- Amazon.co.jp ・電子書籍 (269ページ)
感想・レビュー・書評
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死刑反対論者(私はそう)にとっても今日本の死刑囚でこの人物だけは死刑というか極刑しか能わないのではないかと思える人物が、本書でその鬼畜的犯罪を論じられる松永太である。巧みな弁舌と恐怖によって自らの妻一家7人をお互いに殺害し合う凄惨な状況に追い込んだ彼の所業は筆舌に尽くしがたいほど残酷で、読み進めるのが辛い。私は精神科医だが、正直彼の心の闇などと言われても分析できないというか、サイコパスの見本のようなこの人物の行動は、もう遺伝子の間違った組み合わせが彼にこういう行動を仕向けているとしか言えない、言いたくない気持ちになる。
さて、本書は、もう1人の主役、松永の妻であり、彼に虐待の挙げ句洗脳された状況下で殺人に加担した緒方純子について、その被害者側面にも強く焦点をあてている。本書当時では、一審で両者死刑、しかし高裁では緒方は無期に減刑された時点で終わっている。その後最高裁で緒方の無期、松永の死刑は確定していることは付け加えたい。
尚、彼らには2人の息子がいて長男は昨年本を出版している。すぐに読み進めるにはなんとなく躊躇を覚えるので、しばらくしたら読んでみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
事件については当時の報道、wiki等で知っているレベルにて読みました。身近で起こっていたと考えると悍ましいですね。
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これが実際にあったなんて‥
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よく聞く実験としての学習的無力感が、実践されるとこうなるのか、と衝撃的な内容だった。
追い詰められて段々と被害者の感覚が麻痺していく様が読み取れてゾワゾワとする。
会話の中からその人ごとの隙をみつけて、うまく突いていき、そして事を成していく松永の凄さには言葉を失うばかり。
読めてよかった、けど、しばらくは頭から離れなそう。 -
残酷すぎて一日で読み切れなかった。途中ではいる写真がリアルすぎて怖かった。もし、自分の家の隣で同じことが行われていたら気がつくのだろうか??現代の日本でこんな事件が起きたなんて信じられないし信じたくないが、事件について深く知ることが出来たのは良かったのかもしれない。
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この事件はフィクションではない、実際に七名の尊い命が松永の指示によって奪われた。読み進めていくうち、無常さに心が荒む思いだった、この内容では断念してしまう人が多い理由も理解できる。しかし、実際に起きたことは文章で表すよりももっと残酷で恐ろしいものだろう。暴力や殺害方法の記載はあるが、被害者の胸の内はこの先も語られることはない。優貴くんでさえ、松永に出会うまでの数年間という人生があり、この先も続くはずだった。絶対に風化させてはいけない事件だと思った。
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どうなってあんな凄惨な事件が起こったか、とどうなってそれが明るみに出たのかがよく分かった。主犯の男はもうほんまに稀代の天才詐欺師かつサイコパスですな。こんなんに絡め取られたらもう再起不能やろとしか言いようがない。
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実際に起きたとはにわかには信じがたい凄惨な事件。首謀者にはカリスマ性があり口が巧みだったようだが本書を読むかぎりでは空疎な駄弁を弄する人物にしか見えない。人を支配する心理操作に長けていた彼が通電装置を手にしたことでこの事件は可能になった。加えて被害者にも特徴がある。「不幸にも松永の餌食となった者は、純粋な性格だが間が抜けている、実家がそこそこ裕福である、子供がいる、といった特徴がある」。姪に言われるがまま11件もの携帯契約の名義貸しをしたり、ありえない儲け話を信じて会社を辞めたり、子供が何人もいるのに知り合ってすぐのプロポーズを疑わず離婚したり、どうしてこんなにお人好しなのかと読んでいてイライラ。実際、首謀者の脅しに屈しなかった人物は無事だったことからこの手のサイコパスには弱みを見せたら負けだとわかる。17歳の少女が逃亡に成功しなかったらこの事件は明るみに出ず(もちろん彼女も殺害され)更に犠牲者を増やしただろう。不憫なのは二人の幼い子供、とくに肉親の殺害と解体をやらされた挙句殺された10歳の少女。最後まで読んでも首謀者がなぜこんな残虐非道をしたのか、本人が語らぬゆえその解明はない。
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これがノンフィクションであるという受け入れ難い事実。だけど、読んでいて一番恐ろしいなと思ったのは、残虐すぎる(本を薄く開いて薄目でしか読めなかった)犯行についても、回を重ねていくうちにすんなり読み進められるようになっていた自分の心。