- Amazon.co.jp ・電子書籍 (122ページ)
感想・レビュー・書評
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乳ガンと付き合いながらも、ニューヨークへ移住したジャーナリストによる活動の記録。死の直前まで仕事を続け、自分の可能性を追求し尽くそうとする姿は、涙と感動を誘う。
我が身を振り返り、、、まだまだ甘い!と感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ジャーナリストの千葉敦子によるエッセイ。がんを患いつつも、ジャーナリストとして夢を追いニューヨークに引っ越し、生きていく日々の姿を描いている。前向きに挑戦し続ける姿勢と、新しいこととの出会いによる自分の価値観の見直し、人に頼り頼られることの意味など、著者の体験を通して多くのことを知ることができる。
印象深かったのは、「重い病気にかかると、それまでの人生の決算表を見るような事態になります。それまでに自分の頭と心と体と時間とエネルギーを何に使ってきたかが、はっきり示されます。友情をどれだけ育ててきたか、もその一つです。」という一節。彼女の場合、「私の生活の不便さをなるべく軽くしようと、雑用を引き受けてくれている友人は二十数人います。一人や二人に頼っていたのでは、その人の負担が重くなり過ぎてうまくいかないと思います。」とのことで、普段からその人たちに調べ物をしてあげたり、悩みを聞いたら役に立ちそうな本を贈ってあげたり、できる限り友達に尽くしていると言い、その結果として、お互いに少しずつ尽くし合うような関係を築いてきたことを語っている。
日本でよく言われる自己責任論よろしく、自分も誰かの世話にならず自分の力で立ちたい、と思っていた。誰かの助けを貰わず、誰かを助けるのは自分に余裕がある時だけ、と決めて、近くの人にもあえて不干渉にすると決めてかかっていた。ただ、その生き方自体、ぜいたくなものであって、サステナブルなものではない(どこかで無理が来るもの)と思った。急に自分に何かあったとき、お節介してくれる誰かが必要になるだろうし、逆に急に何かあった誰かにとっても、お節介する誰かは時に役に立つ。干渉の深さや頻度には注意が必要だが、もう少し近くの人や友達の助けを求めたり、助けになったりするように振る舞ってもいいのかもしれないと思った。頼ることやお節介することへの抵抗感に自覚的になれた本だった。
また、もう一点。千葉が日本の病院がいかに良くないかを語るシーンがある。日本の病院は安かろう悪かろうだ、というのが結論だ。医療費が安いため、シーツを変える頻度も低く、病院食もまずく、トイレやシャワーは病室になく、電話も自室でできず、不便で不潔で生活しづらい状態が放置されている、という。「日本は国民皆保険により医療費が安く抑えられており、貧富の差に左右されずに多くの人が助かるのだ」という日本の医療制度擁護論を私は無自覚に信奉していたので、これは新しい視点だった。国民皆保険制度をなくしてしまうことは望ましくないと思うが、病院生活のQOLはあげたほうがいいと思う。じゃあどうやるの?はここでは議論しないが、引き続き気になる点である。