クラウドからAIへ アップル、グーグル、フェイスブックの次なる主戦場 (朝日新書) [Kindle]
- 朝日新聞出版 (2013年7月30日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (256ページ)
感想・レビュー・書評
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コンパクトにまとまっている。
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GAFAMが次の時代どのように仕掛けてくるのか?が分かる本。
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IT業界にいる人間にとって次世代テクノロジーが何から導入されてくるのかは常に注目の的になっているが、この本はクラウド、ビッグデータの次に来るもがAIである、という視点から書かれている。
確かにクラウドの登場によりビッグデータを難なく収容できる莫大なストレージをほぼ無制限に用意でき、統計情報計算に使用するハイスペックなサーバもオンデマンドで準備できる時代がやってきた。これらのデータを集計したり、定量的な傾向を導き出すテクノロジーとそれを実装するソフトウェアも登場してきているものの、肝心の「定性的傾向」を見出す手法が確立しておらず、ビッグデータのその先に向かうスピードが鈍化している傾向がある。業界的にはこれらの役割を担う職業として「データサイエンティスト」と命名し、人を育てていく流れがあるが、この部分をAIで行うことで、ビッグデータによる超定量的解析と大量の識者の思考と経験を学習させた定性的解析の組み合わせにより、人間が行うデータマイニングよりも遥かに正確な推測が行えると筆者は考えているようだ。
私個人としても、大量のデータから導き出された傾向を見て今後の動きを予想するのを、個人の経験量や本人の意思、外部からの恣意的な要素が多大に影響する人間が行うのは無理だと考えていた(データサイエンティストという職業の存在を疑っている)ところだったので、腹落ちする内容も多かった。ただし、この本はIT業界におけるAIの今後の使われ方というよりも、AIそのものの歴史や未来に重きを置いているので、そっちを知りたい人は別の本を参照した方が良いかもしれない。
最後に筆者が書いていた
「仮に研究者が人間の頭脳構造を究極的に解明したとしても、その知識を使って人間の役に立たないコンピュータや人類に害を及ぼす機械を作ってしまったら元も子もない」
という言葉はまさにその通りだと思う。私個人はAIは本質的な人間を目指すのではなく人間には不可能である大量データの超高速処理により人間の感情や勘、経験量に左右されない機械的に導き出された結論を人間に違和感なく言葉で伝えたり文章で伝えるレベルに抑えて欲しいと思っている。人間自身が自分の思考構造を解明できていない状況でこれをコンピュータで実装しようとすれば、バグが入り込む余地を作ってしまう。どんなに人間が気をつけてもバグは発生するのは明らかだし、アーキテクチャを理解しないまま作り込みを進めればその発生確率を爆発的に高めてしまうことはIT業界が経験的に得ている常識だからだ。
これまでのAIは具体的な行動を伴わない実装をされていたからまだいいが、これが機械やロボットに搭載されるとなれば話は別だ。たとえバグでも人に危害が加わる可能性のあるものを世の中に出す行為は、そもそも計算式が存在しない値を適当な数字をいれてごまかしている偽装建築と何も変わらない。
AIが人間にとって明るい未来をもたらしてくれる発展を目指してくれる事を願ってやまない。
以下、まとめ。
[more]
AIの歴史と手法には概ね以下のものがあるらしい。
?ルールベースのAI
?統計的・確率的AI
?ニューラル・ネットワーク
