友だち幻想 ――人と人の〈つながり〉を考える (ちくまプリマー新書) [Kindle]
- 筑摩書房 (2008年3月5日発売)


- 本 ・電子書籍 (104ページ)
感想・レビュー・書評
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「みんな仲良く」という重圧に苦しんでいる人へ。
人付き合いのルールを知り少しの作法を身に付けるだけで、複雑な人間関係の中で必要以上に傷つかず、しなやかに生きられるようになる処方箋のような本!
友だちは何よりも大切。でも、なぜこんなに友だちとの関係で傷つき、悩むのだろう。人と人との距離感覚をみがいて、上手に“つながり"を築けるようになろう。
「みんな仲良く」という理念、「私を丸ごと受け入れてくれる人がきっといる」という幻想の中に真の親しさは得られない!
……
中、高校生が読むと良いと思う本だけど。
大人になった私でも、確かにそうだよねと思わされる。
仲良くする、友達になるとはどういうことだろう。どうなることが友達なのかな?
今になって自分も幻想を描いていたことを知る。
夫婦関係もまさにそうだ。
まず幻想を描くことをやめないと、ぶつかるだけだ。それでもなかなか、諦められないのが人間だけどね。そんなことを思いました。
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本書は現代社会における適切な人間関係と「親しさ」のあり方を改めて提起するものです。
筆者はニーチェの言葉、「愛せない場合は通り過ぎよ」を引用しつつ、「親しさ」「敵対」の二者択一ではなく「態度留保」というもう一つの道を繰り返し強調します。それは時によっては濃密な関係から、あえて距離を置くことで「気の合わない人間とも併存する」ことの重要性を説くもので、「同調圧力」という言葉に代表されるような息苦しい関係性を予防しつつ不要な争いを避けるための工夫でもあります。そして少しでも違うと感じるときに関係を保つ努力を放棄するのではなく、「自分というものをすべて受け入れてくれる誰か」は幻想であるという醒めた意識を持ちつつ、全て受け入れてくれるわけではなくても、自分のことを理解しようとしてくれる人と出会うことを、人間関係における現実的な希望として提示します。
漫画的な挿絵が随所に添えられていることからも、主に中高生を対象とした形式となっていますが、集団におけるルールのあるべき姿や、「生徒の記憶に残る先生を目指す必要はない」といった教師への過度な精神的関与に釘を刺す助言なども含んでいます。大人になるために必要な人間関係についての考え方の見取り図を標榜する本書は、当然同時に大人はどのようにあるべきかも示唆しており、社会人を含めたそれ以上の年代も意識した、装いよりずっと射程の広い著書といえます。 -
子供向けの本なのでしょうが、大人が読んでもめちゃくちゃ沁みる。反省する、学ぶ、気持ちが明るくなるとてもいい本。
コミュニケーションに悩む私にはとても良かった。 -
全てを共感しあう人間関係など築けない。お互いを尊重し、分かり合えないコトを互いに理解するのが大人
●感想
友達なんて要らない、と主張する本かと思ったら、違いました。一人でも生きていくこと自体はできるこの社会において、どう人と付き合っていくのかを真面目に論考している本です。人間関係は、喜びの源泉であり、かつ悩みの源泉でもあります。人とは適切な距離を保ちつつ、いいバランスで付き合っていきたいものです。
■本書を読みながら気になった記述・コト
●>>「一人でも生きていくことができてしまう社会だから、人とつながることが昔より複雑で難しいのは当たり前だし、人とのつながりが本当の意味で大切になっている」ということが言いたい
●>>「幸福」の本質的なモメント
①自己充実
②他者との「交流」
(イ)交流そのものの歓び
(ロ)他者からの「承認」
●私たちにとって「他者」という存在がややこしいのは、「脅威の源泉」であると同時に、「生のあじわい(るいはエロス)の源泉」にもなるという二重性
●>>人びとは一方で個性や自由を獲得し、人それぞれの能力や欲望の可能性を追求することが許されているはずなのに、もう片方でみんな同じでなければなrないという同調圧力の下に置かれているというあり方に引き裂かれてしまっているのです
●>>「子どもの世界はおとなの世界とは違う。子どものころはどんな子どうしでも仲良く一緒になれるはず」というのは、子どもの世界にあまりにも透明で無垢なイメージを持ちすぎなのではないでしょうか。
●>>「やりすごす」という発想――無理に関わるから傷つけあう
「もし気が合わないんだったら、ちょっと距離を置いて、ぶつからないようにしなさい」と言った方がいい場合もあると思います。
