ちーちゃんはちょっと足りない (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ もっと!) [Kindle]

  • 秋田書店 (2014年5月8日発売)
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  • 「ちーたちいっつも足りないから!いいやつだからちーもいいことしてやりたかっただけなのになんで!」
    ー第7話のちーちゃんのセリフより

    ちーちゃんは足りない。頭が悪くてテストの点も足りない。お家が貧乏だからお金も足りない。お小遣いもすぐ無計画に使っちゃうからいつも足りない。
    そんなちーちゃんと同じ団地に住む幼馴染で、いつも一緒のナツも足りない。ちーちゃんほど足りないわけじゃないけど、特別頭がいいわけでもないし特別性格がいいわけでもないし、お金もない。足りない自覚がちーちゃんよりもあるから、足りない自分をいつもクズだと考えてしまって苦しい。
    そんな二人と一緒にいつもいる、頭が良くて一軒家に住んでて、家族旅行でグアムに行けるくらいにはお金があって、直情型の旭や、他にもちーちゃんをあやしてくれる心優しいクラスメイトなど、登場人物が様々出てくるが、主にこの物語に焦点が当たっているのはちーちゃんとナツだろう。

    独特の絵柄ながら読みやすい物語。
    ほんとスルッと読める漫画です。
    話の展開は若干重め。でも必要な重さだと思う。
    足りないよ、足りなくて苦しいよと思っている中高生や大人にぜひ読んでほしい漫画だ。
    学校の図書館に置いてほしい。ナツみたいな子の救いとなる漫画かもしれない。
    続きが、続きが気になるのが心残りなんですけどね。
    このあとナツはどうなるんだろうという。
    この世に多いのは圧倒的にちーちゃんよりもナツみたいな子なんだよなぁ。と思う。
    登場人物のひとり、ヤンキーの藤岡の、
    「何もないとか言うなよな 私だって欲しいものがたくさんあるけど手に入らない みんなそうだ」
    「ちょっと足りなくたって どうだって楽しんで生きていけるだろ」
    は名言だ。
    できればナツに聞いて欲しかったセリフだが…
    どういった経緯でこのセリフが出てくるのか。
    ぜひ読んでみて欲しい。噂に違わず、いい漫画だから。
    この世界は苦しい。いつだって誰だって何かが足りない。足りないがすぎると呼吸も危うくなる。
    でもほんの少しかもしれないけど、優しさが、ちょっと足りなくても生きていけると思える何かが、隣にあるのを忘れないで。
    そう思わせてくれる漫画でした。

  • 主眼の置き方で考えるべき論点がまったく異なる。その意味でとても難しい。
     この作品には主人公が二人存在する。一人称で登場するナツとタイトルにも出てくるちーちゃん。
     ナツに主眼を置くのならば、非常にスタンダードな中学生の自意識の物語。劣等感、疎外感、孤独感、いらつき、怒り、後悔、友情、異性、家族。日々のちょっとしたことに反応し思い悩み浮き沈みして頭ぐちゃぐちゃの典型的な中学生日記。そういう視点でみると、ナツのモノローグ、周囲との距離感と関係性、そしてその変化といった表現のうまさがひかる。おそらく人によっては抉られるような痛みを感じながら読む人もいるかもしれない。
     もう一方のちーちゃんに主眼を置いた場合、この作品はその性質をがらっと変える。このちーちゃん、明言はされていないものの、明らかに発達障害の少女として描かれている。中学生で九九ができず、周りの空気も読めない、一人で遠出することも不可能。のび太やカツオがテストで0点を取るようなマンガ的表現ではない、タイトルの通り現実に「足りない」女の子。そういう子がクラスにいることは公立の小中学校に通った者にとってはそう珍しいことではない。しかし、いざマンガの中で明示的に表現するとなると、これはかなりのインパクトがある。暗黙のうちにスルーされてきた現実に思いがけず遭遇してしまう驚き、本書が話題になったのはこの面が大きい。
     しかし、このちーちゃんの存在によって、どちらに主眼を置いたとしても中途半端になってしまっているように思う。ナツに主眼を置くなら、ちーちゃんが悪目立ちしすぎ。タイトルに「ちーちゃん」と入れてしまうこととナツに主眼を置かれることとが整合しない。もっとストレートにナツの側から描くほうがきちんとできたはず。
     一方のちーちゃんを主眼におくなら、まさに「ちょっと足りない」という事実そのものが中心的なテーマとなる。そして、それは一応のところ成功しているように見える。が、ちーちゃんが中学生の女の子だということだけで、相当なものが割り引かれてしまっている。ちーちゃんが「ちょっと足りない」のだとしても、中学生の女の子であるというだけで社会からは受け入れやすい。少なくとも、社会と軋轢もなく受け入れられている描写を違和感なく書くことが圧倒的に容易なのは間違いない。だが、それが45歳の男性だったなら果たしてどうなのか。「ちょっと足りない」おっさんを社会はどう扱うのか。「ちょっと足りない」ことがテーマとするならば、そこまで言及すべきだと思う。それを中学生の女の子ということでごまかしてしまった感は否めない。

