NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2014年 4月号

制作 : ナショナル ジオグラフィック 
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  • / ISBN・EAN: 4910068470447

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  • 石炭はどこまで「クリーン」になれる?

    世界で年間70億トン以上も消費されている石炭。その需要は今も増え続け、環境への影響も深刻化してきた。石炭を「クリーン」に使う方法はあるか。

    文=ミシェル・ナイハウス/写真=ロブ・ケンドリック

     環境にやさしい「クリーンな石炭」などあり得ないと、環境保護派は言う。

     米国東部の炭鉱地帯が、その何よりの証拠だろう。アパラチア山脈の山々は石炭採掘のために山頂ごと無残に削り取られ、渓流の水は酸性の物質による水質汚染でオレンジ色に染まっている。

     中国に目を転じれば、最近の北京市内は空港ロビーの喫煙所以上に汚れた空気に包まれる日が多い。中国の大気汚染の主要な原因は石炭の燃焼だ。呼吸器疾患など、大気汚染が原因とみられる死者は年間100万人を超える。

     石炭は莫大な社会的代償を伴う燃料であり、最も環境負荷が大きく、最も多くの死者を出しているエネルギー源だ。しかし、こうした負の側面を考慮に入れなければ、燃料としては最も安い。実際、私たちは石炭に依存した暮らしを送っている。

     そこで問われるのは、石炭が環境に及ぼす影響をどこまで小さくできるかだ。石炭をまったくの「クリーンエネルギー」に変えるのは無理だとしても、少なくとも許容できるレベルまで、つまり気候が地球規模で急激に変動するのを防げる程度まで、環境負荷を抑えることは可能だろうか。
    当面はやめられない石炭火力発電

     米国では、発電所が排出する二酸化硫黄や窒素酸化物といった汚染物質については法規制が導入され、排出量を大幅に減らす効果を上げている。だが、地球温暖化の主要な原因である二酸化炭素(CO2)の問題は、これらの汚染物質とはまったくスケールが違う。

     2012年に化石燃料の燃焼により世界中で排出されたCO2は、史上初めて345億トンに達した。そのなかで最も多いのが、石炭の燃焼による排出だ。近年、米国では天然ガス価格の下落で石炭の需要が減っているが、ほかの国々、特に中国では需要が急増している。

     今後20年のうちに新たに電気を使う人は何億人も増える。今の傾向が続けば、その大半は石炭火力発電による電力を使うことになるだろう。代替エネルギーの利用や省エネルギーをいくら強力に推進しても、少なくとも当面は石炭火力発電をやめるわけにはいかないようだ。

     北極圏の氷の融解や海面上昇、そして、熱波などの異常気象。私たちの未来に影を落とすこうした現象が今後どの程度進むかは、世界の国々が石炭をどう利用するか、とりわけ米国と中国がどう利用するかに大きく左右される。これまで通り石炭を燃やしてCO2を排出し続けるか、それとも、化石燃料から出る硫黄や窒素を除去するのと同じように、炭素を回収し、地下に貯留する技術を確立するのか。

     米国と中国で、その取り組みを追った。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     この特集で取り上げた二酸化炭素の回収・貯留(CCS)。日本ではまだ発電所で実施した事例はありませんが、北海道苫小牧市では製油所で発生する二酸化炭素を地下に貯留する実証プロジェクトが始まっています。ただし、まだ調査や設備建設の段階にあり、実際に貯留する試験は2016年度から始まる予定とのこと。地震国である日本でも有効なのか、賛否両論のある手法だけに注意深く見守る必要がありそうです。(編集T.F)

    宇宙誕生 見つめる目 アルマ望遠鏡

    世界一巨大な電波望遠鏡が、南米チリのアタカマ砂漠でいよいよ始動した。アルマ望遠鏡の66基のアンテナが、初期の宇宙に目を凝らす。

    文=ユディジット・バタチャルジー/写真=デイブ・ヨダー

     南米チリ・アタカマ砂漠の標高5000メートルの高地で建設が進められていた大型の電波望遠鏡が、ついに稼働し始めた。その名は「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA、略称アルマ望遠鏡)」。電波望遠鏡とは何ものか? それで宇宙の何が見えるのか?

