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感想・レビュー・書評
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余が「若者」であつた時代、どこの書店でも、「二十歳の原点」は必ず平積みで売られてゐた。何度かその平積みの文庫本を手にしてパラパラっと頁をめくったことはあったが、結局購入することはなかった。
ブクログで見ると、登録者數・感想數ともに僅か。時代は變はつたんだねえ。
友だちに、二十歳の原点を読み、感化されて立命館大学に入学、そのまま京都府で就職して居着いてしまった関東人がいた。
。さて、高野悦子さんとはどんな人だったのか、どんな学生時代を送り、なぜ自殺に至ったかなど、考えてみることにした。せっかくなので、続編として刊行された「序章」と「ノート」にも目を通した。
シリーズ全体を通しての感想は、「二十歳の原点(最後の日記)」にまとめて書くことにし、「序章」と「ノート」には、それぞれ特に目に付いたことを記すことにする。
「二十歳の原点」の元になった日記(大学ノート)は、
1969年1月2日、彼女の二十歳の誕生日から始まり、
当時の「成人の日」であった1月15日に
「独りであること」、「未熟であること」、これが私の20歳の原点である。と、記している。
6月22日、最後の日記を記し、6月24日未明貨物列車に飛び込み自殺。
遺された日記を元に出版物を作るには、始めと終わりのタイミングが出来すぎていて、「二十歳の原点」なんて、「標題にしてくれ~っ!」と訴えてるようではないか。
・彼女の日記には、早くから自殺や死への言及が見られ、脳裡の片隅には常に自殺・死が存在しており、自殺へのある種の憧憬めいたものがあったようで、自殺に傾きやすい気質を有していたと思われる。
・概して云えば「ぐうたら女」。本人も自覚している。
日記中でしばしば、目標を立て、決意表明をし、自らを鼓舞するが、たいていは企画倒れに終わる。根を詰めて勉強するのも苦手だった。
・「かわいい」、「美人だ」と云われることが少なくなかったようで、本人もある程度自信を持っていたが、長所を活かしきれず、「垢抜けしない女」だった模様。
チヤホヤされる存在でもなかったようだ。
・要領の悪い不器用な人だった。ヤクザの適性として「アホでは成れん。賢すぎても成れん。中途半端はなお成れん。」と云われるが、これはヤクザの世界だけでなく、大抵の社会に通用する至言と思うが、彼女は「中途半端」の典型だったんだろう。
余もひとのことを言える筋合いでもないが。
・特に人間関係なり交際術に関して、多くの「中途半端」な人にとっては、永遠の謎であり永遠の課題であると思うが、詰まるところ彼女最大の悩みはここにあったのではなかろうか。アッケラカンとした底抜けのアホは人間関係での悩み方を知らないし、賢すぎない程度に賢い人は上手く立ち回って良好な人間関係を築く。その点「中途半端」な面々ほどツラいものはない。
・自殺の「直接のきっかけ」は失恋と推測されるが「根本的な原因」は不明、との評をどこかで見た。概ね妥当な見解とは思うが、個人的には、先述のとおり自殺に傾きやすい気質の持ち主(精神病的気質)であったことは見逃せない。
加えて、ベストセラー「二十歳の原点」には出てこないが、当該日記の始まる直前つまり「序章」の最後の方で、彼女は、「準強姦」今でいう「準強制性交」の被害者となっていて、これが恐らくは彼女の「初体験」。この経験が暗い影を落としているのではないかと思っている。
・ふと、ドストエフスキー「地下室の手記」の主人公を思い出した。高野悦子さんは「悦子よ。強くなれ」
という風に自分に呼びかけるごとくに書いているのが散見されるが、
地下室からのメッセージよろしく「諸君!」とでもやってれば、死なずに済んだのではなかろうか、などとバカなことを考えた。
確か彼女、生前に「地下室の手記」を読んだことがあるはず。
・或いはふと、太宰治「ダス・ゲマイネ」を思い出した。
「走れ、電車。走れ、佐野次郎。走れ、電車。走れ、佐野次郎。出鱈目な調子をつけて繰り返し繰り返し歌つてゐたのだ。あ、これが私の創作だ。私の創つた唯一の詩だ。なんといふだらしなさ! 頭がわるいから駄目なんだ。だらしがないから駄目なんだ。ライト。爆音。星。葉。信號。風。あつ!」
彼女がダス・ゲマイネを読んだことがあるかないかは不明。
太宰を読んで、太宰は難しいと書きながら、太宰に惹かれると書いているから、太宰ファンだったのは間違いないと思うが。
6月24日未明
「走れ、電車。走れ、高野悦子。走れ、電車。走れ、高野悦子。出鱈目な調子をつけて繰り返し繰り返し歌つてゐたのだ。あ、これが私の創作だ。私の創つたいくつもの詩の一つだ。なんといふだらしなさ! 中途半端だから駄目なんだ。だらしがないから駄目なんだ。バスケット。ヘルメット。タオル。投石。自慰。マルクス。失恋。勉強。たばこ。ウイスキー。あっ!」詳細をみるコメント0件をすべて表示
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