栗本薫氏が亡くなられて4年が経ちました。
著者の夫・今岡清さんが中心となり「グイン・サーガ ワールド」を始められ、他の書き手によってグインの居る世界の物語が新たに生み出されても「同人誌みたいな二次創作やよなぁ」と、本は買うものの”積ん読”になってしまっていました。
本編が再開したと言われても複雑な思いで、読み始めたのですが
……………………面白い。
舞台はパロ。絶筆となった130巻で、ゴーラ王・イシュトヴァーンがある目的をもって再度パロへの侵入を図ろうとする場面から再開。
登場人物の選択、口調、地の文の言い回しに栗本薫さんが書くグイン・サーガとの違いを見つけながら、5ページ、10ページと読み進めて行くうちに……渇いた喉に久しぶりの水が通ったように、何もかもが気にならないように読みふけってしまいました。
面白い、面白いよ、これ。
考え方が子どものままのイシュトヴァーン、望まぬ職に疲れ愚痴りながらも職をこなすヴァレリウス、王子なのに心は放浪の吟遊詩人のマリウス……主要な登場人物が「こんなのじゃない!」と言わせない描写で活き活きと記されています。
栗本薫さんの書き口とは違うのですが、そんなことはどうでも良い位、グイン・サーガです。
4年前、130巻のレビューで、ウチは「この世界を繋ぐ窓は閉じられてしまった。マリウスのように、グインの世界を歌うことが出来る吟遊詩人を待つ」といった感じで書いたのですが、これは本当に望んでいた形そのものです。
例えば、ある人物の話をするときに、私が話すのと友人が話すのでは同じ出来事であっても、その語り口は変わってきます。もしかしたら同じ事実であっても、聞き手にとっては全く違った出来事に感じられるかもしれません。
五代ゆうさんはプロの書き手として、栗本薫さんのコピーではなく正篇を書くと高らかに宣言しました。
この世界を歌う新たな吟遊詩人として、二次創作ではなく、正篇として出版される意味がここにはあると思います。
「栗本薫のグインじゃなきゃ……」と思っているかつての読者にこそ、手に取って欲しいと思います。