友だち幻想 ――人と人の〈つながり〉を考える (ちくまプリマー新書) [Kindle]
- 筑摩書房 (2008年3月5日発売)


- Amazon.co.jp ・電子書籍 (99ページ)
感想・レビュー・書評
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本書は現代社会における適切な人間関係と「親しさ」のあり方を改めて提起するものです。
筆者はニーチェの言葉、「愛せない場合は通り過ぎよ」を引用しつつ、「親しさ」「敵対」の二者択一ではなく「態度留保」というもう一つの道を繰り返し強調します。それは時によっては濃密な関係から、あえて距離を置くことで「気の合わない人間とも併存する」ことの重要性を説くもので、「同調圧力」という言葉に代表されるような息苦しい関係性を予防しつつ不要な争いを避けるための工夫でもあります。そして少しでも違うと感じるときに関係を保つ努力を放棄するのではなく、「自分というものをすべて受け入れてくれる誰か」は幻想であるという醒めた意識を持ちつつ、全て受け入れてくれるわけではなくても、自分のことを理解しようとしてくれる人と出会うことを、人間関係における現実的な希望として提示します。
漫画的な挿絵が随所に添えられていることからも、主に中高生を対象とした形式となっていますが、集団におけるルールのあるべき姿や、「生徒の記憶に残る先生を目指す必要はない」といった教師への過度な精神的関与に釘を刺す助言なども含んでいます。大人になるために必要な人間関係についての考え方の見取り図を標榜する本書は、当然同時に大人はどのようにあるべきかも示唆しており、社会人を含めたそれ以上の年代も意識した、装いよりずっと射程の広い著書といえます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
全てを共感しあう人間関係など築けない。お互いを尊重し、分かり合えないコトを互いに理解するのが大人
●感想
友達なんて要らない、と主張する本かと思ったら、違いました。一人でも生きていくこと自体はできるこの社会において、どう人と付き合っていくのかを真面目に論考している本です。人間関係は、喜びの源泉であり、かつ悩みの源泉でもあります。人とは適切な距離を保ちつつ、いいバランスで付き合っていきたいものです。
■本書を読みながら気になった記述・コト
●>>「一人でも生きていくことができてしまう社会だから、人とつながることが昔より複雑で難しいのは当たり前だし、人とのつながりが本当の意味で大切になっている」ということが言いたい
●>>「幸福」の本質的なモメント
①自己充実
②他者との「交流」
(イ)交流そのものの歓び
(ロ)他者からの「承認」
●私たちにとって「他者」という存在がややこしいのは、「脅威の源泉」であると同時に、「生のあじわい(るいはエロス)の源泉」にもなるという二重性
●>>人びとは一方で個性や自由を獲得し、人それぞれの能力や欲望の可能性を追求することが許されているはずなのに、もう片方でみんな同じでなければなrないという同調圧力の下に置かれているというあり方に引き裂かれてしまっているのです
●>>「子どもの世界はおとなの世界とは違う。子どものころはどんな子どうしでも仲良く一緒になれるはず」というのは、子どもの世界にあまりにも透明で無垢なイメージを持ちすぎなのではないでしょうか。
●>>「やりすごす」という発想――無理に関わるから傷つけあう
「もし気が合わないんだったら、ちょっと距離を置いて、ぶつからないようにしなさい」と言った方がいい場合もあると思います。
これは、「冷たい」のではありません。無理に関わるからこそ、お互いに傷つけ合うのです。
●>>「ルール関係」と「フィーリング共有関係」を区別して考え、使い分けができるようになること。これが、「大人になる」ということにとっての、一つの大切な課題だと思います。
●>>ルールというものは、できるだけ多くの人にできるだけ多くの自由を保障するために必要なものなのです。なるべく多くの人が、最大限の自由を得られる目的で設定されるのがルールです。ルールというのは、「これさえ守ればあとは自由」というように、「自由」とワンセットになっているのです。
●>>要は、「親しさか、敵対か」の二者択一ではなく、態度保留という真ん中の道を選ぶということです。
●>>先生というのは基本的には生徒の記憶に残ることを求めすぎると、過剰な精神的関与や自分の信念の押しつけに走ってしまう恐れがあるからです。だから、生徒の心に残るような先生になろうとすることは無理にする必要はなく、それはあくまでラッキーな結果であるくらいに考えるべきで、ふつうは生徒たちに通り過ぎれられる存在であるくらいでちょうどいいと思うのです。
→、これ、会社における先輩、後輩の関係にもいえるとおもいます