     宇宙にある天体は、その温度に応じて、さまざまな波長のエネルギーを放射する。たとえば極めて高温になる超新星爆発では、太陽の数十億倍もの可視光線に加え、高エネルギーのX線、ガンマ線などが放たれる。それらは特殊な望遠鏡を使って観測が可能だ。比較的温度が低い彗星や小惑星は、可視光線よりも波長の長い赤外線を発している。

     一方、これら以外の宇宙の大半は、さらに温度が低い。恒星の材料となるちりやガスの雲の温度は、絶対零度をほんのわずかに上回る程度で、惑星が誕生するのもこうした環境だ。新たに生まれた恒星の周囲に渦巻くちりやガスが集まって、惑星が形成されていくのである。
    「冷たい宇宙」を観測せよ

     こうした「冷たい宇宙」から届く、赤外線より波長の短い電波(ミリ波やサブミリ波)を、地上の望遠鏡で観測するのは容易ではない。最大の課題は膨大なノイズ。地球の大気中をほとんど邪魔されずに進む可視光線とは違い、ミリ波やサブミリ波は水蒸気に吸収されやすく、大気の影響を受けやすい。宇宙から届く電波は地球の大気中で弱まり、ノイズが混じってしまうのだ。

     また、ミリ波やサブミリ波が伝えるエネルギーは可視光線よりはるかに小さく、巨大なパラボラアンテナを備えた電波望遠鏡を使っても、かすかな信号しか得られない。

     そこで科学者たちが考え出した解決策が、複数のアンテナを組み合わせる方法だった。空気の乾燥した土地に、アンテナをいくつも並べて宇宙からの電波を集め、全体を一つの望遠鏡として観測を行うのだ。

     こうして完成したのが、地上望遠鏡では世界最大のアルマ望遠鏡だ。開所式が行われたのは2013年3月。これまでわからなかった、初期宇宙の銀河や惑星の誕生プロセスなどについて、期待に応える成果を次々に上げている。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     雨が少なく、からからに乾燥していて、標高が高く空気の薄いところ…。電波望遠鏡での観測に理想的な土地として白羽の矢が立ったのは、南米チリにあるアタカマ砂漠の高地でした。特集記事では、アルマ望遠鏡の建設地がアタカマ砂漠の高地に絞り込まれる最終段階のエピソードを紹介しています。
     実は、その前段階では各国がばらばらに構想をあたため、候補地探しに試行錯誤を重ねていました。観測に適したところはどこも、人も住まないような過酷な土地ばかり。一番困るのは何かというと、電源がないことだそうです。そこで発電機を砂漠に持ち込んだり、太陽電池パネルを設置したり…。webナショジオ「研究室に行ってみた。」には、今回の特集記事も査読いただいた東京大学の河野孝太郎先生が登場。現地調査の苦労話や、ブラックホールを対象とした最新の研究成果などを紹介しています。特集と併せて、ぜひお読みください。(編集H.I)

    風変わりなペットたち

    野生動物をペットとして飼うのは、時に危険をはらむ。ある“猛獣脱走事件”をきっかけに、その是非をめぐって米国で議論が巻き起きている。

    文=ローレン・スレーター/写真=ビンセント・J・ミュージ

     人間と生活をともにするペットは犬や猫だけとは限らない。実に多様な動物が、飼い主と一緒に暮らしている。そうしたペットは「エキゾチック・アニマル」と呼ばれ、米国ではその数が国内の動物園にいる頭数を上回るともいわれる。

     おかげでこうしたペットを扱う業界は盛況だが、動物愛護や野生動物の保護を訴える団体は非難の声を上げる。
    「たとえ飼育下で生まれた個体でも、野生動物を住宅地に持ち込むのは危険だし、動物にとっても不幸。だから法律で禁止すべきだ」と。
    絶滅の危機にあるキツネザルを牧場で

     フロリダ州に広さ3ヘクタールの牧場をもつレスリー=アン・ラッシュを訪ねた。57歳になる彼女の仕事は馬の調教師だが、牧場に小さな動物園を設け、さまざまな動物を飼育している。雄のカンガルー3頭、キツネザル4頭、シカ科のキョンの仲間、ミニブタ、アライグマ科のキンカジュー、そしてドーザーという名の犬もいる。

     キツネザルは、野生では多くの種が絶滅の危機にある。ラッシュは飼育下で繁殖した個体を飼うことで、キツネザルを絶滅から救う手助けができると考えている。実際、彼女は昼夜を問わず動物たちの世話をし、惜しみない愛情をそそいでいるようだった。
    トラ5000頭の多くは個人飼育

