知識創造企業 [Kindle]

  • 東洋経済新報社
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感想・レビュー・書評

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  • 【読書記録用の個人の感想です】

    ■マーカー箇所の要約memo
    ・知識創造の3つの特徴
    1. 表現しがたいものを表現するために、比喩や象徴が多用される
     └メタファーとアナロジー
    2. 知識を広めるためには、個人の知が他人にも共有されなければならない。
     └個人のイニシアチブとグループレベルでの相互作用
     └チームメンバーは対話や議論を通じて新しい視覚を創り出し、この対話では、意見の衝突や不一致がかなりあってもよい
    3. 新しい知識は曖昧さと冗長性のただなかで生まれる
     └曖昧さはときに新しい方向感覚の源泉として有意義であるばかりではなく、物事に新たな意味を見出し、新しく考え直すきっかけにもなる
    ・知識は情報と違って、「信念」や「コミットメント」に密接に関わり、ある特定の立場・見方・意図を反映している。我々は知識を「個人の信念が人間によって真実へと正当化されるダイナミックなプロセスと見るのである。
    ・知識変換の4つのモード
    1. 共同化→共感知
     └経験を共有することによってメンタルモデルや技能などの暗黙知を創造するプロセス
     └暗黙知を獲得する鍵は共体験である。
     └相互作用のフィールドを作ることから始まる。この場ではメンバーが経験やメンタルモデルを共有するのを促進する。
    2.表出化→概念知
     └暗黙知を明確なコンセプトに表すプロセス。暗黙知がメタファー・アナロジー・コンセプト・仮説・モデルなどの形を取りながら次第に形式知として明示的になっていくという点で知識総合プロセスのエッセンスである。
     └表出化は典型的にはコンセプト僧帽に見られ、対話すなわち共同思考によって引き起こされる。コンセプトを創り出すために頻繁に使われるのは、演繹法と帰納法の組み合わせである。演繹法あるいは帰納法によってあるイメージに適当な表現を見つけることができないときは、非分析的な方法を使わざるをえない。メタファーやアナロジーを使いながら行われる。
    3.連結化→体系知
    └連結化とはコンセプトを組み合わせて、一つの知識体系を創り出すプロセス
    └新しい知識と組織の他部署にすでに存在する知識を結合することよって引き起こされ、新しい製品・サービス・経営システムとなどに結実する
    4.内面化→操作知
    └内面化とは形式知を暗黙知へ体化するプセロセス。行動学習と密接に関連している。
    └内面化にとって極めて重要なことは体験の範囲を拡大することである。
    ・知識創造を促進する条件
    1.意図:どのような知識ビジョンを創り出し、それを経営実践システムに具体化すること
    2.自律性
    3.ゆらぎと創造的なカオス
    4.冗長性
    5.最小有効多様性
    ・ミドルアップダウンマネジメント
    └ミドルマネジャーは組織地を創造し変換する人、またそのプロセス全体を促進する人、そして変化をもたらす人と見ることができる。組織内部の相互作用の中心に一して、直接的な対話を促すのである。
    └総合的カオスをマネージする最も効果的な方法
    ・ナレッジクリエイティングクルー
    ①ナレッジプラクティショナー
    └暗黙知と形式知の両方を蓄積し、創造すること。
    └暗黙知を扱うナレッジオペレーター:第一線社員やラインマネジャーなどビジネスの現実に最も近いところに位置している。
    └主に形式知を扱うナレッジスペシャリストに分けられる。伝達可能な技術的・科学的など量的データの形で構造化された知識を取り扱う。
    └理想的なナレッジプラクティショナーは、行動な知的水準・自分の物の見方に応じて世界を創る変えることへの強いコミットメント・会社の内外での様々な体験・顧客や同僚との対話技術・率直な議論をするための度量が必要。
    ②ナレッジエンジニア
    └トップが持っているビジョンの理想と現実を繋ぐ橋。ミドルマネジャーはここ。
    └有能なナレッジエンジニアは調整能力・仮説設定技能・手法の統合技能・対話のためのコミュニケーション技能・言語化の促進技能・信頼感の醸成・将来予測能力を持っている。
    ③ナレッジオフィサー
    └企業レベルでの組織的知識総合を全体にマネージすること。
    └理想的な資質としては、知識ビジョンを創り出す能力・企業文化を理解させる能力・知識の質を正当化する能力・リーダーを選ぶ直感的な能力・カオスを創り出す思い切るのよさ・メンバーからコミットメントを引き出す能力・全体プロセスを指揮管理する能力。
    ・ハイパーテキスト型組織:
    ①ビジネスシステム:レイヤーの真ん中。通常のルーティン業務
    ②プロジェクトチーム:レイヤーの一番上。いくつものプロジェクトチームが知識創造活動に従事している
    ③知識ベース。企業ビジョン・組織文化・技術の中に含まれる
    組織的知識総合のプロセスは、知識がこの3つのレイヤーをめぐるダイナミックなサイクル。違った知識文脈のあいだを柔軟にすばやく移動しながら知識のダイナミックサイクルを作り出す能力ことが、結局組織の知識創造能力を決める。
    ・実践上の提言
    ①知識ビジョンを作れ
    ②ナレッジ・クルーを編成せよ
    ③企業前線に濃密な相互作用の場を作れ
    ④新製品開発のプロセスにあいのりせよ
    ⑤ミドルアップダウンマネジメントを採用せよ
    ⑥ハイパーテキスト型組織に転換せよ
    ⑦外部世界との知識ネットワークを構築せよ

