『俺のイタリアン』を生んだ男 「異能の起業家」坂本孝の経営哲学 [Kindle]

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  • クリーク・アンド・リバー社
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  •  ブックオフと俺のシリーズの創業者。さすが。半端ない。

     ところが、ブックオフのオープン当時、なかなか古本を打ってくれる人が集まらなかった。坂本達は、「売ります、買います」「古書高値買い入れ」というチラシを作ったが、まったく効果がなかった。困り果てたある時、坂本はふと気付いた。「本を買うというキャッチコピーは今までの古本屋と一緒ではないか?」という問いを立てたのである。あれ程、否定した古本業界のやり方を無意識のうちになぞっていたことに気付いたのだ。これでは、お客はブックオフの新しさに気が付かない。そこで、「古本」を「読み終わった本」にして、偉そうな「買い入れ」を「お売り下さい」に変えた。キャッチコピーを「読み終わった本、お売り下さい」に変えた途端、すごい勢いで本が集まりだしたのだ。

     この苦い失敗から、坂本は「販売の仕方に革新的なものがあるか?」「既存のお店と同じ技術で、同じようなものを売っていないか?」という問いを大事にするようになった。その教訓は中古ピアノの販売に生かされた。

     坂本は自社の競争優位性を「コンビニにない、家庭では食べられない、通販で買えない、出前してもらえない」と表現している。

     坂本が師事する盛和塾塾長の稲盛和夫は常々、「トップとなる者は『人たらし』であれ」と塾生に説く。盛和塾生の石塚は、「坂本さんは天性の人たらしだと思います。お酒が好きで、周囲をびっくりさせるようなアイディアマンで、話も発送も楽しい」と語る。

     ビル・ゲイツはマイクロソフト経営者時代に「シンク・ウィーク(考察期間)」と名付ける習慣を作っていた。経営者として膨大な作業や情報にさらされるなか、社内外との連絡を一切絶ち、会社の将来テーマに関する論文や提案書をひたすら読み、思考を続けるというものである。合議制で物事を決めても、良い決断はできないという発想がシンク・ウィークの根底にある。

     坂本がよく使う「動物園の猿山のボス猿になる条件」というたとえがある。ボス猿になる条件は、「異性にもてること」「喧嘩が強いこと」、そして「喧嘩の仲裁がうまいこと」の三点である。この「喧嘩の仲裁がうまいこと」が肝心だ。単に喧嘩をやめさせるだけでなく、喧嘩した二人の関係をその後良くすることが大事ということである。

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著者プロフィール

神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科教授1984年東京大学法学部卒業、1990年ニューヨーク大学MBA、2005年早稲田大学アジア太平洋研究科博士後期課程修了、博士(学術)。1984年野村證券入社、ニューヨーク現地法人などに勤務。モルガン・スタンレー証券バイス・プレジデント、ゴールドマン・サックス投信執行役員、複数のベンチャー企業の立ち上げ・経営に携わり、2005年東京工科大学教授、2015年から神戸大学教授。専門はベンチャー経営、オープンイノベーション 。経済産業省、環境省、沖縄県、経済同友会などの委員を務める。著書に『次世代環境ビジネス』(日本経済新聞出版社)、『環境ビジネス5つの誤解』(日経プレミアムシリーズ)『『俺のイタリアン』を生んだ男 「異能の起業家」坂本孝の経営哲学』(IBCパブリッシング)などがある。

「2018年 『新たなる覇者の条件 なぜ日本企業にオープンイノベーションが必要なのか?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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