    「エキゾチック・アニマル」の正確な数を把握するのは難しい。世界動物保護施設連盟のパティ・フィンチによると、米国で飼育されているトラは少なくとも5000頭はいるとみられている。その多くは、動物園ではなく、個人に飼われている。それなりのお金をかけ、愛情をもって飼育している飼い主も多いものの、なかには動物たちを狭い檻に閉じ込めて劣悪な環境で飼っているケースもある。

     ライオンやトラ、サル、クマ。今やシマウマやラクダ、ピューマ、オマキザルでさえインターネットで購入できる時代だ。検索すれば、つぶらな瞳でこちらを見つめる動物たちの姿がモニター画面に映し出されるだろう。
     こうした動物たちは、もはや完全に“野生”とは言えないが、かといって家畜化されているわけでもない。どっちつかずの状態に動物たちを置いていることで、さまざまな問題が生まれている。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     動物好きな人は考えさせられる記事。犬や猫以外のペットを飼っていれば、なおさらかもしれません。わが家にもセキセイインコが1羽いますが、飼育下で繁殖した子とはいえ、家の中で飼うこと自体が不自然な状態なのだと実感することがあります。発情しても発散する場所がなく餌の吐き戻しが止まらなかったり(オスです)、人間の不注意で踏んづけそうになったり……。
    「あの子を必要としていたのは私たちであって、向こうは私たちを必要としていませんでした」。記事の中に出てくる女性の言葉が胸に突き刺さりました。でも、ペットも家族であるという気持ちも痛いほどわかるのです。(編集M.N)

    ブルターニュの伝統 優美なるレース

    フランス北西部のブルターニュ半島で、村ごとに伝わってきた独特な伝統衣装。その地に生まれた誇りとともに、若い世代へ受け継がれようとしている。

    写真=シャルル・フレジェ/文=アマンダ・フィーグル

     シトロエンの後部座席から、二人の老女が悠然と姿を現した。頭には高さ30センチを超す、レースの帽子のようなものをかぶっている。駆け寄った家の主人は、満面の笑みで敬意を表した。

     ここはフランス北西部、ブルターニュ半島の西端に位置するビグデン地方。87歳のアレクシア・カウダールと90歳のマリー=ルイーズ・ロペレは、魚の缶詰工場で働いていた普通の庶民だが、近隣で彼女たちを知らない者はいない。
     頭に塔のようにそびえた飾りは「コワフ」と呼ばれ、かつては日常的な装身具だったが、日頃からかぶっているのは今やこの二人だけなのだ。
    伝統衣装で踊りを競う若者たち

     ブルターニュの伝統衣装は、村や地方ごとに特色がある。なかでも目を引くのが、白いレースをふんだんに使った「コワフ」と呼ばれる頭飾りだ。
     昔のコワフは簡素で、農村の女性たちの日よけや雨よけといった実用も兼ねていた。それが19世紀から20世紀には、風変わりな形の優美な装飾へと変貌し、画家のゴーギャンをはじめとする芸術家たちを魅了した。

     伝統の装いには時間がかかる。コワフのレースをのりづけし、ピンで留めて形を整えても、霧や雨に遭えばすぐに形が崩れてしまう。ブルターニュでも伝統衣装離れが進み、1950年代頃には若い娘はほとんど着なくなっていた。

     だが、伝統を守る気概にあふれた若い世代もいる。「ケルト・サークル」と呼ばれる伝統舞踏の愛好家グループは、一年中練習に励み、夏祭りのコンテストでは衣装を着て踊りを競う。
     6歳でサークルに入った20歳のアポリーヌ・ケルソディによれば、「古臭いというイメージは薄れてきています」という。17歳のマルウェンヌ・マリエルは「私はフランス人である以前に、ビグデン人なんです」と言う。ビグデンの女性は率直で物おじしないと語る少女たちは、頭に着けたコワフのように、凜とした力強さを放っていた。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     フランスのブルターニュ地方で撮影された、伝統衣装をまとった美しい女性たち。写真では、人物の背景がうっすらとぼやけて「紗(しゃ)がかかった」状態になっていることにお気づきかと思います。てっきり今どきのデジタル加工を施したのかと思い確認したところ、シルクスクリーンを背後につって撮るという、とってもアナログな手法だったことが判明。「やっぱりナショジオの写真家!」ですよ。(編集H.O)

    モザンビーク海峡 二つの環礁の物語

    マダガスカル島とアフリカ大陸を隔てるモザンビーク海峡。フランスが領有する二つの美しい環礁で、アオウミガメやガラパゴスザメが命をつなぐ。

    文=ケネディ・ウォーン/写真=トマス・P・ペシャック

     二つの岩の塊が抱き合って、ダンスを楽しむ様子を想像してほしい。
     アオウミガメの交尾はまさにそんな感じだ。相撲の力士を思わせる巨体が、相手の甲羅に爪をひっかけてしがみつき、ひれをゆっくりと動かしながらサンゴ礁に縁どられた透明な海を泳いでいく。