?は最初のAIで、文法や構文木などのルールをコンピュータに教え込みそれをベースに判断を行なうというもので、1956年に米ダートマス大学にて開かれた「ダートマス会議」にて学会の著名人を集めて意気揚々とスタートしたものの、ルールのみでは解ける問題に限界があることがわかり、1973年に英国の数学者ジェイムズ・ライトヒル卿が「AIは当初立てた目標を一切達成していない」というレポートを出したことで一度目の冬の時代に突入。その後、1980年頃に各界の識者の知識をコンピュータに移植する「エキスパート・システム」というソフトウェアが登場しブームが再燃。これに適用するための次世代コンピュータを作るためアメリカから始まった第五世代コンピュータ・プロジェクトは日本にも通産省主導で導入され、花の時代が続くかと思いきや、結局実現性の薄さから当初の目標が次々と削減され、かつ兼ねてからの財政難から国が予算を削減すると企業もこれに続き、1992年にプロローグという推論型言語だけを成果物として残して幕を閉じました。
?は?の失敗を踏まえて考案されたもので、18世紀の数学者トーマス・ベイズが考案した「ベイズ理論」をベースに、米ジュディア・パールという科学者が情報科学に応用した「ベイジリアン・ネットワーク」と呼ばれる、確率的な推論を軸としたAIである。ルールベースのAIとは違い、データの内容から導き出された推論を確率的に導き出すアプローチで、ビッグデータの波に乗って2000年以降から大ブレークした。
この方法はアメリカ国立標準技術研究所が数年に一度主催する機械翻訳のコンテストに2005年に初参加したGoogleが採用し、機械翻訳の権威たちを圧倒して優勝したことで有名である。
現在のAI分野においてもっとも力が入れられている方法で、Googleのセマンティック検索などにもこの統計・確率的な手法が採用されている。
?は無数のニューロンのシナプスなどが情報を吸収するという人間の学習プロセスをコンピュータで再現しようというまさにAIの王道とも言えるもの。歴史は古く何度か失敗を繰り返しているが、2006年にイギリスのコンピュータ科学者ジェフリー・ヒントンらが「ディープ・ラーニング」と呼ばれる手法を提案してからブームが再燃。最近ではGoogleがスタンフォード大学と組んで作ったAIなYouTubeから猫の画像を認識した時に使用されたり、AppleのSiriもこのディープラーニングを採用している。
AI と IAはせめぎ合い
これまでのITはIAが支えてきたが、もはや伸びしろがなくなってきた。近年になりAIが盛り返してきており、おそらくは人間とコンピュータ(最近ではモバイルデバイス)とのインタフェースに何らかのAIが入り込んでくる可能性が高い。
第三章
・ビッグデータとAIは表裏一体。データ量が増えれば増えるほどAIの精度が上がる。
・Siriの本当の目的は、ユーザーのフロントエンドをGoogleから奪うこと。iPhoneからGoogleMapを外して自社製品にしたり、デフォルト検索エンジンをBingに変更したりしたのもすべてそれが目的。
・Siriに喋った内容はユーザーごとに個別IDがつけられ6カ月保持。その後はIDが外され18ヶ月保持。つまり都合2年間アップル側に保管される事になる。
・Googleは「GoogleX」と呼ばれる秘密の研究所で、自動運転車やGoogleグラス、軌道エレベーターといった荒唐無稽なものまでが研究されている。 -
AIの歴史、全体把握と関連用語を知るのにとても役立つ本でした。
例えもとてもわかりやすく、すぐに業務に活かせる知識を得られました。
初心者はまずこれから読むといいと思います。 -
よくまとめました、という本
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最近よく耳にする「クラウドサービス」「ビッグデータ」。
これらの先にあるAI技術は今どんな状況なのか。
世界的大企業が狙っている未来はなんなのか?
