【ハ゛ーケ゛ンフ゛ック】 ヘブライ暦 小島ゆかり歌集

  • 短歌新聞社
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  • Amazon.co.jp ・本
  • / ISBN・EAN: 4528189261976

感想・レビュー・書評

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  • アメリカ東海岸で暮らしていたときに読まれた歌を集めた歌集らしい。
    育った土地と文化と宗教が違うということを文字で表現するとき、(他の作家のものでは)もっと悲観的になったり、歩み寄りたいが歩み寄れない一線があるというのが(そのことを肯定的に受け入れるにしろ諦念として受け入れるにしろ)前面に出たりするエッセイをちらちらと読むことがある。

    小島ゆかりさんの短歌はそれらとは違って、もっと素朴な疑問や感想から書かれていて、生身の自分が感じたことをそのまま詠んでいる感じがする。

    そのまま書くって言ってもほんとうに「思ったまま」ではたぶん作品にならない。

    そのあたりのバランス感覚みたいなものが読んでいて心地いい一因なのかもしれないと思った。
    (5/22~6/7)



    ・青の画廊
    昔話のはじめに老いし男女あり子らが思わぬその一生はや
    青空に長身差し入れ少年は磁石を握る手を開きたり

    ・群青の雪
    「発音より声が変だよ」“Hello,Hello,“「声はふつうに出せばいいんだよ」

    ・ドッグウッドの森
    午後のふかきしづけさのなか歩み入るシナゴーグは巨き書物のごとし
    頭(づ)の上に黒満月を載せてゐるユダヤびとらと昼の食事す
    「会話のための英単語100」かなしみを語るにはうすずみの日本語

    ・U.S
    手のひらにふと傷みあり窓とほく十字架(クルス)は昼の空を刺しおり
    白秋忌しづかにめぐり晩秋のボストンをボアの婦人あゆめり
    モトメヨ、されどあたへられざるかなしみにみづみづと雪の窓を灯せり

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著者プロフィール

1956年、愛知県名古屋市生まれ。1978年、大学在学中に「コスモス」入会。現在、「コスモス」短歌会選者・編集委員。「NHK短歌」選者。産経新聞、中日新聞、熊本日日新聞、南日本新聞歌壇選者。毎日新聞書評委員。青山学院女子短期大学講師など。歌集に『水陽炎』『月光公園』『ヘブライ暦』(第7回河野愛子賞受賞)『希望』(第5回若山牧水賞受賞)『獅子座流星群』『エトピリカ』『憂春』(第40回迢空賞受賞)『純白光 短歌日記2012』(第6回小野市詩歌文学賞、第7回日本一行詩大賞受賞)『泥と青葉』ほか。

「2015年 『和歌で楽しむ源氏物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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