これは、「冷たい」のではありません。無理に関わるからこそ、お互いに傷つけ合うのです。
●>>「ルール関係」と「フィーリング共有関係」を区別して考え、使い分けができるようになること。これが、「大人になる」ということにとっての、一つの大切な課題だと思います。
●>>ルールというものは、できるだけ多くの人にできるだけ多くの自由を保障するために必要なものなのです。なるべく多くの人が、最大限の自由を得られる目的で設定されるのがルールです。ルールというのは、「これさえ守ればあとは自由」というように、「自由」とワンセットになっているのです。
●>>要は、「親しさか、敵対か」の二者択一ではなく、態度保留という真ん中の道を選ぶということです。
●>>先生というのは基本的には生徒の記憶に残ることを求めすぎると、過剰な精神的関与や自分の信念の押しつけに走ってしまう恐れがあるからです。だから、生徒の心に残るような先生になろうとすることは無理にする必要はなく、それはあくまでラッキーな結果であるくらいに考えるべきで、ふつうは生徒たちに通り過ぎれられる存在であるくらいでちょうどいいと思うのです。
→、これ、会社における先輩、後輩の関係にもいえるとおもいます
●>>一生懸命普通にしようとしているんだけど、そこからどうしても力量があふれ出してしまうから個性的な人間なのです。だから、たとえば「ノーベル賞を取れる人材を育てる」といったことを学校が目標し標榜することは、ちょっと違うんじゃないかなという気がします。
●>>価値観が百パーセント共有できるのだとしたら、それはもはや他者ではありません。自分そのものか、自分の<分身>か何かです。 -
1日もあれば読める、人との付き合い方のヒント集。
「みんな一緒」「話し合えばわかる」「みんな友だち」そんなひと昔前なら重要視されてきたムラ社会的発想が、ひとりでも生きていける現代には通用しなくなっているのではないか?それが逆に人付き合いを苦しいものにしているのではないか?という疑問からスタートする。
自分以外はみんな他者である。見知らぬ通行人も近所の人も会社の同僚も友人も恋人も伴侶も兄弟も親でさえも。100%分かり合えることなんて不可能である。不和も不一致も理解できない部分も衝突する部分も必ずある。ならばその違いを理解した上で、お互いに配慮したルールを作り適度な距離感を見つけることが大事なのではないか、という考え方に共感する。
どこにでも必ずいる「自分とは相容れない人」を排除するのではなく上手く付き合っていく方法など、具体的とまではいわないけど、考えるきっかけとしてはちょうど良い内容になってると思う。 -
人と人の関係において基本的で大事なことを、コンパクトに言語化してくれている印象。
要は、自分と他者は異なる存在であるということを、冷静に理解して、人間関係のあり方をメタ認知するということだと思う。そうだよなーと思いながら読んだ。良い本。
おそらく想定読者は10代後半から20代前半の若者、あるいはそういった若者と関わっている大人、という感じかな。 -
自分と似たようなタイプの仲間だけとしか、付き合わない人生なんて、つまらない。
著者は、そのフィーリングの合う属性以外を、“異質”として、『異質なものをさまざまに取り込む力がないと、つながりを保てなかったり、異質な他社との交流といううま味も、味わえなかったりします。(P124)』と、他者を少しずつ意識しつつ、親しみを味わっていくことのトレーニングを心掛けることが大切だと指南している。
他にも、読書は対話能力を鍛えるとの事で、例えば、千年以上前の人間、しかも歴史を代表する知性や感性を持った大人物とだって対話できるものだと、著者は実感したそうです。
人との関わり方には、それぞれに考え方があるでしょうけど随分と参考になりました。 -
自分の素直な意見を主張することが苦手だと感じている人におすすめ。ルールはみんなを束縛するものではなくて、「自由」にするためにある。この言葉が印象に残っている。教員はもちろんのこと、子供への接し方も大きく変わる本だと思う。
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人間関係をもう一度考え直してみようがこの本で書かれている内容です。
主に中高生向けに書かれていますが、大人にも参考になる部分があると思います。
さらに貨幣の話しをしながら人間とのつながり述べているところ(前によんだ後ろめたさの人類学と重なる部分もあります)や学校がおしつける理想人間関係に疑問やルールの重要性など非常に素晴らしい内容だと思います。
正直、人間関係の在り方や学校の在り方に疑問なげかけるなど、中学入試でよくでるのがわかります。
著者プロフィール
菅野仁の作品