などなどをわかりやすく説明してくれている本です。
昔、スティーブンスピルバーグ監督の「AI」という映画を
同期と見に行ったことがありました。
終わり方が悲しすぎて、私がしゃっくりあげて号泣し、
もう1人の女子はおやつをポリポリ食べていたため、
一緒に行った男子に「もうお前らとは映画行かない」と
言われてしまいました。
AIという単語で思い浮かぶのはこの思い出です。
そんな映画の世界だった未来が、
冗談ではなくすぐそこまできております。
AppleもGoogleも、検索ポータルとしてのシェアを自分とこが1番になるようにしたいみたいなんですね。
なぜか。
ものすごくざっくり言うと、今のAI技術は大量の情報をもとにしていて、それをAIに投入することにより、AIの精度が増し、より高度なAIになっていくそうなんです。
だから情報量は多ければ多いほど自分とこのAIの信頼性が増すし、精度も高くなる。
で、AIで世界的な主導権を握ることができれば、IT分野だけでなく、ありとあらゆる分野でその技術を活用した製品やサービスを展開することができます。
それを狙ってるんですって。
ネットの情報をいかに多く集めるかが大事になるのだそうです。
イヤーー。
読んでる途中でなんだか近い未来が怖くなっちゃって読むのやめたくなっちゃった。。。
例えば私は運転ができないので、自動運転の車ができたらすごく嬉しい。
でもそれが普及したら運転手という職業はなくなってしまいます。
例えば私は英語が話せないので、精度の高い同時通訳機器ができたらすごく嬉しい。
でもそれができたら世の中に翻訳業という職業はなくなってしまいます。
例えば介護ロボットができたら今までヒトがやっていた仕事の一部はロボットに変わられて、介護職の求人は減ってしまいます。
教師によって教え方や指導方法に違いがでてしまうから、知識を教えるには教育用ロボットを使いましょう、
という発想になることも大いに考えられます。
教師の総数が減るかもしれません。
高度なAIを搭載したロボットは、うつ病などの患者を慰め癒すことができるんだそうで、実際実験でも多くの患者がロボットと気付かず癒されたそうなんです。
ヒトに相談するよりロボットに相談する方が人の心を救ってくれる、なんてことになるかもしれません。
近い将来、AIをベースにした技術やロボットがありとあらゆる分野に進出してくるので、
ありとあらゆる職業人に働き方の変化を強いることになるでしょう。
ヒトは一体何をして生きていくんだろ。
ポジティブに考えれば、「人は都度、時代に沿った新しい仕事を見つけていくからAIが普及しても職を失うなんてことはない」という見方もあります。
その分ヒトにしかできない仕事をするだろうと。
確かに知識豊富でアクティブでコミュニケーション力もあってバイタリティ溢れる人なら、
そういう新たにできた仕事についていくことができるんだと思うんです。
でも世の中にはそうじゃない人も、半分かそれ以上はいるわけですよ。
例えば勉強も苦手だし、体力もそこまでないし、コミュニケーション力もそんなにない。
でも運転はできるからタクシー運転手になってる、っていう人も世の中にはたくさんいるはずなのですが、
じゃその人がタクシー運転じゃない新しい時代の仕事について器用に生きていけるのかしら。
まぁもちろん生きていけるヒトはいるんだろうけど、そうじゃなく困窮していくだけのヒトもたっくさんでてくると思うんだよねぇ。
そうなったらそんな世の中は幸せなのかなぁ。。
うちの息子たちはそんな時代を無事に生きていけるのだろうか。。。
っていうか息子の前に、私はそんななかで仕事をして生きていけるのだろうか。。
新しい技術にワクワクする気持ちもすごくあるんだけど、
なんだかやっぱり新しい時代が来るっていうのは怖いなぁ。
発想が守りに入ってるって時点で、歳をとったってことなのかねぇ -
昨今注目を集めている「ビックデータ」や「自動運転」の基盤となっているAIについて、その実態・歴史・価値・今後の社会に与える影響をわかりやすくまとめた一冊。
かつて流行していたエキスパートシステム等のルール・ベース(自然言語の法則をコンピュータに覚えさせる)のAIと異なり、現在の検索エンジン等に使われているAIは確率・統計的なアプローチ(膨大なデータからコンピュータが自然言語の法則性を学習する)が用いられている。
この確率・統計的アプローチも、人間の思考をより正確にトレースする事に対しては、いずれ行き詰まりことは予想されており、最新の技術では、人間の脳の学習過程を模擬したニューラル・ネットワークを用いたアプローチがとられているとのこと。
AIというと、個人的にはSFのイメージを想起してしまい、人間と同等の知性を実現するものと考えてしまっていた。
現在のAI研究はそういったものとはちょっと異なり、人間の思考・言語をコンピュータがより正確に理解し・応答するためのインターフェースを作ろうといる。
何故このインターフェースが今後の社会に重要かと言えば、主に以下の3点か。
・ネット上の膨大なデータを処理し、意味ある情報を取捨選択してビジネスチャンスとするため。
・直接的にコンピュータが人間と対話し、何らかのサービスを提供するため(介護ロボット等)
・コンピュータが膨大な環境情報を処理し、元来人間が行ってきた処理を代替えするため(自動運転等)
本書を読んで、AIの可能性の広がりを認識することができた。この技術は社会的なインパクトが非常に大きく、コンピュータのOS以上に基盤となるものだと感じる。 -