  • ちーちゃんは知能が足りてない。なつは自他受容力が足りてない。幸い私には刺さらなかった。だから感想も全然湧かない。「辛そうな考え方で生きてて大変そうだな...」と完全に他人事。理想の自他を肯定して、現実の自他を否定する行為は、自尊心を満たす代わりに、他者への尊敬と自他肯定感を減らす自殺促進行為である。
    なつが「足りない」を減らしたいなら、第一に前述したことを認識しなければならない。それができない場合、彼女を癒してくれるのは「不幸な自分への酔い」や「自分とちーちゃんを比較したときの優越感」くらいしかない。このままだと近いうちに、「ちーちゃん。一緒に死のう」なんてことを言いだしそう。それに対し、ちーちゃんは「へ? やだ。痛いのやだ」と子供じみた返答をしそう。その返答は、なつを慰めるだろう。一見、なつがちーちゃんの唯一無二の支えになっているように見えるが、実は逆で、ちーちゃんがなつの唯一無二の支え。
    「私はちーちゃんよりまし」と思える期間がいつまで続くのか。ちーちゃんに彼氏ができたりして、その期間が終わったときが、なつの第二ラウンド。そこをどうやって乗り越えるのかは少し見てみたい。

    本編の内容とは関係ないが、なつの顔、振る舞い、言動等が昔振られた人と被り、そのときの自分の対応が蘇った。惨めで、恥ずかしくて、奇声を上げてしまいそうになった。今思うと、その反応はその時の自分を肯定できてない証拠である。私もまだまだなつを笑えない。自分の過去や現在の肯定は、今回のように否定していることを認識できた際に、その都度行っていく必要がある。

    なつがみーちゃんの言動を受けて嘆きながら行う丁寧で真摯で真面目な心から絞り出したようなツッコミはとても好き。というかそれがないと、ちーちゃんの奇行がツッコミ不在のまま永遠に繰り返されるから、読めたもんじゃない。なつの存在は、この漫画を読み切るために不可欠で、癒しだった。
    「さっきちーちゃんがやったのと、全く同じ問題だよ!」とか。
    「割り算は大人リーグ一軍フルイニング出場だよ!」とか。
    そのツッコミを行う瞬間の間、相手を自分と対等と思っていないとそうゆうツッコミはできない。よつばに対する風香のツッコミ(よつばと)、ゆっこに対するみおちゃんのツッコミ(日常)と同じ系統のツッコミだと思う。

  • 作者の別作品を読んでちょっと興味を持ったので、こちらも読みました。
    正直、序盤は退屈でした。絵柄もギャグも他にない特徴はあるが、特にいいというわけでもない。
    ただ、中盤で急転直下、本編が始まる。
    それはよくできたホラー作品より、なお恐ろしい内容です。
    絵空事ではない人間心理に精通し、それを再構築し物語として表現されてある。
    なにより(本来の意味で)凄まじいのは、それが普遍にある感情ばかりなこと。
    どうやら異常性を感じて嫌悪を抱く人もいるようですが、全く逆ですね。
    非常にどす黒い、見て嫌になる感情ばかりですが、どれも誰もが心の奥底に閉じ込め、普段見ないようにしている感情ばかりです。
    もしも試し読みで冒頭部だけ読んで「なーんだ」と投げてしまっているなら、是非最後まで読んだ方がいい。
    高い評価に違わぬ傑作で、作者の本領発揮を見ることができます。
    本当に人が恐れているものを、きっと見ることができるでしょう。
    そこから逃げ出すか、それとも別のレッテルを貼って自己防衛するかはあなた次第。
    勘のいい人は気づくでしょうが、それはこの作品の真の主人公と同じことをしている。
    そういう、真に恐ろしい物語が練り上げられています。
    できることなら、また、是非こんな作品を描いて欲しいですね。

