大理石の男 [DVD]

監督 : アンジェイ・ワイダ 
出演 : イエジー・ラジヴィヴォヴィッチ  クルィスティナ・ヤンダ  ミハウ・タルコフスキ 
  • 紀伊國屋書店
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  • / ISBN・EAN: 4523215058513

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  • 先月お亡くなりになられたアンジェイ・ワイダ監督の代表作の一つということで観賞した。

    1977年、ポーランド映画。監督はアンジェイ・ワイダ。
    主演は若き女性監督アグニェシカ役のクリスティナ・ヤンダ、そして、本題の主役ともいうべき「大理石の男」で煉瓦工マテウシュ・ビルクート役のイエジー・ラジヴィオヴィッチ。
    また、常にマテウシュにつきまとい、ある種狂言回しのようでもあった政府監視役?にはピョートル・チェシラク。ビルクートの煉瓦工仲間でチームの相棒であるビテック役にはミハウ・タルコフスキー。

    物語は若き女性監督アグニェシカが、卒業制作としてかつての労働英雄で大理石の彫刻にもなったマテウシュ・ビルクートを題材に取り上げようとしたところから始まる。
    1950年代。8時間で28,000個の煉瓦を積み上げるべし!というお題を与えれた煉瓦工マテウシュ・ビルクートとそのチーム。彼はもともと貧しい農家の生まれで、社会主義の旗の下で新都市建設に駆り出された煉瓦工であった。
    そして見事にお題を達成するビルクートたち。
    彼は労働英雄に祭り上げられ人民に歓喜をもって迎えられるのであった・・・。

    舞台はアグニェシカが映画を製作しようとしている1976年と、その題材である煉瓦工マテウシュが生きた1950年代とが交錯する。
    1950年代のポーランドはスターリニズムに彩られた社会主義思想国家の建設に邁進している。そして、何ともアメリカの1960年代・70年代を思わせるようなヒッピー風の出で立ちの若き女性監督と、これまた当時を思わせるようなアメリカンポップス調のBGMが1950年代と見事に対称となっている。
    そのヒッピー風女性監督が暴こうとするのは1950年代ポーランド政府の欺瞞である。
    社会主義国家で必要とされた人民の英雄は、実は国家のお膳立てで作られたものであったのだ。
    難題を達成して労働英雄として表彰され、エリートな生活と結婚を実現したマテウシュ。しかしそれが実は幻想であり本当の現実に直面した時、マテウシュの転落が始まる。
    アグニェシカはかつての労働英雄マテウシュ本人には会えないものの、当時のドキュメントフィルムを観たり、周辺の人々にインタビューしながら、それぞれの視点視点で過去が発掘され再構築していく。そしてその時、彼の実像と彼を覆ってきた虚偽が次第に甦り、その本質に迫ることになるのである。

    過去と現在が錯綜しながら次第に明らかになる事の経緯と本人であるマテウシュに辿りつくのかという趣向がミステリーっぽいのに加え、周囲のインタビューや過去の映像が交互に混ぜ込まれているという手法自体が自身もドキュメンタリーぽくみせており、こうした構成の面白さと過去の本物の祖国の政治の根幹にすばっと斬り込む切れ味の良さが本作の魅力であるといってよい。
    さらに、明確な背景の説明がなくじわりじわりと何となくわかるようになっているところや、現実を彷徨うことになるビルクートだがさしたる理想を持ってはいないのに対し、かつて理想や情熱に燃えていた周囲の人々がビルクートを捨てることにより成功し、いまインタビューを受けているというエスプリもとても良かった。

    それにしても煉瓦を8時間で28,000個積むということが「英雄」になるなんて!確かに驚異的なことだとは思うが、現代日本ならばバラエティー番組の領域かもしれないトライアルショーをみんなで煽り祭り上げていたとは驚きとしかいいようがない。この時代の思想に感化された人々とは根本的にジョークのつぼが異なるのだろうか。(笑)
    そんなことも含めてアンジェイ・ワンダ監督は、忌まわしい過去を発掘し臨場感を持ってこのようなブラックジョークを現代に曝け出した。なかなか凄い作品を作ったものだ。

    ラストは、ちょっとそこで終わるか!?もう少し!!というところで終了していて余韻感も凄いのだが(笑)、続編の『鉄の男』へのますますの期待にも繋がった。

    謹んでご冥福をお祈りいたします。

  • スターリン時代の欺瞞。

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