幾度となく冷や飯を食わされてきたAIが、機械学習によって息を吹き返す様子を活写する。
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人間よりも賢く論理的に思考するAIと、ひたすら自律的・効率的に作業するロボット。それらが日常生活の中にじわじわ浸透し続けた結果、その先にはどんな風景があるのか?誰も完全に制御できないままに技術だけが先鋭化していくという意味では、原子力の扱いと同じくらいのヤバさをビリビリ感じる。
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統計学の便利さというか強さは半端ない。
ビジネスは強い。
AIがアンドロイド、エクセル、ユニバーサルサービス、インフラ、といったものになれば、ほんとに世界が変わる。 -
今後のキャリア考えるのに参考になった
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どこまでも人間的な思考を追求するのか、ビッグデータで統計的に処理するのか
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googleが自動車開発に乗り出す裏にはビッグデータを基盤としたAIの急速な進化と、ビジネスの主導権争いがあることがよく分かりました。今後、米IT企業の戦略を見るうえでの視点が増えました。それにしても、AIが凄まじい進化を遂げていることに驚き。
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この本の素晴らしい所は、「AIとは何か」をだらだらと書き連ねているのではなく、
AIを通して、ビジネスの主役たちが何を狙っているのか、また私達がAI時代に備えて考えるべきことは何なのかについて詳細に語っている点だ。
・コミュニケーションの意味とは
・我々人間の価値とは
・産業革命とAIの革命では何が異なるのか
文系理系関わらず、これからの社会を視るためには、読まなければならない一冊だろう。 -
AI(artificial intelligence;人工知能)の発生との発展の歴史、そして現状と進化の方向性について解説されている。
アップル・グーグル・フェイスブックが台頭するこの世界のインターフェイス
現在のAIは「ベイズ理論」と呼ばれる統計・確率的な手法に基づいており、人々の意識の有無にかかわらずネットに浮遊する大量のデータを消化・吸収することによって、AIがさらなる進化を遂げている。
一方、ウエブ上の情報が爆発的に増大すれば、欲しい情報よりも、それ以外のノイズの方が圧倒的に多くなってしまうのだが、そこからヒトの意図することを理解し選び出してくれるにはAIが必要となる。
ビッグデータとAIは共生関係にある。
グーグル会長のエリック・シュミット氏のコトバが引用されている。『文明の始まりから21世紀初頭までに生産された情報量は約5エクサ・バイト(エクサは10の18乗)だが、これと同じ情報量が現代社会ではたった2日間で生産される』とのこと。
攻殻機動隊ではないが、情報の海から生命体(知性)が発生するのも無理刈らぬコトだと感じているし、定義によってはすでに存在しているといってもいいのかもしれない。
AIをどう定義するのか、また、当初楽観視していたAI開発においての流れがコンパクトにわかりやすくまとめられて、楽しく読めた。
また、現状と未来においてビッグデータとどのように付き合っていくべきか、課題もあり希望もあり(おそらくヒトを止めることはできない)、AIに対する新たな視座を与えてくれる本だった。
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【内容(「BOOK」データベースより)】
しゃべるスマホ、自動運転車、ビッグデータの解析―。共通するキーテクノロジーは、AI=人工知能。人間が機械に合わせる時代から、機械が人間に合わせる時代への移行は、ビジネスにどのようなインパクトを与えるのか?クラウド以上の変化を生む、AIの未来を読み解く。
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【著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)】
小林/雅一
1963年、群馬県生まれ。KDDI総研リサーチフェロー。東京大学大学院理学系研究科を修了後、雑誌記者などを経てボストン大学に留学しマスコミ論を専攻。ニューヨークで新聞社勤務、慶應義塾大学メディア・コミュニケーション研究所などで教鞭をとった後、現職
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【目次】
はじめに
第1章 なぜ今、AIなのか?
──米IT列強の思惑
第2章 “知性"の正体
──AIの歴史から見る、進化の方向性と実力
第3章 “知性"の正体
──AIが生み出す巨大なビジネス・チャンス
第4章 “知性"の陥穽
──AIにまつわる諸問題
おわりに
「メルツェルの将棋差し」から「ワトソン」までの時間
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