夜間飛行 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

制作 : 二木 麻里 
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  • 静謐でしっとりとした美しい文体と、交錯する時間軸による巧みな場面展開が強く印象に残る作品。

    たった10時間程の夜の南米大陸を舞台に、夜間の郵便空輸事業に携わった人々のそれぞれの姿を描いています。

    本社があり、欧州への積み替え地点でもあるブエノスアイレスを目指して、パタゴニア、チリ、パラグアイという南米に散らばるそれぞれの地域から、夕暮れの時間になって夜の世界へと飛び立つ、三人の若いパイロットたち。

    パイロットたちの安全と、危険を伴う事業の成功のため、常に厳格な規律と懲罰をもって社員たちを律する老社長。

    社長の厳しい命令を忠実に遂行するしかない、少々愚鈍な監督官。

    南米各地からの便が到着すれば、すぐさま欧州に向かう便を操縦することになっているパイロットと、危険に踏み出す夫を見送るしかない妻。

    そして、悪天候ゆえに行方不明になったパイロットの夫を絶望の淵でただただ待つしかない、新婚六週間の若妻。

    同じ時間に夜空を飛んだパイロットたちの運命は残酷にも分かれます。
    最初から最後まで平穏な飛行を終えて到着する者。
    悪天候に巻き込まれ、恐怖に突き落とされながらも、運良く生還を果たす者。
    悪天候に巻き込まれたまま、行方が分からなくなる者。

    登場人物それぞれの内省と秘めた孤独、危機を迎えた際の悲壮な姿が、切り替わり続け、時間軸が交錯する場面展開の中で、夜の闇の静かな描写と絡まりながら描かれていきます。

    後半の時間軸が少々入り組んだ複雑な構成は、時々頭を混乱させましたが、それでも、始終一貫した文体の美しさと、心の機微を短くも的確に捉えた哲学的な描写、速い展開が素晴らしく、一気読みしてしまいました。


    「星の王子さま」(1943年)で知られる、フランスのパイロットにして作家のサン=テグジュペリが、1931年に31歳で発表した作品です。
    (余談ですが、切り替わり続けるのに無駄なく流麗につなぎ合わされた場面展開に、同じフランス出身の映画監督クロード・ルルーシュの作品が思い浮かびました。)

    このような作品を発表したサン=テグジュペリ自身が、1944年には偵察飛行のために飛んだ地中海沖で行方不明となって帰らぬ人となるのだから、運命とは皮肉というか、当時のパイロットという仕事がどれほど危険と隣り合わせのものだったのかがよくわかるというもの。
    そういう意味では、フィクションでありながら、ルポタージュ的な要素もありますね。

    読後、余韻に浸りながらも色々なことを考えた作品でした。

  • 巻頭にラテンアメリカ南部の地図を掲載。これを参照できるので、おおまかな地理感を得られる。パタゴニア地方、ブエノスアイレス、アンデス山脈…、なんとも男子の心をくすぐるロマンあふれる地名の数々である。
    本作の主要なメッセージは、偉大なる事業を継続することへの責任と情熱、と受け止めた。読了後、現場責任者である社長のリヴィエールの、不屈の意志が強く印象に残る。
    だが、パイロットは「遭難」「殉職」。これについて私は納得出来ない、共感出来ぬ思いのまま読了した。そもそもあまりにも無茶な飛行をさせている。当時の長距離飛行は、命懸けなのだ。現代の、雲海上の気象が安定した高空をゆく巡航と異なり、荒天雷雲の中をもみくちゃにされながら飛ぶ。しかも、機体搭載のレーダーなど無い。つまり、現在地も不明。とりわけ夜間飛行なので、地上の地形を視認することも困難。気象レーダーも無いので、雨雲や嵐の接近もわからず、地上の無線基地局などから口伝てで聞いて把握する。
    こんな条件下では、起こるべくして起こった遭難。必然の結果である。事業者の責任で発生した労災だよ、と感じた。恐れずに飛べ、という精神論の愚かさを感じた。 という次第で、知人が賞賛するような胸を打つような感慨はなかった。

    ただ、なぜか、リヴィエ-ル社長の言葉を初め、含蓄のある言葉が多くちらほら。例えば…。
    「ひとは一度なにかを選び取ってしまいさえすれば、自己の人生の偶然性に満ち足りて、それを愛すことができる。偶然は愛のようにひとを束縛する。」

    などなど…。個人的には、「星の王子様」より本書において、心に響く言葉に多く出会えた。

  • やはり名作だ、読むべきである。
    この本の良いところは本のは厚み半分を割いた解説にあると思う。作品の詩的要素を紐解き、時代背景も整理してくれる。作品の解釈を助けてくる解説に感謝。

  • 詩のような文学だな。

  • 無駄が無い澄み渡った文で、冷酷な運命を描いていながら、それぞれが内に秘める感情が真っ直ぐに伝わってくる。
    幸せとは何か?大きな責務のために犠牲を払う意味があるのか? 傷付きやすい心の中でそんな問いを繰り返しながらも、自らの信念に向かって飛行してゆく。とても美しかった。

  • 今の私には、この本を読むのはまだ難しいと思われた…様式美とかよくわからず、読みづらいなと感じた…
    解説は大変わかりやすく、このお話の素晴らしさがようやくわかったような。

  • これもいつか読み返したい。

  • どこまでも美しい文章で、読んでいて幸せだった。ハッと気づかされることもたくさんあったのでまた読み返したい。

  • サン=テグジュペリの飛行士シリーズ。当時は今以上に危険であった飛行、それも夜間飛行の商業化に挑む男たちの物語。描かれるのは勇敢さであり神聖さであり、徹底したヒロイズム。客観的に見れば、男のプライド、と表現されてしまうのかもしれないけれど、そういう次元を超えた崇高さを感じる。
    すごく心が揺さぶられる。

  • 【電子版】

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著者プロフィール

1900年、パリ、リヨンに生まれる。1921年空軍に入り、1926年ラテコエール社にて、郵便輸送機のパイロットに。1932年以降はテストパイロット、ジャーナリストとして活躍。1939年第二次世界大戦とともに招集され、偵察飛行に従事。一時アメリカに亡命したが1934年再び空軍に戻る。1946年出撃後、行方不明に。主な著書に『人間の大地』『夜間飛行』『星の王子さま』他。

「2015年 『絵本 星の王子さま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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