肉体の悪魔 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

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  •  小さい頃、初めて勃起した自分の男性性を主張する異物に、一体何が起きているのか分からなかった。何がきっかけにこうなった?これが意味するのは何だ?未知に対しての興奮があった。

     「肉体の悪魔」は語り手の少年”僕”と美しい夫人”マルト”の恋話だ。少年は高校生ほどの年齢で、既婚者のマルトの肉体に溺れている。少年は愛の美しさを語るが私にはそうは思えない。
     少年からすれば、彼女への行為は全て愛がさせるものだ、けれど読み手の私は、精神の奉仕としての愛より、自らの欲望を満たそうとする肉体の目的のほうが勝っているように思える。つまりそれは少年が語る崇高な愛が故にというより、彼が忌み嫌う怠惰でエゴで無知によるものであると思う。早熟だと語る思考と、まだ若い身体の優劣は、どちらが上位にたっているだろうか。

  • 現代の倫理観からすると、とんでもない話だが、人間の衝動的な部分がよく描かれていて面白かった。

  • 津村の読み直し世界文学の1冊。名前はおどろおどろしい。原題はLa diable au corpsで検索でもこの小説のtitleが出てくる。少年が結婚した女性との不倫を行い、その女性が死亡して子どもが遺される話である。子どもについては少しの言及があるのみである。有名な小説であるが、その名前故に敬遠していたような気がする。

  • 著者の背景も加味するとえげつない作品
    人間心理を緻密に描き、読者の心をぐちゃぐちゃにするフランス文学の美しさと醜さが混ざった傑作でした。
    日本文学と比べて、心理描写や構成が緻密でお国柄を感じました。現代の日本文学でも人間心理系の作品は評価されがちですが、これらフランス文学を知ってしまうと、今の日本文学はどうも薄味の真似っこに見えてしまいます…

  • 若気の至りで片付けるには、あまりにも不注意で、無責任で、不道徳な行為。だけど、第一次大戦、(この当時としては普通であったとしても)10代での結婚、同年代と遊ぶことに物足りなさを覚えてしまう程度の聡明さが舞台装置となって、「こうなるしかなかった」気になるのはどういうわけだろう。若さと浮かれから周りが見えていなかったのか、それとも最初から不幸になることを求めて、なんとなくお決まりの型にはまった幸福から抜けたくて大胆な行動に出たのか。理解に苦しむけれど、いつか噂を耳にするだろうジャックが不憫でならなかった。

  • 古典だが、やや女性の描き方が一方的かなぁ

  • 主人公は異常に硬質でクールなのに
    女があまりに普通の優しい女で
    だから仕方ないが
    心理小説としては女の内面の書き込みが物足りなくて
    イマイチ好みではなかったな。

  • 4歳年上の女性との関係というと多々ありそうだが
    16歳の少年の話となると一筋縄ではいかない。戦時中、夫が軍隊で不在の人妻と関係をもつようになる少年。そして妊娠…未成熟な心と肉体を通して錯綜する酷く不確定で歪んだ"愛"に対する感情。その"愛"が深まるたびに不安が広がり幸せとは別のベクトルへと深く突き進む。少年と人妻の情事というそれだけの話だが最後まで惹きつけ読ませる魅力がある。ラティゲの文章は硬質で暗い光を放つ。残念なのは翻訳では感情表現が理解に難しく魅力が半減してしまう事…

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