男たちの晩節 (角川文庫) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • 以下の短編6編が収録されています。
    『いきものの殻』
    定年退職してもなお、過去の立場に囚われて見栄を張るしか愉しみのない老人の思いが沁みてくる。
    『筆写』
    ほとんど、自宅の自室とたまに出る近所の散歩によって手に入れる甘味を愉しみに生きる老人が家政婦に抱く気持ちは一方通行だと分かって入るが、余りにもリアルに人生の終焉に差し掛かる身体の不自由さだったりを読んでいるうちに応援するような気持ちになった。同感を感じるわけないのに。
    『遺墨』
    導入から展開は読めず、前の2作と違い2人の立場から、もしくは俯瞰した視点で書かれる流れにゾワゾワしながら読み進める。老人は最後何を思ったのだろう。
    『延命の負債』
    キツい話でした。ほぼ冒頭からザワザワと落ち着かない語り部の思惑に結末を予想せずに居られない。松本清張のこの手の筆致は、ジワジワと真綿で首をしめられるような気になる。
    『空白の意匠』
    これは、可哀想な話だった。新聞社にとっての新聞広告の生命線ぶりを思い知り、広告部長の行く末を恐る恐る読み進めることになる松本清張の落とし方は潔いが、編集部長には殺意を覚える。
    『背広姿の変死者』
    これから、死のうとする男の語りが続く。今までに見てきた定年後の悲しい生き様を見て何を思ったのか。私には分からないけれど、妙にリアルに思える老人達の行く末。
    『駅路』
    この一冊の中で唯一のミステリー。定年退職を迎えた真面目で実直な夫が気ままな一人旅に出た。1ヶ月も帰らない、その行方は…夫が集めていたゴーガン(原文まま)の絵を見て刑事が思い浮かべるゴーガンの言葉は原田マハ好きな私もピンときますが、そこは松本清張なので簡単な結末でないのです。ゴーガンの言葉は知らなかったのでネットで検察したら、この話はドラマ化されてました。観たいな。

    総じて、人生ってなんだろなと思いを馳せる話の連続。50代女の私には、勿論解り得ない登場人物達の感情だったり思考なんだけど、それがむしろ、結末を予想させない面白さに繋がっている。

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著者プロフィール

1909年、福岡県生まれ。92年没。印刷工を経て朝日新聞九州支社広告部に入社。52年、「或る『小倉日記』伝」で芥川賞を受賞。以降、社会派推理、昭和史、古代史など様々な分野で旺盛な作家活動を続ける。代表作に「砂の器」「昭和史発掘」など多数。

「2023年 『内海の輪 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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