最強のシナリオプランニング―変化に対する感度と柔軟性を高める「未来の可視化」 [Kindle]
- 東洋経済新報社 (2013年10月10日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (297ページ)
感想・レビュー・書評
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不確実な環境下で中長期の戦略を考える方法論について知ることができた。シナリオプランニングに興味があったわけではないが、梅澤高明さんの本を読んでみたいと思い手に取った。先日、ちきりんさんと梅澤高明さんのVoicyでの対談をきいて、あまりにおもしろく、あらゆる難解な質問に明瞭な意見、仮説を述べられる梅澤さんという方は一体どんな仕事をしているのかと気になっていたのだ。
私の認識では、基本的に未来を予測することは不可能だ。しかし、本書で述べられているように、未来のある時点に視点を置き、現在からその時点に向けて起こる可能性のある環境変化の連鎖を俯瞰し、因果関係を体系づけて説明することを繰り返せば、ある程度の精度では予測ができると感じた。予測してそれに従うだけでなく、現実に起きたできごとをもとにシナリオを修正しながら前に進んでいくことで、予測が完璧でなくても適切な行動を取ることができると感じた。
戦略を考える仕事の進め方の一例、エッセンスを見ることができた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
不確実性に着目する点、シナリオをつくっても当たらないという見解に対して、シナリオを考えること自体に意味があることが理解できた
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環境の変化に対するシナリオを作る
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『#最強のシナリオプランニング』
ほぼ日書評 Day721
ちょうど10年前の本。
最近読んだものの中には、ポーターの競争優位戦略などは既に過去のもの…というような論調もあったが、逆に不透明さを増す今日においてこそ、こうした地道な「作業」をおこなう意義もあるのではないかと考える。
本書で解かれるシナリオの立て方をざっくりまとめれば、外部環境とそこから派生する機会・脅威を考慮した上で、あり得そうな展開を4つほど考える。これを重要なパラメータ2つの組み合わせでマトリクスを作り、どちらに振れる可能性が高そうかということで、ベースシナリオと、プランB以降を考えておくというものだ。
本書で扱われる事例については、10年を経てみて「答え合わせ」のできるものも多いわけだが、かならずしもベースシナリオ通りに進んだものばかりではないことに気付かされる。
その場合は、何がシナリオを狂わせた真の原因なのか…と問うてみることも、新たな本書の使い方なのではなかろうか。
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シナリオプランニングの基礎が学べます。ATカーニー社の書籍にありがちですが、ほとんどが事例なので、エッセンスだけを知りたい方は1章と2章だけでも学びが多いかと。
【メモ】
・現代の企業経営に求められているのは、「不確実な未来」を前提とした柔軟かつ動的な経営への進化。長期的視点に立って環境変化を読みつつ、変化への感度を上げること。そして、多様な未来の可能性に対応できる戦略オプションを準備し、意思決定のスピードと柔軟性を上げることが、生き残りの必要条件となった。そのためにシナリオ思考が役に立つ。
・シナリオ=経営環境に関する未来のストーリー
・シナリオプランニングの最大のメリット=戦略的惰性からの脱却を促す効果
└戦略的惰性=経営者、管理職や組織の構成員が共有する業界者自社に関するものの味方や考え方に囚われ、既存の成功の方程式に盲目的に頼り続ける状況
・シナリオプランニングのステップ
①環境分析
②重要な因子の特定
③因子の評価、シナリオの定義
④戦略検討
・PEST分析
①政治
②経済
③社会
④技術
・因子の評価軸
①因子実現のインパクト
②因子実現の不確実性
・インパクトの定義
└これまでにない大規模な市場が誕生
└他業態の大市場を取り込む
└市場を支配する新たなルールが誕生
└既存ビジネスの前提条件が否定される
└需要・収益が業界として消失
・戦略の3類型
①適応型戦略:業界環境の現状および将来の変化を既定条件と捉え、認識されている機会・脅威に対する適応的行動をとる
②形成型戦略:業界を自社に有利な構造に変化させる目的で、大胆な戦略的行動をとる
③留保型戦略:不確実性が高い状況で将来の戦略オプションを確保するために必要最低限の投資を行う -
シナリオプランニングの基本を説明するとともに、実例により様々なバリエーションがある事が理解できた。実際にプランニングをしてみると、基本の型通りではいかない事が多いが、このケーススタディのバラエティさにより、実際にどのように適応するのかが見えてくるようになっている。
しかし、一番重要な事は、シナリオプランニングで導かれるシナリオや戦略より、この思考等を通じて未来への議論を常に行っていく組織づくりだと感じた。 -
各業界ごとのケースは非常にコンパクトかつ説得力があるようにまとまっていて読みやすい
一方で、いざ自分でやってみると結構難しいことが分かる。思うに、今の事象ベースに積み上げ式で未来を絵が高校とすると、分岐が多すぎてまとまらないところがある。
要は、ある程度、意志≒作りたい未来の仮説を持たないと中々、環境因子も分岐条件も絞り込めないのではないかと。
また、当然ながら、取り扱うところがミクロになればなるほど、読みづらい。マクロな人口動態なんかはほぼ読めるが、ミクロな事象はなかなか読めない。
おそらく、本書を書く際にも、色々な因子を入れたり外したり、複数のシナリオの取捨選択をしたりと色々な試行錯誤が合ったのだと推察する。