     マダガスカルの南西沖、モザンビーク海峡に浮かぶユローパ島を囲むサンゴ礁には、毎年平均して1万頭を超すアオウミガメの雌が集まってくる。そこで雄と交尾し、砂浜に上陸して、卵を産む。

     アオウミガメの雄は子孫を残すため、まだ交尾の相手が決まっていない雌を探すことに全精力を注ぐ。すでに交尾中のつがいの間に割って入ることさえある。
     ホルモンの働きで興奮した雄が雌を射止められないと、すでに交尾中のカップルの、雄の甲羅に爪でしがみつくこともある。海洋生物学者のウォレス・J・ニコルズは、4頭もの雄が重なっているのを目撃したことがある。
    「体重が180キロもあるウミガメが重なりあっている姿は、まるで曲芸でしたよ」
    アフリカ沖に浮かぶフランス領の島々

     ユローパ島で、重なりあったウミガメが人間の目に触れることはまずない。この島は自然保護区に指定され、周辺の海に人が立ち入るのは難しいからだ。

     ユローパ島は北西に約110キロ離れた環礁バサス・ダ・インディアとともに、マダガスカル島を取り囲む五つの島々、フランス領インド洋無人島群を形成している。
     周辺諸国の異議をよそに、フランスがこれらの島々を領有し続けるのには理由がある。無人島群の総面積はわずか44平方キロだが、周囲に広がる排他的経済水域の面積は、実にその1万5000倍近い約64万平方キロもあるのだ。これはフランス本国の面積に匹敵する。

     無人島群の生物多様性を重視するフランスは、違法な漁業やウミガメの密猟を厳重に取り締まっている。ユローパ島をはじめ、いくつかの島には軍の駐屯地や警察の出先機関が設置され、監視船が周辺海域を監視している。

     ユローパ島とバサス・ダ・インディアは、どちらもマダガスカル島とアフリカ大陸に挟まれたモザンビーク海峡にある。隣接した二つの島の自然環境は、大きく異なる。
     低木が密生するユローパ島は、ウミガメだけでなく、多くの海鳥の繁殖地になっている。一方のバサス・ダ・インディアは、海面からかろうじて顔を出しているだけの環礁で、87平方キロほどの広さの礁湖(ラグーン)に、多くのサメが生息している。

     どちらの島にも、インド洋西部の海洋生態系が手つかずの状態で残っている。
    「海上で見ると何の変哲もない島のようですが、いったん水中に潜ると、これほど美しい世界はありません」。撮影を担当した海洋生物学者のトマス・ペシャックはそう語る。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     縄文杉のある、うっそうとした太古の森で知られる屋久島と、島全体が平坦で宇宙センターのある種子島。東シナ海に浮かぶ鹿児島県の二つの島は、あらゆる面で対照的です。自然と科学をそれぞれ象徴する島が、わずか20キロ足らずの距離で隣接しているというのは面白いですね。
     アフリカ大陸とマダガスカル島のあいだに広がるモザンビーク海峡にも、同じように対照的な二つの島があります。ユローパ島とバサス・ダ・インディアです。豊かなマングローブの森を抱くユローパ島では、多くの海鳥が繁殖しています。それに対してバサス・ダ・インディアは満潮時には大半が水没してしまう環礁で、目立つ生き物といえばサメくらい。記事は二つの島の際立った違いを描きます。並べられた二つの島の地図を見比べるだけでも面白いです。
     対照的な二つの島ですが、共通しているのはどちらもフランス領であること、そして徹底的な保護が行き届いていることです。海域に立ち入ることが禁じられており、周辺の海を調査したダイバーすらほとんどいないといいます。そのため、人間が自然に介入する以前の島本来の姿を見ることができるのです。どこへ行っても人間の気配を感じてしまう今、なかなかお目にかかれない光景を見せてくれる特集です。(編集N.O)

    南仏で発見 古代ローマの沈没船

    かつてローマ帝国の支配下にあった南仏の町アルル。水運による町の繁栄を支えたローヌ川の底から、約2000年前の平底船が発見された。

    文=ロバート・クンジグ/写真=レミ・ベナリ

     2004年の夏、南仏の町アルルを流れるローヌ川で考古学調査をしていたダイバーが、水深4メートルの川底の泥の中から木材の塊を発見した。
     後にこれが、古代ローマ時代の木造船の一部と判明。紀元1世紀に河川交易のために建造された、全長31メートルの平底船が沈んでいたのだ。

