蔦屋 [Kindle]

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  • 学研プラス
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感想・レビュー・書評

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  • 蔦屋重三郎を始め、日本史で習う江戸中期の著名な芸術家が彩る歴史小説。話は江戸時代の寛政期。日本橋の豊仙堂を買収した蔦重こと、蔦屋重三郎が、松平定信の言論統制政策に阻まれながらも「偏狭な人生にしか生きられない人たち」のために本を通じて娯楽の波を引き起こそうと奔走する。

    現代における表現の自由の尊さを再認識させられる。

    主役は蔦重だが、ストーリーテラーである小兵衛の目線で話が進むのが良い。自ら凡人と評する小兵衛は老いと死を目前に本屋は何を残せるのかを自問する。アーティストは作品という財産が永久に残り続ける。だが本屋(出版屋)は黒子であり、後には何も残らない。蔦重は人を繋ぐことを責務とし生きた証など求めていない。最後まで、小兵衛自ら答えに達したという記述はなかったが、「あんたと過ごした日々は、本当に楽しかった」という言葉が全てを語っているといると思う。そして残された歌麿の記憶に生きた証が残っていく。

    物語としては蔦重が老中の意を受けて黒服の武士達に捕まるシーンがハイライト。小兵衛の「この触書を書いた人間にとっては新たな本など要らぬのかもしれない。だが、この浮き世には新たな本を心待ちにしている人がいて、その人たちのために筆を振ったり鑿を取ったりたんぽを手にしている人がいる。そして、本を作った人たちと欲しい人たちを繋ぐ本屋がいる」という表現が印象的(240p)。全ての本好きに呼んで欲しい一冊。

  • 再び、合同サイン会でサインを頂いた作家さんの作品。
    蔦屋重三郎って誰? ということだったわけだが,2025年のNHK大河ドラマの主人公らしい。現在のTSUTAYAとは直接の関係はないそうだ。
    谷津矢車氏とは,サイン会で西條奈加さんのファンなんですなどとお話ししたが,彼女の「曲亭の家」とちょうど同じ時期のお話で,松平定信のクズ老中振りが同様に描かれている。日本文化史上の癌とも言えるクズの名前が悪名とは言え歴史に残っているのはなんとも腹立たしい。
    で,物語は,吉原細見の株を引き継いで儲けていた蔦屋重三郎が,本屋を引退しようとしていた日本橋の丸屋小兵衛の店を主人ごと買い取る所から始まり,松平定信の政治を批判・揶揄する出版物を発行して弾圧されたり,写楽を見出したりして江戸に一大ブームを引き起こし,志半ばして若くして亡くなるまでを,小兵衛の目を通して語る。細部の設定についてはWikipediaに書かれているものと若干異なるようではある。喜多川歌麿との関係とか。がとても面白かった。

  • 天狼院の秘本…初代
    https://isikifactory.com/style/tenro-in-successive-hihon/
    紙の本が、ブクログの登録に無い!


    面白かったです。

    江戸時代の書店の話。
    店じまいをしようと思っていた日本橋の書店の50代店主に、吉原の書店の若い店主が声をかけ、新しい本を出版していく。

    歌麿や写楽など実在の浮世絵師なども登場し、松平定信の倹約令による出版の規制など、どこまで史実を書いているのかは不明ですが、面白いです。

    最後には、人生って、生きる意味って、なんでしょうね。とも思わせてくれます。

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著者プロフィール

1986年東京都生まれ。2012年『蒲生の記』で第18回歴史群像大賞優秀賞を受賞。2013年『洛中洛外画狂伝』でデビュー。2018年『おもちゃ絵芳藤』で第7回歴史時代作家クラブ賞作品賞を受賞。演劇の原案提供も手がけている。他の著書に『吉宗の星』『ええじゃないか』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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