セデック・バレ 第一部:太陽旗/第二部:虹の橋【通常版 2枚組】[DVD]

監督 : ウェイ・ダーション 
出演 : リン・チンタイ  マー・ジーシアン  安藤政信  ビビアン・スー  木村祐一 
  • マクザム
4.25
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本棚登録 : 128
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4932545987064

感想・レビュー・書評

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  • 物凄い物語だった。こんなにも勇猛果敢で猛々しく、真の男への憧れと死をも恐れぬ矜持を持った部族が台湾にいたなんて…これは本当に驚いた。しかも百年たらず前の話…近代史ですよ。清から台湾を割譲させた経緯は知っていたけれども、お恥ずかしいですが、露社事件もセデック族も全く知りませんでした…
    一族の誇りを守り、真の男として最後まで戦って、潔く死んでご先祖様と同じ場所へ行く…凄まじい価値観です。ある種の憧れを感じてしまいます。だけど銃弾や矢、果ては砲弾まで飛び交う修羅場に身を置いて男々しくも全身全霊を掛けて前へ出るなんて…生半可な気持ちで出来る事じゃありませんです。女性たちも然り…です。
    映画も色々と見て来ましたが、一生涯の記憶に残る作品になる様な気がします。凄い作品でした。

  • 台湾の映画は久しぶりに見る。
    『日本による台湾統治時代に発生した、先住民による大規模な抗日運動「霧社事件」を映画化』したということで、この事件自体知らなかった。

    日本兵、警察の搾取にひたすら我慢するのだが、最後は爆発するあたりは任侠映画のようである。それが多人数による奇襲というあたりは赤穂浪士の討ち入りのようでもある。
    どこか行き過ぎのところも描いていて、子どもが、先生から女性子どもまで「哀れな日本人め!」と殺していく。画面では見せないが。

    決起の理由はセデック族が、単なる野蛮人として扱われ、学校や郵便局はできるのだが、大事な狩場をなくしていき、誇りを奪われていくことにある。映画では「掟」といっていた。

    亡くなった父親の霊との輪唱のような歌や武闘の舞が素晴らしく部族の誇りがキチンと伝わってくる。したがって最後の武装蜂起が不自然ではない。

    相手が日本人なのが少し気にかかるが、ここで描かれている日本人はさもありなんということばかりで、違和感はない。むしろ清々するのはなぜなんでしょう。
    キネ旬ベストテン2013 4位。

    第二部
    部族の誇りを賭けての戦い、後半は当然ながら日本軍の反撃にあい、戦士たちは相次いで亡くなっていくが、全滅までには至らない。日本軍に味方する部族もいて、部族VS部族の戦いも繰り広げられところが痛々しい。
    裏で自決、自殺する女性たちも出てきてこちらも痛々しい。痛々しい部分は少し間延びしてお涙頂戴になっているが、戦いの演出は丁寧、スピーディで、世界水準に達していて見応えがある。村自体を作り、燃やしていく。吊り橋も壊していく。スケール感もある。

    最後、100年前に亡くした武士道を台湾の奥地で見ることになったと日本の大将が述懐する。
    命以上に大事な誇りのために戦うというのだが、正しかったのかと思うところもありますね。難しいところ。

    事件はこの後、日本側が非を認め台湾側が親日的になったとあるが、そのあたりの事情はあまり描かれていない。それだと武装蜂起は意味があったとも思えるのだが。

  •  日本統治下の台湾で起こった原住民セデック族の反乱、霧社事件を映画化。

     おそらく日本軍を敵とした映画でこれほどまでに日本軍を一方的な悪として描かなかった映画はなかっただろう。首狩りをするセデック族の方が明らかに残虐な行為として描かれていることの重み。
     よく聞かれる文明化でよかったこともあったとか、いい日本人もいただとか、反乱という争いに泣き戸惑う女達とか、あらゆる要素を何重にも組み込んで重厚なドラマが展開していく。
     
     何よりすごいのは主演のモーナ頭目を演じているのは俳優でもなんでもないタイヤル族の部落の長の人なのだ。この頭目の顔力がとにかくすごい。台湾政府の統治になってからも1980年まで原住民の同化政策は続いていて、その中を生きてきた凄みが彼から感じられる。
     映画の全編に渡って彼らの歌や踊りが流れる。エンディングロールまでしっかり見た映画は久しぶりだ。
     部族の歌や踊り、教えを語り継ぎ、世界中に伝えたこの映画は80年の時を経て掴んだ彼らの勝利なのだと思う。