     紀元1世紀のアルルは、ローマ帝国の属州ガリアへの玄関口だった。地中海各地から集まった物資は、ここで川船に積み替えられ、北方へと運ばれた。
     アルルの人々は、かのユリウス・カエサルから、軍事支援への見返りにローマの市民権を与えられた。現在の町の中心であるローヌ川左岸には、2万人を収容した当時の円形闘技場が残っている。
     一方、町の繁栄を支えた全長1キロにわたる港があった右岸には、たいした遺構はない。ただ、ローマ時代のごみが川底に沈んでいるだけだ。

     ごみの多くは、素焼きのつぼ「アンフォラ」だ。ワインやオリーブ油、魚醤などを帝国内の各地へ運ぶ容器として数多く使われていたが、古代ローマの人々はほとんどを使い捨てにしていた。
     見つかった木造船は、川へ捨てられたアンフォラと泥の層に2000年近く埋もれていた。そのため船体の大半はほぼ原形をとどめ、最後の積み荷や、乗組員の私物まで残っていた。
    カエサル像が呼び込んだ幸運

     ローヌ川の流れの激しさはフランス随一。洪水や疫病をもたらす川として、地元でも恐れられてきた。考古学者のリュック・ロングは「あの川に潜りたいだなんて、思ったこともなかったよ」と言う。
     ロングは1986年に、沈没船の遺物ハンターである友人に誘われて、故郷のローヌ川で潜水調査をした。その川底で大量のアンフォラを見つけたのだ。

     以後の地道な調査で、平底船のほか、コリント式円柱の柱頭や、ビーナス像、海と航海の神ネプチューンの像など、さまざまな遺物が見つかった。
     船の未来を決定づける大発見があったのは2007年、川に潜れるシーズンが終わる直前のことだった。ユリウス・カエサルらしき大理石の胸像だ。カエサルの存命中、おそらくアルルを植民地にした直後に制作された、現存する唯一の像かもしれない。

     希少なカエサル像発見のニュースはたちまち世界中に広まった。この像を中心に据えた博物館の企画展には40万人もの人々が訪れ、これが追い風となって助成金を獲得。古代ローマの平底船は、ついに水中から引き揚げられることになった。

    ※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。
    編集者から

     現代の川をさらってみたら、キリストが生きていた時代の遺物がざっくざく……というお話。恐竜の時代に比べたら、聖書の世界は意外と最近のできごとなのだと、改めて実感することができました。しかし、遺物も当時は“ごみ”だったわけで、言い換えれば不法投棄。人間のすることは、たいして進歩していないこともうかがえます。(編集H.O)

  • 資料ID・700037092

  • インドでは石炭の埋蔵量は世界5位。国内で3億人がいまだに電気のない暮らしを送っている。開発を急ぐあまり、非常に危険な違法採掘が横行し、過酷な労働がまかりとおっている。防護服も着用せ鵜、狭く危険な坑道であおむけになって駅探を掘り出し、台車に乗せる。

  • 石炭はどこまで「クリーン」になれる?の記事が興味深かった。

    全世界で発電される電力の40%は、石炭でまかなわれている。
    そして全世界で排出される二酸化炭素の39%は石炭に起因する。
    それでも世界中で急増する石炭の需要、、、
    (特に中国は10年間で22億トンも増えている!)
    きっと各国の政府が排出の規制をしない限り増え続けるんだろうな…

    フランスの伝統レースの記事も面白かった!
    一言でレースといっても、色々なデザインがあるんだなぁ。
    村ごとに特徴があって、一目で身分や出身地が分かるというのが凄い。
    こういう素敵な伝統はいつまでも受け継がれていって欲しいな。

  • ・石炭はクリーンなエネルギーになり得るか
    排出量を減らす努力だけでなく、排出してしまったCO2を回収して圧縮・貯蔵する仕組みを作っていく必要がある。技術は研究されてきているのに資金がなくて出来ない。国が力を入れたりビジネスにしたりできないか。実現できればCO2増加による諸問題を解決できるかも?悲惨な炭鉱採掘の現状には後進国の未来を考えさせられた。

    ・アルマ望遠鏡
    星の誕生の仕組みや宇宙の歴史がより詳細に明かされる日が来るかも。期待できそう。

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