    ちょっとだけ内容の補足。
    タイトルはダブルミーニングで、一つは序盤の主人公についてのそのままの意味。もう一つは、真の主人公の主観です。
    序盤の主人公は恐らく軽度の知的障害ですが、それでも我慢しよう、という無意識の恐ろしい意図がある。
    しかしその残酷さ、自分本位さこそ口には出さないが普遍にある心理です。
    溺れる者は藁をもつかむ、といいます。
    誰しも藁よりボートがいいし、ボートよりクルーザーに憧れるに決まっている。特に、精神的に未熟であるなら。
    それでも藁しか目の前にないのなら、内心では不服でも生存のため必死になるのです。

    真の主人公の、そして読者(!)の薄汚さを浮き立たせるため、他のキャラは一見悪そうだが実は…という性格設定ばかりになっている。
    ここの部分が物語中で一番リアルさを欠き、それだけに作話の狙いがよくわかります。
    真の主人公は、決して異常者などではありません。
    どこにでもいる普通の「いい人」です。
    この残忍さこそ、この作品の最高の味付けですね。

  • 「よつばと!」を読んでる身としては、受け入れ方がむずい。
    というか、あざとさ先にきちゃう。設定が、中学生であること、発達に遅れがあること。その前提があるから、まわりの女の子たちの生活環境や気持ちの変化の描写が、着地点だけを見据えた性急なものにみえてしまって。。。
    タイトルのダブルミー二ングはすばらしいと思います。

  • YouTubeで「精神トラウマ注意」みたいな感じのまとめを見たことで作品を知り、気になりすぎてKindleで購入しました笑

    どこかのサイトで「まどマギ見た時みたい」的な感想がありましたが、

    きっとのほほんとした絵柄と、作品で扱っているテーマと内容のギャップが、まどマギを彷彿とさせたのではないかと思っています。

    普通のキラキラ漫画では足りん!と思っていた私は、中高時代「ライチ光クラブ」「捏造トラップ」この辺りを好んで読んでましたが、ジャンルの特性もあると思いますが、やっぱりなんだかんだそれっぽく、綺麗に終わってしまう。

    破滅かハッピーエンドか分からんが、フィクションとして綺麗にまとまってしまって、読後、いったい現実の私はどうしたら、、、と虚しくなってしまってました。

    本作は、そこのフィクション的な虚しさは少なく、にも関わらず、しっかり重くて、当時の私はものすごく救われただろうなと思う作品です。

    冒頭は、らきすたみたいな女子高生のゆるーい日常から始まりますが、ナツの学校での交友関係が徐々に良くない方へ解釈が進んでいく様が生々しかったです。。。

    個人的にはナツの周囲との比較による劣等感や足りない感に共感してしまう所が多々あり、ここまでかける作者何者…って感じでした。

    余談ですが、私は太宰治の「駆け込み訴え」のユダの解釈が本当に、自分なんじゃないかと思うほど、こんなに私の気持ちをわかってくれる人はいない、と衝撃を受けました。

    ぶっちゃけ本作は、太宰治以来の衝撃でした笑

    私も学生時代、ナツと同じような気持ちになったので、当時読んでいたらヤバかっただろうな、と思います…笑

  • 衝撃。この作者の漫画読むのはこれが初めてだけど、表現力が高すぎる。曖昧な部分は曖昧に、でも読者に感じ取らせたい事はしっかり描き切られていてえぐかった。ナツの情緒が文字読まなくても伝わってくる。画面の作り方が上手すぎる。

  • 感覚

  • 螟ゥ辟カ縺ィ縺?≧縺九?√♀鬥ャ鮖ソ縺ェ螂ウ縺ョ蟄舌?√■繝シ縺。繧?s縺ョ縺サ縺ョ縺シ縺ョ縺励◆繝槭Φ繧ャ縺九→諤昴▲縺ヲ縺溘i窶ヲ縲ゅ>繧??縲√■縺後>縺セ縺励◆繧上?りイァ蝗ー縺ィ縺九?√せ繧ッ繝シ繝ォ繧ォ繝シ繧ケ繝医→縺九?√>繧阪>繧阪→閠?∴縺輔○繧峨l繧句?螳ケ縺ァ縺励◆縲よ兜縺偵▲縺ア縺ェ縺励ず繝」繝シ繝槭Φ縺」縺ス縺?¢縺ゥ縲∝、峨↓迚ゥ隱槭r縺セ縺ィ繧√※縺ェ縺??繧ゅ?√°縺医▲縺ヲ迴セ螳溷袖縺後≠縺」縺ヲ蠢?′逞帙¥縺ェ縺」縺溘?

  • 噂に聞いていた通り、ラストの展開が印象に残る。心えぐられる人も多そうだね。狙ってやってそうやなー。

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