     私達は他者の誇りを奪ってはいけないのだ。それを強く感じた。
     これは先の戦争での他の国に対してのことでも本質だと思うし、日本人同士でも沖縄や福島のことを考える上でも重要なことだと思う。

     魂が震える名作。
     全ての日本人に見て欲しい。

  • 2020/3/27
    面白いが、長い。

  • 長らく観たいと想いつつ、据え置いていた作品をやっと観られた。日清戦争によって台湾に入ってきた日本による民族併合の実態をどこまで再現しているのかは謎である。台湾の少数民族の生き方、先祖や自然を崇拝し、狩猟採集や首狩りという独特の儀式の様子がつぶさに描かれていた。刺青や唄や踊り、口琴等の民俗につても非常に興味深い。誇り高い部族・民族を侮蔑し、牛馬以下に酷使する人間(ここでは戦時下の日本人)は、果たして持続可能な世界を築くことができるのだろうか。文明とは何か、生きるとは何かについても考えさせられ、歴史を顧みることの大切さも痛感させられる作品。

  • 負けることが分かっていても、アイデンティティのために立ち上がって男たち。

  • 台湾と聞いたら「小籠包を食べて〜茶葉をおみやげに買うでしょ〜」というイメージが浮かびがちではあるけれど、その歴史について、思いを馳せてみたことはあるでしょうか。
    かつて日本の一部であった時代の、台湾の原住民の人たちの生活ぶりを垣間見ることができます。

    歴史の事として、台湾、日本どちらかに偏る事なく描かれている作品なので、そう遠くない過去にあの国で何があったのか、知る一助となると思いました。

    戦う男たち、それを支える家族たち、国を越えて色々な立場の人たちの気持ちが交錯する作品です。2巻分で長いけれど、台湾を愛し台湾に行きたい&行くことがあるならば、観てほしい1本。

  • すごい映画を見た!という発見。
    脚色されていることをふまえても、こんな事件があったなんてことを全く知らなかった。

    戦闘シーン。民族の勇敢さ。日本人ひどいよとか。
    ほんとにすごい映画でした。

  • 凄い映画だった。
    よくこんな映画を作ったなと思う。
    何が凄いのかと言えば、台湾でも忘れ去られた首狩り族の子孫が実際に、首狩り族の役として出てくるところであったり、その音楽や凄まじい戦闘シーンだ。
    この映画は20世紀初頭の日本統治時代の地元原住民の最大級の武装蜂起「霧社事件」を描いた作品である。セデック族のマヘボ社の頭目モーナ・ルダオは勇猛果敢で恐れられる頭目であった。
    しかし、日本軍に占領されること30年、日本軍の強さを十分に理解していた彼は、日本軍に反抗することはしなかった。しかし社の若者を中心に統治への不満は溜まる。若者は首を狩ることができて一人前の大人になる伝統があったのだが、当然日本統治下ではそうした野蛮な行為は許されない。
    その社のまとめ役として双方の間に立つルダオもまた民族の存続と誇り、どちらを守るべきなのかを苦悩していた。
    ある日、日本人警官の横暴により、セデック族の若者たちの怒りが爆発した。
    ルダオもまた長らく押さえ込んできた怒りと民族への誇りを燃やし、遂に武装蜂起へといたる。運動会場を襲撃し、武器を奪い、深い山の中で徹底したゲリラ戦を仕掛けるセデック族の男達の壮絶な戦い。「死んだら虹の橋の向こうで会おう」を合い言葉に次々と倒れていく男達…
    という壮絶な内容ではあるが、現地住民の子孫を役者に配し、すさまじい戦闘シーンと共に流れる伝統的な音楽によってすさまじい勢いでその迫力が伝わってくる。

    この映画は戦前の日本を「文明」として描き、「文明」を押しつけた結果に起こる衝突を描いているといえる。
    こうした抗日映画はナショナリズムを煽る内容であるという批判があるが、この映画は双方の立場を理解し、決してナショナリズムを煽るものではないようにしようとした監督の配慮を感じられる。

    役者、映像、音楽とどれも非常に素晴らしく、前後編合わせて4時間20分という大作だが、それに見合うものだと思う。

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