    ■感想
    組織開発を勉強していて一番疑問だったのが「これはビジネスシーンにおいてどのように役立つのだろうか」ということだった。「対話が大事そうなのはなんとなく分かるけど、一体何に…?」という感じ。まぁ、やっている中で効果があることも多々あったけど、アカデミックな観点でのつながりが不明な感じ。
    SECIモデルは有名理論なので概要は知ってはいたものの、改めて読んで、ここが繋がったのが良かった。また、繋がりが理解できたことで、より意図的に動かすことができそうなイメージがついた。
    SECIモデル以外の箇所についても、今後より理解が必要になっってくるので、定期的に読み直そー。

  • 日本の経営学者で世界で評価されている数少ない先生の名著です。ナレッジマネジメントというと、ITを使った暗黙知を形式知化するツールの話かと思う人もいるかもしれませんが、そうではありません。知識は暗黙知と形式知の間の絶え間ない変換によって創造され、その変換プロセスを「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」の4つの変換モードからなるとし、それをスパイラルアップして知識レベルが高まるとした「SECIモデル」を提唱しています。また、トップダウンでもなくボトムアップでもない、ミドルマネージャーが経営トップと第一線の現場を結び付けて成功に結びつける「ミドルアップダウン」も提唱しています。ちょっとアカデミック過ぎ?とも思いますが、野中先生は有名なのと、ナレッジマネジメントは知っておくべきと思うので、読んでみる価値は高いと思います。もっと簡単に野中理論を知りたいという方には、「知識経営のすすめ」(筑摩新書)というエッセンス的な本もありますので、そちらを。

  •  古き良き日本といった感じ。西洋哲学と日本文化の違いから導入するのはいかにも冗長的で本質とは離れているのではと感じるが、論文として説得力をもたせるための手段としては理解できる。

     本書では日本企業のミドルマネージャーに焦点をあて、彼らの「暗黙知の共有化と形式知化」「トップビジョンの現実化」「プロジェクトの調整管理」機能こそが日本企業の強みだと分析している。
     
     「ビジョンの浸透と実行」(ビジョナリーカンパニー)「ナレッジの共有と自己学習」(学習する組織)等、最近の経営学でも焦点の当てられる特徴を早くから取り上げており、先行研究として大変価値あるものである。一方のところ、なぜそれが「ミドル」なのかという研究が古い。日本の大企業で働く身としての主観にはなるが、ミドルに与えらる権限の範囲でこれらを実行しようとすると、根回しや調整ごとに時間がかかりすぎてビジネスとしてなりたたない。ビジネスモデルの変遷時に(外部との人材の交流がない前提で)「現場で認識」→「ミドルが把握、根回し」→「トップ層のビジョンの変更」→「ミドルによる解釈の変更」という過程を経ていては、そもそもビジネスがなくなるように思われる。ここが昨今の日本企業の弱さなのではないだろうか。

  • 中間管理職こそ組織的知識構造の増幅機能を果たす

    中間管理職、あまりいいイメージはありません。上から無茶を言われ、下から好き勝手なこと言われ、ただただ板挟みになっているようなイメージです。存在意義とは何だろか、と考えることもありますが、本書のように暗黙知と形式知の橋渡しを担うと言われると、少しは合点がいきました。

    自分にはできるでしょうか。膨大な仕事に埋もれて存在意義を忘れないように、暗黙知と形式知の橋渡し、意識したいと思います。

  • 事例が昭和。変わらんこともある気がするよ。

  • 20114/05/06 
    単行本¥2160→Kindle¥599

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著者プロフィール

野中郁次郎
一九三五(昭和一〇)年、東京に生まれる。早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造株式会社勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にてPh.D.取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校社会科学教室教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授などを歴任。一橋大学名誉教授。著書に『組織と市場』、『失敗の本質』(共著)『知識創造の経営』『アメリカ海兵隊』『戦略論の名著』(編著)などがある。

「2023年 『知的機動力の本質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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