永遠平和のために/啓蒙とは何か 他3編 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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  • 理性を探求する哲学者カントによる、啓蒙や世界市民構想・永遠平和についての論考が収録された一冊。
    永遠平和には啓蒙思想と道徳心の向上が必要な反面、それは人間と社会の終焉をも招く諸刃の剣であることが述べられています。
    合理性を追求する姿勢の啓蒙と倫理観を追求する姿勢の道徳が、どうして最終的に停滞と終焉を齎すのか。
    人間は感性と理性の間に位置し国家は統一されない雑多な状態であることが望ましい、カントは偏らないことが理想であると考えているようです。
    疑問が残るでしょうが、絶対的な平和は終焉を招き戦争は文明を存続させる、ということなのです。
    戦争は最終手段の外交政策だとわかっていますが、戦争が絶対的に起きない世界が腐るというのも何となく想像できるのです。
    それは自由な発言も行動も許されないディストピアと言えるのではないでしょうか。

  • ■概要
    下記 5つの論文を収めている.
    1. 啓蒙とは何か
    2. 世界市民という視点からみた普遍史の理念
    3. 人類の歴史の憶測的な起源
    4. 万物の終焉
    5. 永遠平和のために

    カントの哲学の到達点から歴史や人間の社会を読み解いた論文集、という印象。
    書きっぷりから当時の一般読者向けにをターゲットに書いていたと推測されるが、現代日本人が理解するためには周回が必要そう......

    ■気づいたことと感想
    読んでいる途中で気づいたこと
    * 「自然」という語が2の論文以降頻繁に出てくるが、これは日本語の辞書的な意味に加えて自然法則や人間社会の法則も指しているようだ(解説でも自然の概念を節を設けて説明している)。
    さらに、これらの法則はただの法則ではなく、神のような存在の優れた采配だと考えているように読める。
    ※本論中には神とは言っていないがそれっぽい存在を想定していると読める
    * 自然には目的があって、自然が人類に与えた理性にも目的のような完全態がある。理性の完全態が人間の社会で実現されていく過程が歴史であるようだ。
    自然にはその目的がある、という世界観。
    * 理性の性質や性能が共有されている前提で本論に説明がない。多分本論だけでカバーできる内容ではなく、批判書とかを読まないと多分わからない

    ちんぷんかんぷんのまま読み進めて、途中で上記に気づいた。
    ※命題がいくつか並べられるけれど、それらが何に関する命題なのかもさっぱりだった。

    上を整理したうえで本論と解説を読み直したいところ

  • 初カント。新訳古典文庫だからか、とても読みやすかった。けど、いつもの様に理解したというまでには到底至っておらず。まあ、一度で理解しようとする方がおこがましいだろうけど。

  • 「啓蒙とは何か」「永遠平和のために」読

  • 読了できた初めてのカント。短い論文なので主張がぶれずに頭に入ってきて明快なまま終わるので大変よみやすい。冒頭の「啓蒙とは何か」が一番共感するし、人口に膾炙する内容となっている。高校の教科書に載せたいような内容と訳文だ。

  • 平和は創設されなければならない。カントが考えたのは、諸国が公法にしたがうことなく、自国の自由を維持できるような連合(共和国)である。カントは、永遠平和のためには共和国である必要があるとした。共和国において国家の所有者は国民である。したがって、戦争をすれば自分たちが負担を背負うことになり、これがブレーキとなる。

  • 【オンライン読書会開催!】
    読書会コミュニティ「猫町倶楽部」の課題作品です

    ■2022年7月10日(日)17:30 〜 19:15
    https://nekomachi-club.com/events/e97e272bd773

    ■2022年7月22日(金)20:30 〜 22:15
    https://nekomachi-club.com/events/467ed2320ed8

  • 次年度のゼミのテクスト。alexaで1週目。いくつかおもしろい箇所があった。

  • カントの考える自由と理性をきれいに平和にむけて転換させていると思います。

    ・「この平和連盟は、国家権力のような権力を獲得しようとするものではなく、ある国家と、その国家と連盟したそのほかの国家の自由を維持し、保証することを目指すものである。」

    ・「国家権力のもとにあるすべての力と手段のうちでもっとも信頼できるのは財力であり、諸国は道徳性という動機によらずとも、この力によって高貴な平和を促進せざるをえなくなるのである。」

    自然状態において戦争をする人類において共和政がもっとも「妥当な」国家体制であり、さらに権力を目的としない平和連盟が「すべての戦争を永遠に終わらせようとする。」、こういった考えを商業というところからも持ってくるカント、すご。宗教概念にキリスト教的な思想があるのも興味深いです。そして何より全体の3割?ほどが訳者の解説というのが助かります。

  • 【要約】
    「なぜ人は争うのか?」との問いに対し、カント曰く...

    人類にとって、争うことは自然なことであり、他者への攻撃性は人類の本性の一部でもあるからだ。それ故に、平和は創り出す必要がある。というよりも、人類は「自然の意図」によって、理性による平和な共同体を創るよう(つまりは進歩するよう)に方向づけされている

    自然状態では、人は争う(可能性を孕む)自己の生命・身体・財産が危険にさらされる。それを防ぐために、人はその意思により、国家を作り、法によって対立を抑えるようになる。国家間の場合においても、諸国家の連合という形で法による対立抑止を施行する。その際「共和制」が国内・国際両方において、平和な社会が築かれやすい。ここでいう共和制とは、立法権と行政権とが分離されており、個人の自由(同意した法にのみ従い、それ以外は自由)、平等(方は平等かつ例外なく適用)、法への従属、という特徴を持つ。共和制では、戦争のリスク・ネガティブリターンを合理的に判断し、争いを回避する

    ※ 世界市民法と「歓待の権利」に対する理解は曖昧。商業は平和に資する。

    理性・道徳に関する直線的な「進歩」の概念にはまだちょっと違和感がある

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