●>>一生懸命普通にしようとしているんだけど、そこからどうしても力量があふれ出してしまうから個性的な人間なのです。だから、たとえば「ノーベル賞を取れる人材を育てる」といったことを学校が目標し標榜することは、ちょっと違うんじゃないかなという気がします。
●>>価値観が百パーセント共有できるのだとしたら、それはもはや他者ではありません。自分そのものか、自分の<分身>か何かです。 -
1日もあれば読める、人との付き合い方のヒント集。
「みんな一緒」「話し合えばわかる」「みんな友だち」そんなひと昔前なら重要視されてきたムラ社会的発想が、ひとりでも生きていける現代には通用しなくなっているのではないか?それが逆に人付き合いを苦しいものにしているのではないか?という疑問からスタートする。
自分以外はみんな他者である。見知らぬ通行人も近所の人も会社の同僚も友人も恋人も伴侶も兄弟も親でさえも。100%分かり合えることなんて不可能である。不和も不一致も理解できない部分も衝突する部分も必ずある。ならばその違いを理解した上で、お互いに配慮したルールを作り適度な距離感を見つけることが大事なのではないか、という考え方に共感する。
どこにでも必ずいる「自分とは相容れない人」を排除するのではなく上手く付き合っていく方法など、具体的とまではいわないけど、考えるきっかけとしてはちょうど良い内容になってると思う。 -
自分の素直な意見を主張することが苦手だと感じている人におすすめ。ルールはみんなを束縛するものではなくて、「自由」にするためにある。この言葉が印象に残っている。教員はもちろんのこと、子供への接し方も大きく変わる本だと思う。
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「ともだち100人できるかな」童謡『一年生になったら』の歌詞だ。100人で、富士山の上で、おにぎりを食べたい、と続く。私が入学した小学校は、1学年の児童数が90名程度であった。100もの友人関係を築くには、同級生だけでは足りなかったろう。ましてやその全員と富士登山を果たすだなんて。
現実社会には、「一年生になったら」の友だち意識が根付いている。学校でも会社でも「みんな仲良く」「ひとつになって」と、ことさらに同調を求められてはいないだろうか。
無理なことを当たり前のことのように言えば、それは「幻想」に他ならない。著者は本書を「友だち幻想」と題した。人と人とのつながりの常識に無理が生じていると指摘しているのだ。社会にでれば、どうやったって価値観の合わない人はいる。同調することなどできなくて当然なのだと。その上で、わかり合えない他者とどう過ごして行くべきかを問う。
「ほらね そっくりなサルが僕を指さしてる」辻仁成さんが作詞・作曲した『ZOO』の歌詞だ。街で出会う人々のことを、人間以外の動物に例えている。ニワトリ、ウサギ、ペンギン、ナマケモノ、ライオンにハイエナ。それぞれ異質で、触れ合いたいと強く思うものもいれば、興味はあるが近づきがたいものもいる。人と人とのつながりのあり方も、同じなのだろう。異質性を認めながら、価値観の違いに親しみを感じられる関係が理想なのだ。そう感じた一冊であった。 -
少し軽い内容の本。
若い人向けのように思うのと、やはり社会学的なアプローチのためそれほど突っ込んだ内容にはなっていない。
いじめや同調圧力で苦しんでいる人がさっと読めば救われる内容だと思う。 -
若者も対象にしていることもあって、簡潔でわかりやすい本だった。「最近の若者はこうだと思う」というある種主観的(検証して示すことができない問題かもしれないし簡単のための省略かもしれないが)考えが多いところは少し気になったが、著者のやさしい人柄というか、人間関係の在り方について悩んでいる人の力になりたいという意思を感じ取れて素敵だと思ったし、内容も自分の実生活に活用できるとても実践的なものでありがたかった。
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記録。
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友だち幻想というタイトルがなかなかよかったと思う
そうだね人間は原理的に理解し合えない通じ合えない。
私が長い間「友だち幻想」、「運命の人幻想」に浸っていた…アニメや漫画の中の素敵な人間関係が私の現実世界にあるはずがない。
人間は理解し合えないってことについて私はどうも言えない絶望を感じるが、そんなこと当然じゃんって全く気にしない人もいる…どうしてだろう
私だってそんなに人に理解されたいわけでもないが…
理解し合えないから、努力して理解しようとしても誤解が免れない。複雑なこと、大事なことであればあるほど理解できない…真実をどうせ手に入れない…
どこが希望の出発点だろう(´。`)
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