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感想・レビュー・書評
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高橋克彦『時宗』は北条時宗を描く歴史小説である。NHK大河ドラマ『北条時宗』原作である。全四巻であるが、第二巻までは父親の北条時頼の物語である。大河ドラマでも渡辺謙演じる時頼の存在感が大きかった。
物語は宮騒動から始まる。『鎌倉殿の13人』の後の時代である。御家人同士の権力闘争を繰り返している。『鎌倉殿の13人』の時代は北条と三浦が蜜月であったが、『時宗』では北条と安達が蜜月になっている。
敵は毒殺という卑怯な手段を使う者であった。
「毒を用いてなんの武者にござるか」(『時宗 巻の壱 乱星』日本放送出版協会、2000年、76頁)
「毒を用いるような者にこの国を預けるわけには参りませぬ」(同96頁)
これによって主人公側に感情移入できる。
大殿を支持する勢力には名越氏と三浦氏がいたが、互いに主導権争いをしていた。その結果、北条時頼は宮騒動、宝治合戦と各個撃破することができた。ドラマでは足利や名越が腹黒い陰謀家風に描かれたが、『時宗』では九条道家が黒幕である。時頼と時宗は博多を訪れる。博多は太宰府とは別の民間の街である。だから活気がある。民間感覚がある。
時宗には腹違いの兄の時輔がいた。時頼は時宗を嫡男と定め、時輔を下にする差別的扱いをする。時輔は二月騒動で謀反を起こしたが、このような差別的な扱いを受けたら、謀反を考えても無理はない。大河ドラマの時頼は「時輔を殺せ」と時宗に言って亡くなった。時頼が兄弟の殺戮を生みだしたようなものである。これに対して本書では時頼は時輔とも心を通わせている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「巻の弐」はいよいよ日蓮が登場する。
北条時頼は出家し最明寺と名乗っているが、北条家の得宗である。また執権の座を譲ってはいるが、権力の中枢にいる。
日蓮は立正安国論を北条時頼に送る。念仏を徹底的に批判してはいるが、それは同時に全ての宗派の否定であり、内乱と外敵が襲ってくることを予見したその書を、時頼は捨て置くしかない。
しかし、北条一門にとって日蓮の存在は面白くない。
暗殺の計画が上がるが、松葉ヶ谷の草案を襲われたとき、同時に日蓮を守ったのが時頼の息のかかった者として描かれる。
そしていよいよ時頼の死。37歳であった。