・他人の目を気にせず、自分の価値は自分で測ればいい。収入も人と比べず、その中で愉しめばいい。

  • 小説家である筆者の仕事論
    やりがい という幻想というか、見えないものに対して論じています

    最低限生きていける社会は、ベーシック・インカムが既に今の世の中に導入されていると考えた方が良い という箇所になるほど〜と思いました

  • 人は働くために生きているのではない。
    働きたくなかったら、べつに働かなくてもいいんじゃないか。
    職業に貴賎はなく、どんな仕事でも偉い、偉くないということはない。
    必ずしも仕事にやりがいを求めなくても良い。

    それはそうだけど、と言いたくなるようなことが一冊通して書かれています。著者自身が、身も蓋もないか、と何度かいっているくらいです。それでも、今の社会でこれをはっきり言える人は少ないのではないでしょうか。

    やりがいのある仕事につきたい、社会の役にたちたい、成長できる仕事がしたい。もしくはいい会社に入りたい、人が憧れるような仕事につきたい。
    そう思う人は沢山います。仕事にやりがいを持つことはいいことだと言う人も沢山いると思います。
    けれど働くとは元々そういうものではなく、働いていなければ人間の価値が下がるわけではない。仕事が充実していなければ負け組ということはない。就活の成功や、やりがいのある仕事が全てではない。もちろんそれが自分の幸せだというなら、それはそれでよし。
    ただ世間のイメージやSNSで見聞きし憧れて、「やりがい」や「成長」が自分の頭の中にしかないものなら苦しい。

    仕事に夢を持っている人や、第一線で働いてきた人には合わないかもしれませんが、これから就職する学生さんなんかには、働く前提条件の一つとして読んでみるのもいいのではと思います。

    働く目的も仕事に求めるものも、自分が決めるものであって、周りの人間に与えられるものでも、他人からの評価で変わるものでもない。・・・はず。
    自分の仕事は休みが不定期で、分かっていて就職したため不満はないのですが、他の家族全員いわゆるカレンダー通りの休日で、休みを聞かれるたびに驚いたり可哀想にと言われれば、なかなか気が滅入ってきます。自分の仕事はダメな仕事、なんて気になってくるわけです。
    仕事に貴賎はない。それはそうだ。そのはず。
    ・・・著者ほどきっぱり言い切れる日はまだ遠そうです。

  • 自分の中に憲法を作る精神の憲法である、何があっても、誰に何を思われようが、自分の憲法を守ることが自分の生きている証となる。そういう生き方をしたい

  • 身も蓋もない内容。そらそうよ、ということ以上のことは書いてないのでわざわざ読む必要もない。この本を手に取る人はこんなことは分かっていて、それ以上の何かを探しているはず。

  • 共感できる部分もできない部分もあるが、こういう意見もあるんだ、と参考になる。
    いろんな人の仕事観を知りたいという目的には合っていたし、より様々な人の考えも覗き見したくなる。

    P177
    これは、仕事でも同じで、「言っていることは正しいかもしれないけれど、あの言い方が気に入らない」なんて怒る人がいるけれど、それは、そう感じる人の方も悪い、と僕は思う。言い方ではなく、言っている内容、つまりメディアではなくコンテンツをしっかりと受け止めることが優先されるべきだ。それが仕事の本質ではないか。

  • 本当に素晴らしい仕事と言うのは、最初からコンスタントに作業を進め、余裕を持って終わる。そういう「手応えのない」手順で完成されるものである。

    こういう風に仕事を進められればどんなにいいことか。仕事を進めていると、何しかトラブルがあります。

    11月から中間対応で新しいシステムが稼働しました。稼働日当日に進め方に関するマニュアルが提示されました。システムを構築する側も大層忙しそうなので、マニュアルが配られるのが遅くなるのは致し方ない部分もあります。

    ただ、よろしくないのがバックアップ。おそらく、これからシステムに色んな不具合が出ると思います。そのときにシステムを修正する時間と人がいないと、立ち行かなくなります。想像するに、現状はこのバックアップシステムが不足しているのではないかと思います。

    経験のおかげか、トラブルにも慣れてきました。トラブルが起きても何とかなるのではないかと思えるようになってきました。今月もトラブルがあると思います。なので仕事に悲しいくらい手応えがありますが、めげずに頑張ります。

  • "人は働くために生きているのではない"というメッセージを軸に、働くこととは?仕事とは?を問う。現在の日本において一般的な考えを冷静に覆すような指摘。人生の多くの時間を費やす労働に対して考え直す。

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著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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