- Amazon.co.jp ・電子書籍 (270ページ)
感想・レビュー・書評
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30年前に出た本ではあるが、内容は古くは無い。fMRIやPET等々の最新機器の無かった時代に脳の障害の症例から脳の働きや機能、そしてこころとは何かを考えた本である。脳障害の症例からみて、視覚を実現する仕組みはとても複雑に構造化されているようだ。これは視覚だけでなく、聴覚でも、触覚でもそうだろう。こんな複雑な脳の機能をAIが実現できるとは思えない。
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初版は1985年にNHK出版から刊行されたもので、2013年に角川ソフィア文庫から再刊とほぼ同時に電子書籍化されている。従ってもう30年以上前に書かれた本であり、少々古い表現も残ってはいるが、内容は古くなっていないと思われる。
脳の働きについて書かれた本としてはオリバー・サックスの『妻を帽子と間違えた男』がとても印象深いが、本書もまた長く読み継がれる価値がある良書だと思う。
第一章では言葉、第二章では知覚(主に視覚)、第三章では記憶、第四章では心について語っている。第四章では右脳と左脳についてやや詳しく扱っているが、全体として解剖学的な記述は極力避けたとのことで、イメージしやすい表現が多い。
人間は外界を直接認識しているのではなく、五感から得られた情報を解釈して脳内に再構築した世界を観ている。この解釈の部分は無意識に行われているわけだが、想像よりはるかに複雑な処理のようだ。
本書では「心」と「意識」を区別して、無意識の情報処理を心と呼んでいるようだが、言葉の選び方として少し違和感がある。しかしこれもまた、私の中の言葉のイメージであり、普遍的なものではないのだろう。