- 本 ・映画
- / ISBN・EAN: 4959241753410
感想・レビュー・書評
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大学を優秀な成績で卒業した二郎は、幼い頃からの夢だった飛行機の設計技師に。ところが初めて手がけた飛行機が試験飛行で空中分解してしまう。
上司のはからいで休暇を取る事になり、避暑地へ。そこで二郎は、関東大震災の際に同じ汽車に乗り合わせた菜穂子と再会。すぐさまひかれあうが、彼女は結核を患っていた。
宮崎駿の『崖の上のポニョ』以来5年ぶりとなる新作は、零式艦上戦闘機(零戦)を設計した実在の人物、堀越二郎と、同時代に生きた文学者・堀辰雄を織り交ぜた主人公・二郎の姿を描く大人のラブストーリー。
近眼ゆえにパイロットを諦め、日本の技術革新と大空への夢のために、飛行機作りに邁進するが、それは飛行機作りを戦争のために利用されることと表裏一体、そんな矛盾を抱えながら飛行機作りに邁進する堀越二郎の葛藤や同僚の飛行機作りに賭けた思いや結核に苦しむ里見菜穂子との純愛ラブストーリーが組み合わさって、得意のファンタジー路線と違い、宮崎駿監督の飛行機への夢や思い入れが正直に出た映画であり夢を追うことの美しさと残酷さを描いた青春映画になっています。
主人公の声を演じた庵野秀明、西島秀俊、瀧本美織、野村萬斎、西村雅彦などの声のナチュラルな演技が、印象的です。特に最後のカブローニと話すシーンは、飛行機作りが戦争に利用され、零戦は一機も帰還せず結核に苦しむ菜穂子を救えなかった堀越二郎の苦悩と葛藤が痛いほど伝わってきて、その絶望から生きていこうとする「生きなければ」泣けました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「いい男」と「いい女」像をこれでもかとばかりに描いた映画だと思った。
二郎は結局自分の夢を一番に追いかける。どんだけ妻のことを好きだと言っても、死にかけてても、やっぱりタバコを吸いながら図面を描き続ける。
菜穂子はそれでも仕事に行かせる。自分は死ぬほどしんどくても、旦那が帰って来たらそのまま受け入れて、仕事の話を聞いてやる。最後には記憶の中の自分の姿を取っておいてほしいと、死ぬ前に家を出る。
賛否両論あるけど、アニメでやるべきか、ジブリでやるべきか題材だったかは分からないけど、凄く良い映画だと思った。
図面を必死で描く二郎の描写が凄く格好いい。タバコを吸って頭を埋めてる絵とか、鉛筆の走らせる音とか、計算尺の使い方とか。宮崎駿は女の子を描くのを得意としてたのかもだけど。なんだかんだかっこいい男の描き方も知ってる。
図面を描く男はカッコいい。生まれ変わったら図面を描きたい。 -
ユーミンの『ひこうき雲』を聴きたくて視聴。
直接的には表現されていないけど、やはり妻は亡くなってしまったんだなぁ。はかなさが歌詞とぴったりして沁み入る。聴いただけで涙が出そうだった。
名曲だと思う。
この映画は大人向け。
子供だと退屈してしまうんじゃないか。
個人的には好き。
特に二郎の夢の中と現実が交わって、どちらも夢のような現実のような境界があいまいなところ。
たくさんの人を乗せるための飛行機が、やがて爆弾を積むようになって、一機も帰ってこないなんて胸が詰まる。
零戦は美しい飛行機なだけに目的と結果が重くのしかかる。
ここをもう少し深く掘り下げて欲しかった。
それだけでも一本映画ができそう。
関東大震災の表現は素晴らしかった。
絵はもちろん、音。得体の知れない底から湧き上がる恐ろしさが伝わった。
震災シーンとエンジン音は人の声を使っていると後から知って、もしかしたらそうかなと思っていたので納得。 -
主人公の男性の声が素人。
プロを使って欲しかった。 -
震災の描写はさすがのひとこと。いままでに関東大震災を扱った映画はいろいろと観てきたが、アニメーションでなら表現できることというものを目一杯みせてくれた。
いろいろとこの作品のことをとやかく言う人がいるようではあるが、以下の記述を目にした上で本作を観ると納得がいく。そういう意味で「ゼロ戦」は主役ではないのだ。
鈴木は戦闘機や戦艦を好む一方で戦争反対を主張する宮崎の矛盾を指摘し
「矛盾に対する自分の答えを、宮崎駿はそろそろ出すべき」と述べて
映画化を促した。
庵野秀明の声優としての仕事はトトロでの糸井重里を髣髴とさせるもので、その朴訥とした感、一般人感はきちんと倍増していた。
てかこの英語版の声優がJoseph Gordon-Levittだと!?
いかん、こちらも観なければ…。 -
こんな話だとは思ってなかった。
宮崎監督の飛行機愛だの戦闘機オタクだのなんだのと評判だったし、主人公がゼロ戦の開発者であることから、戦争がもっと色濃くストーリーに絡んでくるのかと思っていたし、それなら反戦のメッセージが強いのでは?と、勝手に思っていた。
そんな側面もあったけれども、終わってみればラブストーリーでもあった。
二人の生活は儚く短かったけれども、渾身の愛情で結ばれた姿には泣かされてしまった。仕事をやめられない夫のそばに、すこしでもいたいという気持ちがいじらしかったし、苦しむ最期の姿を見せたくなかった菜穂子の気持ちはとても切なかった。
限られた人生の中で深く愛し合う相手に出逢えたから、夭逝してしまったが彼女は幸せだったと思う。
実は主人公の声を演じたのが庵野監督だということ、擬音効果音のすべてを人の声を加工するなリして当てたということを忘れていたので、始まってからのけぞってしまった。そうだったなーと。声は正直私的にはダメだった。なんて下手くそなんだ!あなたも監督なら演技指導とかするのではないの?それがこんなに下手でいいのか?とつっこんでしまった。
効果音もときどき人の声や吐息がそのままに聞こえて違和感があったりした。
だから私はこの作品はダメだなと思いながら見たのだけれど、不思議なことにだんだん慣れてきた、いや、最後まで下手なのは許せなかったけど(ナニサマ)やはり久石譲の音楽含めてハヤオマジックにかかったか、最後は泣けて泣けて仕方なかった。
そこへユーミンのひこうき雲…。
泣いた。
見て良かったです。 -
(2020/6/2)
宮崎駿監督、2013年、日本。
宮崎駿氏、最後の(?)長編アニメ。
結局は兵器礼賛(偏愛)な話かと思って敬遠していたが、様子は違った。
のちに零戦を設計した堀越二郎の生涯と、堀辰雄の小説「風立ちぬ」を組み合わせた、ある意味シンプルなラブ・ストーリー。劇的な転回のようなものはなくて、年齢を重ねた巨匠監督の枯れた筆致が感じられる。
事前に思ったより面白かった。