健全な肉体に狂気は宿る ――生きづらさの正体 (角川oneテーマ21) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • しなやかさのある内田樹さんの言葉が好きで、できるだけ読みたいと思ってる。「しなやかさのある言葉」とは、身体性と心理の相互関係を表現する解像度の高い言葉のことだ。内田さんのような「自分の言葉」を持つ人に接すると、フレームワーク(型)にハマってカチコチになってしまっていた自分の思考をマッサージされる感覚になる。

    という思いで本書を手に取ったが、結論を言えば、残念な内容だった。

    「対談企画」を面白くするのは、そもそも難しい。特に初対面であったり、今後も長くいい関係を続けたいと願うふたりであれば、予定調和のコンフォートゾーンから抜け出そうなんてリスクは取らない。対談企画の価値よりお互いの関係の方が大事だからね。
    一方で、自分の中では使い慣れた思考と言葉であっても相手のそれと化学変化を起こすことで思わぬ方向への話題がジャンプすることもある。ひな壇芸人らの神回のようなもので瞬発力ある語り手と生放送などの強い圧力があるとハプニング的に発生することが多い。

    前置きが長くなってしまった。本書の話に戻す。
    何が残念だったかと言うと、「昭和の価値観」というコンフォートゾーンからふたりとも出ようとしないのが残念、、、というか、もう痛々しかった。ふたりとも「(ドクターおよび教授である)自分だけが常に正しい病」にかかってしまっている。「ウルサガタ」と煙たがれるシニア層の典型だ。弁の立つ保守派の論客を新しい価値観に転向させるのは難しいし、自分も保守側に共感している、となれば互いに同調し合う他なくなる。僕が編集者ならこの時点で修正入れるか、企画を中断するな。

    唯一、春日武彦さんのあとがきはよくまとまっていて良かった。
    ・物事を保留(ペンディング)しておける能力
    ・秘密を保てる能力
    ・物事には別解があり得ると考える柔軟性
    ・自分を客観的に眺められる能力

    ひとつ目について補足すると、複雑な事象を簡略化したり切り捨てたりせず、一旦、複雑なまま受け入れようとする姿勢が重要ということ。生存戦略としての「中腰姿勢」。ネガティブ・ケイパビリティやレジリエンス、中動態といったコンセプトでも語られる文脈だ。

  • 精神科の先生との対談。2人とも世界観のある方なので、個別の話も面白いのですが、合わせてまとまっていくのはコミュニケーション能力を感じ、だからこそどんな人でもぶつからずにこういう本はまとまっていくのだなと感じた。
    時間の感覚についての話が興味深かったです。

  • いつもの内容でした。

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著者プロフィール

1950年東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。神戸女学院大学を2011年3月に退官、同大学名誉教授。専門はフランス現代思想、武道論、教育論、映画論など。著書に、『街場の教育論』『増補版 街場の中国論』『街場の文体論』『街場の戦争論』『日本習合論』(以上、ミシマ社)、『私家版・ユダヤ文化論』『日本辺境論』など多数。現在、神戸市で武道と哲学のための学塾「凱風館」を主宰している。

「2023年 『日本宗教のクセ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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