人には目の前の獲物を食べたいなどの短期的な欲求がある。
だが、長期的な利益も大切なため我慢した先の報酬として快楽を身につけた。
快楽はドーパミンなどの快楽物質と呼ばれるものが脳内で放出され快楽を得る。
快楽物質は別名脳内麻薬とも呼ばれ、モルヒネなどの麻薬と同等かそれ以上の非常に強い効果を持つ。
ラットを実験体とし、レバーを引くと報酬回路に電気を流すようにしたところ空腹も自分の子供も忘れ延々とレバーを引き続けた。
快楽は人を長期的な目線で助けるために生まれたが、今ではそれが原因となって依存症を生んでしまっている。
ドーパミンなどの快楽物質で快楽を得ていくと徐々に快楽を感じづらくなりより多くの快楽を得ようと依存対象に接してしまう。
また、日々の生活の多くに快楽がある。これはドーパミン(興奮性)などの快楽と逆の働きをするセロトニン(抑制性)の働きによって人は依存症にならないようコントロールをしている。
人間が本来生きながらえるために身につけた快楽という報酬が現代では猛威を振るっている。
これは快楽という報酬がどう作用し何が危険かを理解することで対策することが可能だと思われる。
【気になったことメモ】
・人間には目の前の獲物を食べたいなどの短期的な欲求がある。
・短期的な欲を抑え込み、長期的な利益を得るために我慢できるために快楽という報酬を身につけた。
・ラットで実験を行った。レバーを引くと報酬回路を刺激するようにし行動を観察した。
・脳内の快楽は食欲や性欲などの生理的欲求より強かった
・空腹も、電気ショックの痛みも、さらには自分で産んだ子供を放置してまでレバーを引き続けた。
・多い時には24時間レバーを引き続け、2000回/時のレバーを引いた。
・神経細胞同士は細胞から伸びている軸索の先にシナプスを作り、神経伝達物質の放出と受容をおこなっている。
・神経伝達物質には興奮性と抑制性の2種類がある。
・興奮性は、神経の活動を活性化させる。
・抑制系は、神経の活動を抑制する。
・報酬系の中心となるA10神経は腹側被蓋野(VTA)から出て脳の各部へ伸びている。
・A10神経の軸索先は前頭連合野、扁桃体、側坐核、帯状回、視床下部、海馬に伸びている。これらは全て快感に関係する脳の各部とほぼ同じ。
・ドーパミンを受け取って活性化されるとその経験が海馬に蓄えられ、次に同じような状況が来たときにより速くドーパミンを放出する。
・期待の快感といい、一度経験すると次に経験なしに比べて期待感が高まる。
・苦痛を和らげる快楽物質オピオイドが存在する。
・別名、脳内麻薬様物質とも呼ばれ主に痛みの緩和を行う(傷の修復などはしない)。
・オピオイドは化学物質の1種ではなく、エンドルフィン類などの物質の総称。
・神経経由で各部位から痛みの刺激が届けられるとオピオイドはその神経の痛みの刺激を伝えづらくさせることで鎮痛している。
・オピオイドは快楽と鎮痛を生む脳内麻薬でもあるためランニング依存症のように麻薬と同等の依存症を招くことがある。
・各依存症に共通することは、依存対象に接している時に脳内でドーパミンが分泌されていること。
・初めて依存対象に接した時に意識する脳(前頭連合野)がそれを好きかどうか判断する。好きだった場合にはA10神経からドーパミンが放出されて快感を覚える。
・日々の生活でちょっとしたことでドーパミンが放出される。
・依存化しないように逆の作用を起こすセロトニンなどの抑制系の神経伝達物質が過度な興奮を抑えてくれる。
・依存症が進むと、ドーパミンの受容体が減少しさらに快感を得ようと依存対象に接する。
・やがてドーパミンの放出側や受容側の神経細胞自体が変化し、依存は脳内に永久に記録される。
・アルコール (エタノール)は中枢神経を抑制する。この抑制は抑制性の神経に対しても作用するため脳のブレーキを緩めてしまう。
・発揚期では、衝動的な行動や感情の抑制が効かなくなる。
・酩酊系では、意識や運動をコントールする神経を抑制する。
・昏睡期では、生命維持活動までを抑制する。
・ニコチンは意識しない脳(脳幹網様体・大脳辺縁系)に作用する。これらは呼吸などの生命維持や情動などに関わってくる。
・ニコチンは量が少ないと興奮性に、多いと抑制性に働く。ぼんやりしている時にゆっくり吸うと頭を活性化させ、イライラしている時に吸うと急速に気分が落ち着く。
・ニコチンは報酬系を活性化させてドーパミンを放出するため快楽と共に脳に記憶され依存症が形成される。
・ニコチンの作用は長持ちしないため喫煙者は吸って吐いてを繰り返す。その間ずっと快感を得て失いを繰り返している。
・セックス依存症・恋愛依存症ともに強い性的欲求が根源にあるわけではなく、寂しさが依存を作るきっかけとなっている。対人関係の希薄さからくるストレスを恋愛またはセックスで紛らわせようとしている。
・依存の種類
・物質への依存は、その物質の作用で報酬系が活性化する。
・プロセスへの依存は、その行為をすることで報酬系が活性化する。
・人間関係への依存は、他人から得られる承認や愛情などの社会的報酬によって報酬系が活性化する。
・ミュンヒハウゼン症候群
・同情など他人の気を引こうとして手術や入院や大げさな症状を吹聴しようとする。
・子供を殺してまで同情を買おうとすることもある。これは代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれる。
・人は社会的報酬を強く欲するため人を承認や評価するときは、「(あなたは)素晴らしいね」ではなく「(私は)あなたの素晴らしさに毎回驚かされる」というように自分自身を通した評価をした方がいい。
・金銭的報酬と社会的報酬により反応する脳の部位(線条体)は全く同じ。つまり、非常に単純化してしまうとお金で愛情は交換可能ということになる。
・動物の浮気の研究から、セックスによって愛情が深まるだろうと判明してきた。つまり愛があるからセックスしたくなるのではないということ。
・浮気という背徳的な概念、つまりは浮気と本気の区別を持つのは生物界では少数である。