戦略読書日記<本質を抉りだす思考のセンス> [Kindle]

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  • 本書では「戦略、経営の本質」を垣間見ることのできる、非常に多くの分野の本が取り上げられており、著者の好き嫌い全開で本の紹介、そこから読み取ることのできることが論じられている。私見にはなるが、この本を読むことによって著作である「ストーリーとしての競争戦略」などにおける著者の考え方に対する理解がより深まるのではないかと考える。それほど著者の思考、価値観を垣間見ることができる本となっている。以下では、私が著者の主張の中でも特に参考になった考え方を3つ取り上げ、それぞれについて所々引用しながら考察をしていく。



    まず1点目に、この著作の中で何度も繰り返されている「経営はスキルよりもセンス」という主張について考えてみる。著作の中では、『「日本の経営」を創る』(三枝匡, 伊丹敬之)を引用しながら「商売丸ごとを動かしていくのが経営であり、それは「綜合力」の勝負となる。(中略)経営者が必要とする綜合力はつまるところセンスの範疇に属する。」(p. 90-91)と述べられており、能力をスキルとしかとらえない人はとんでもない誤解をしていると述べている。著者が述べているように、それを言ってしまっては元も子もないのだが、センスを身につける方法がない訳でもない。著者の別の著書である『経営センスの論理』という書名に表されるように、一般性、再現性のない経営に対して場数を踏み(つまり、仮説と現実を往復し)、自分のまずかった点というものを論理化することによって自分の中で「論理の束」というものを作り上げる。このようにすることによってある程度の状況に応用可能な自分の中での論理が出来上がり、これがセンスを醸成するということである。この主張から、やはり経営とは非常に属人的なものであるということを再認識し、今後研究を行う際にも、客観的なデータやファクトは押さえつつも、そこには血の通った人間同士のインタラクションが存在しているということを忘れない、ということを大事にしようと考えた。



    2点目に「仕事としての経営学」について述べる。著者は「理論と論理とどっちがエラいかという話ではない。僕は論理を考えるほうを仕事として選択しているということだ。」(p.406)と述べているように、自身を経営学者ではなく、「経営論者」であると定義づけている。そもそも一般性、再現性のない経営というものを対象にする「経営学」と「経営論」の間には依然ジレンマが存在し、それ故に研究者は様々なスタンスを取っているが、「経営学であろうと経営論であろうと、仕事である以上価値は客が決める。経営論者のお客は実務家であり、経営学者のお客は同業者である経営学者である。」(p.408)と述べられているように、それぞれが誰を対象としてアウトプットを行っているのか、ということを認識することが重要である。どちらとも同じ「経営」を対象に、仮説を持って事例を分析し、そこから得られたファインディングというものをアウトプットとして提出することを目指しているものの、対象が全く異なり、またそれによってアウトプットの形も異なってくるということは至極当然のことのように思えるが、厳密にこの両者の違いを理解している人は意外に少ないのではないか。自分がインプットをする立場の際に、それが経営学なのか、それとも経営論の範疇に属するものなのか、ということを考えることもまたインプットをする姿勢として求められるのではないかと感じた。



    最後に「読書の意義」について述べる。著者が述べているように、読書をすることによって時間、場所を超えてその本の著者と対話をすることができ、これこそが読書の醍醐味であると言える。これに加え、この著書全体を通して私が実感したことであるが、やはり「本を読むという行為」そのものが重要なのではなく、そこから得られた発見や観点というものを自分の中で咀嚼し、論理化すること(いわば抽象化すること)こそが重要ではないかと考えた。読書をただ本を読むという行為で終わらせるのではなく、その先にいかに自分の論理の束をつくるのか(もしくは、勝手につくられるものかもしれない)ということこそが重要であり、その重要性を学ぶためにもこの著書は非常に参考になるのではないかと考える。



    以上をまとめると、私は本書から「経営は属人的なものである」「経営学と経営論のアウトプットは異なる」「読書の重要性は得られた知識を自分の中で論理化すること」という3点を学んだ。経営学を学んでいる人々からすれば至極当然のことに聞こえるかもしれないが、改めて一流の研究者の著書を読むことによってこれらの点を深く理解することができたと感じている。

  • この本から何かを得るというのではない。
    ・魅力的な本の紹介
    ・それらの本からこんなことが得られるかもよ(俺は得たよ)
    という視点の紹介。著者が経営戦略論を専門としており、個人としての戦略、企業としての戦略など様々な視点で戦略の考え方を知ることができるのは良かった。

    ただ、著者の趣味がだいぶ反映されており、芸人論的な記述は私には刺さらなかった。また、最後のインタビューも私には不要だった。

    とはいえ、このあと読みたい本が見つかったという点では読んでよかったと言える。

  • ずばり面白い。知の塊。読書が本当にすきな楠先生のパワー全開。かつ論理を裏打ちしたいというご自身の性格が、戦略論を研究するに至った紆余曲折と悩み苦しみをむき出しに見せつける。であるがゆにえ、こんなに楽しい読書という脳内イマジネーションの旅なんだよ、という応援賛歌にも聞こえる。あたまのよさとは具体と抽象を右に左に往きつ戻りつ、時には縦横無尽に飛び回りながらも人に説明できる言葉を繰り出す力であることなのだ。

  • 永久保存版。著者の論理がビシビシ伝わってくる。
    自分ももっと教養をつけたい。

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プロフィール

一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授。1964年東京都生まれ。92年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授・同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。著書に、『ストーリーとしての競争戦略』『「好き嫌い」と経営』『「好き嫌い」と才能』(東洋経済新報社)、『好きなようにしてください』(ダイヤモンド社)、『経営センスの論理』(新潮新書)、『戦略読書日記』(プレジデント社)など。

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