座右のゲーテ~壁に突き当たったとき開く本~ (光文社新書) [Kindle]

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  • 著者は「まえがき」で、ゲーテのことを「知りうる限り、人類最高レベルの資質を持った人間」と最大に称賛している。そんなゲーテの言葉を座右におき、人生や活動に生かされてきたエピソードなどを紹介している。

    本書の構成は、次の5つの章からなっている。
    1.集中する
    2.吸収する
    3.出会う
    4.持続させる
    5.燃焼する

    ゲーテは、「集中」の達人、「吸収」の達人、「出会い」の達人、「持続」の達人、そして「燃焼」の達人であった。その達人ぶりを紹介している。

    たしかにゲーテの活動の幅は広く深い。そこにはゲーテならではの集中力のようなものがあるのだろうか。本書の中で語られているゲーテは非常に合理的で実践的のように感じられた。

    一つ特徴的に感じたのは、ことを成し遂げるまで、人にはそのことを語らないということだ。成し遂げないうちから「こんなことをやっている」と触れ回るのはよくあることだが、ゲーテは人に語ることなくして、物凄い結果を出すわけだ。それはゲーテが謙虚であるということではなくて、そうして胸に秘めておくことが、エネルギーの発散を防ぎ、取り組みへの集中度が固まるテクニックだと言っていた。

    集中の次は吸収だ。これまたゲーテの合理的な生き方が示されていた。いきなり最高のものから手を付けよという。その最高のものの一つに「古典」も挙げている。

    また徹底して偉大な人や物から学べと言っていた。独創的なんてないんだ。みんな偉大な人物は、偉大な師から学んでいるんだと。そして、食わず嫌いをするなとも。「興味ない」という言葉は禁句だそうである。

    そのための「出会い」の重要性を次で述べている。この章の中では、人はみな自分の性にあった人や物との出会いを求めるものだが、それだけでなく自分とセンスの異なる人との出会いを大事にせよという。

    だれしも人生において性の合わない人との出会いはあるものだが、そういうことがまた自分の心を刺激し、発展させるのだと言っている。

    人との出会いだけでなく本との出会いも同様だと著者はいう。著者は、読書においても「守り」に入るなという。

    ゲーテは「経験のためには金が要る」と言っていた。金が尽きると持続はできないということか?

    そうではなく経験のために投資をせよということだ。ということははやり投資を持続できる甲斐性が必要になってくるなとは思った。時間を作ったり、お金を稼いだり。

    もう一つ、持続の敵である「邪魔」ということについても述べていた。しかし、「邪魔」にも効用があるという。

    もしスムーズに仕事が進まず障害があると、それが思いもよらない別の形に仕上がってしまうことがある。そのことをゲーテは「デモーニッシュ」と表現していた。悪魔的とは面白い(笑)。

    そして「燃焼」の章。ゲーテは一言でいうと「熱しやすく冷めやすい人」の印象だ。その熱しやすいほうの言葉。

    ”やたらに定義したところで何になるものか!状況に対する生きいきした感情と、それを表現する能力こそ、まさに詩人を作るのだよ。”

    そして冷めやすいほうの言葉。
    ”概して私は、作り上げてしまった作品には、なかり冷淡な方だった。いつまでもそれに執着しないで、すぐに新しい作品のプランを練った。”

    冷めやすいというより、どちらかというと発展的な思考のようである。この言葉の発展系に次の言葉が紹介されていた。

    ”年をとったら、若かったときより多くのことをしなければならぬ。人間が最後には自分自身の抄録の編纂者になってしまうとは悲しいことだ。”

    年をとっても自分自身を更新し続けよという。

  • 多忙な毎日の中で、心に恵みをもたらしてくれるのは上質な読書である。
    座右の本を脇に置く、それはつまり精神に故郷をもつということだ、という。

    この本は『ゲーテとの対話』の中からゲーテの言葉を抜き出し、「発想の技法」という観点からまとめられたもの。人生のヒントがほしくなったら何度も開いたらいいと思う本だった。

    構成は「まえがき」「Ⅰ集中する」「Ⅱ呼吸する」「Ⅲ出合う」「Ⅳ持続させる」「Ⅴ燃焼する」「あとがき」

    自分の知らないことは山ほどあるし、自分が常識だと思っていた事実に対する反論やそれに関する書籍も存在するにも関わらず、そんなものは普段眼中にないし想像することもない。本屋さんの本棚に並ぶ本を眺めているときに、そういうのに似た気持ちになって焦ってしまうことがあった。私って考えが偏っているんだろうか?物事の一側面しか見ようとしていないんじゃないか?
    でもゲーテや齋藤孝さんは、世に言う常識人の部類に入ると思った。常識というより通説というか、有名な論というのはそれなりに裏付けがされているものなのかもしれない。何もかも疑うより、疑うべきは何かということにアンテナを張ることが大事なのだろうか。なんてことを考えていた。

  • オーディオブックにて

  •  エッカーマン著の「ゲーテとの対話」は岩波書店から上・中・下と出版されているが、最初からそちらを読みこなすのは退屈さもあり難しい。本書は"上達論"という視点で、「ゲーテとの対話」の中のゲーテ的価値観のエッセンスを抽出しており、古典の価値をダイレクトに感じられよう。
     目次を眺めて、刺さるテーマがあればその部分から読み進めると良い。著者である齋藤氏は各テーマの最初にゲーテの言葉(主な引用元は「ゲーテとの対話」)を提示し、そこへ現代人の理解が深まるよう齋藤氏の解説(若干、現代社会の無理解に対する著者の鬱屈した不満も入り混じる)を添えている。個人的に刺さるテーマを一つだけ選ぶなら、"独創性などない"(新書版:p56~p63)だ。この数ページのためだけに買う価値は(私に関しては)あったと今も思う。独創性・天才・才能といった思考停止を誘発する空虚な言葉に頼るのは止めて、しっかりと過去の遺産を受け継いだと自認できる"系譜意識"を育てよう…というのがゲーテ及び斎藤氏の主張である。個人的には独創性などという大袈裟な表現は、その分野における知性のなさ、想像力のなさを露呈しているに過ぎないと思うので、積極的に使う表現でもないな…と考えている。
     余談だが、齋藤氏がメディアに出始めた初期の書籍に該当し、齋藤氏の価値観の基盤がここにあると見受けられる。

  • アマゾンプライム。

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著者プロフィール

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。教育学、身体論、コミュニケーション論を専門とする。2001年刊行の『声に出して読みたい日本語』が、シリーズ260万部のベストセラーとなる。その他著書に、『質問力』『段取り力』『コメント力』『齋藤孝の速読塾』『齋藤孝の企画塾』『やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法』『恥をかかないスピーチ力』『思考を鍛えるメモ力』『超速読力』『頭がよくなる! 要約力』『新聞力』『こども「学問のすすめ」』『定義』等がある。

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