鉄の骨 (講談社文庫) [Kindle]

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  • Audible読了
    シンプルなストーリーで、お得意の銀行や町工場もやや遠慮がちにしか出てきません。終盤のヨセもやけにあっさりしていて池井戸作品独特の噛み応えみたいなものは希薄だったように思います。

    その中でも学ぶべきことは多く、物語は入社4年目の若手社員が大手ゼネコンひしめく官製談合の世界に放り出されるというものですが、そこで出会うフィクサー的人物にすこぶる好感を持たれます。つまりかわいがってもらえるというやつです。これに明快な説明はなく、実直さや情熱、正義感だけではない、公正な感覚だったり時に諫言できる育ちであったり、努力を放棄したわけではないですが縁や地運といったような言語化したり学びとるに少々難しいものも作用しているんじゃないかな、なんて思いました。

    もうひとつ印象的なのは、サラリーマンは代わりのきく部品みたいなものですか?と問う主人公に対しフィクサーの回答。
    「部品そのものさ。私だってそうだ。お前もだ。ただし部品というのは仕事という目的の話に限ってであって、同時に私たちは人間だ。サラリーマンである以前に人間だ。そこが大切なんだ。」と説く。
    文章だとごくありふれたフレーズですが、私は敢えて社会の歯車になることの、その喜びが正直に表現されているなと受け止めました。他の作品でも例えば『コンビニ人間』なんかで思いましたが、みなが何者かになろうとして苦しむ中で、その欲から解き放たれたような人物像を見ると具体的に何がというわけではなく、空気のようなものが自分の中をすーっと通っていく、そんな感覚になります。

  • 公共事業の談合にまつわるお話
    建築業界を描いた作品はあまり多くないので、情報小説として面白かった
    ただ、長い割にいまいち盛り上がりに欠ける部分もあり、銀行員の彼女関連のサブプロットは完全に蛇足感がある
    オチも容易に予想できる内容で、驚きもなかった

  • ゼネコン、談合のことがよく分かった。しっかりとしたストーリーだが、オチは予測された。

  • 会社員ってこんなに胃がキリキリするお仕事なのね、お父さんいつもお疲れ様。

    コスト削減だけではいつか限界がくる。
    庶民も安い方についつい飛びつくけど、安いことのみに価値を見出すから談合になってしまうのかな。
    価格の裏にある物事を考えるの大事と思った。

  • 今なお残る談合。
    単なる情報交換なのか、入札価格の釣り上げなのか。

    競争力がついてきたゼネコンであるが、日本の市場規模を思うと先行きは明るくないよね。

著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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