- Amazon.co.jp ・電子書籍 (310ページ)
感想・レビュー・書評
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雑誌編集者である著者は、死刑囚・後藤の告発を受けて、かつて後藤が加担したと話す別件の複数の殺人事件を調査することになります。後藤の告発の動機は、共犯者で主犯格である、かつては"先生"と慕った男への復讐でした。
告発に対してはじめは半信半疑だった著者が、おぼろげな後藤の記憶を頼りに調査を進めるうちに告発が事実であると確信し、恐るべき犯罪を犯しながら野放しとなっている"先生"を追い詰めようと、事件の証拠を掴むために奔走する過程は実話ながら非常にスリリングであり、読了まで気を抜くことができません。
調査が進むにつれて明らかになる、もっとも多くの証言が残されたカーテン屋の保険金殺害事件での詳細を知るに至っては、告発者である後藤の言動も含めて、その犯行のむごたらしさには慄然とします。とりわけ"先生"の家における"死の酒宴"では「死にたくない」と怯える被害者の死への恐怖感がありありと伝わってきます。
そして、単行本刊行時点のあとがきに続いて「真のエンディング」ともいうべき文庫版書下ろしの最終章で事件の結末が描かれることになります。一連の事件は、換金可能な弱者をターゲットに卑劣な悪知恵を働かせるも実行力を持たない"先生"と、"筋金入りの犯罪者"であり特殊な世界に住む後藤の出会いによる「強烈で危険な化学反応」が起こした凄惨な犯罪であり、リアルタイムで「塀の中から自身の犯罪を告発する」男とともに事件を暴こうとする過程が描かれた本書は、稀有な調査の記録として読むことができます。解説は佐藤優です。
余談ですが、映画を先に見ていたので、読書中はリリー・フランキーの顔が頭から離れませんでした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
いわゆる「上申書殺人事件」を扱った犯罪ノンフィクションの傑作。事実は小説より奇なりの言葉通りの展開で一気に読んでしまった。単行本の初版が書かれたのは、事件が立件される前。したがい、上申書の対象である「先生」の本名は「文庫版でのあとがき」までは明かされず、「先生」の不気味さを醸し出している。
ノンフィクションの要となるのは上申書を提出した死刑囚と人の命をなんとも思わない土地ブローカーである「先生」の対決。両者とも共通しているのは類のない凶悪人であること。「先生」の指図によって、死刑囚が犯した3件の殺人の真相に「新潮45」の記者が迫ってゆく。
最高裁に上訴中の死刑囚が上申書を提出して、犯罪のパートナーであった「先生」の犯罪を暴いてゆくという事実が前代未聞。半信半疑が記者が、地道な取材によってだんだんと死刑囚の言葉を裏付けてゆくという過程は読んでいて快感を得た。ただ、殺人の描写はリアルすぎて読めず。映画化もされるそうだが、たぶん見ないだろう。 -
狙いは処分が可能な状態であれば不動産、それが残されていなければ保険金。「土地つきでボケている年寄り」「家族から見放されたリストラ対象者」が標的にされた。介護施設を経営して対象者を探すとか手口が恐ろしい。映画はかなり前に見ている。内容はすでに忘れたが不快度がかなり高かった記憶がある。
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ノンフィクションです。
死刑囚が語った発覚していない3件の殺人事件。それらは警察に事件として把握されておらず、首謀者は普通に暮らしている・・・。
保険金や土地などを目当てに平気で人を殺すような人間が、現実に存在しているという事実。
今後自分が捲き込まれないためにも、知識として知っておいた方が良さそうな内容でした。
人生とは恐ろしいものです。 -
こんなに簡単に人を殺せるものなのか。彼らは罪悪感を感じないサイコパスなのだろうか。ヤクザものが好きでサディスティックな面があったという「先生」と人殺しをなんとも思っていない暴力の権化「後藤」の二人が出会ってしまったことは必然だったようにも思える。だが覚醒剤を与えて飼いならせるほど人間は単純なもんじゃない、ってこともいい年してわからなかったのは馬鹿としか言いようがない。
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実話。死刑囚の元ヤクザ組長が、全く表に出ていない不動産ないし保険金を奪うために実行された殺人について、首謀者を獄中から告発するという、犯罪本好き的にはたまらないストーリーが何と実話。ルポなのでハラハラドキドキという感じとは少し違うけれど、何というかこういう人が平気で世の中闊歩してるんだなぁ、と思うと何とも。氷山の一角というか、この手の話は普通にあるんやで的なことを言う人物も途中で出て来て、世間が怖くなります。完全犯罪って山ほどあるんだろうな、きっと。
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死刑判決者の保険金殺人告白。
なんて表現すればいいのか、小説と記事をいききするというか、どっちつかずのような文章が受け付けない。前に読んでるノンフィクションのせいか?比較で語るのもアレですけど。
あとがきの主張もなんだかなー。 -
恐ろしい事件の詳細がよくわかり、取材の丁寧さが表れていた。
事件のことを著者が調べた事実だけが述べられたものなので、ミステリー小説のように犯罪者の心理にせまった表現はないが、心理がわからないがために不気味で、また事件自体が事実であることが相まって余計に恐ろしかった。
最後に売上が下がる一方の雑誌のあり方について述べられていた部分が印象的だった。
深掘りしていない適当な情報は山ほどネットにある。
雑誌が生き残る道は、深く調査し、十分に精査した情報を載せることでそれらと差別化すること。そのためには丁寧な取材が大事で、それを全うしていれば生き残れるはずだという内容。
とても共感し、納得した。 -
"先生"が本当に普通にその辺にいそうな顔してて怖い。
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不動産取引と保険、やけに親切にしてくれる人には気をつけよう、と思った。