外国人投資家の視点 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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    日本企業の在外支店及び現地法人は非居住者になるため 、外国人に含まれる

    外国資産運用会社は日本の投資家の資金も運用受託しているが 、資産運用会社は証券会社への株式売買の発注の際に 、資金の性質を明かす必要はないので 、外国資産運用会社からの注文であれば 、外国人投資家とみなされる 。

    J Pモルガン ・アセット ・マネジメントは世界最大級の金融持株会社である J Pモルガン ・チェ ース ・アンド ・カンパニ ー傘下の資産運用会社で 、運用資産 1 2 4兆円 、世界各地に 2 2拠点をもつ 。同社は 1 0 0年以上の歴史がある米国の大手銀行だった J Pモルガン 、チェ ース ・マンハッタン銀行 、米国の大手地銀のバンク ・ワンやファ ースト ・シカゴ銀行 、欧州やアジアでの資産運用に強かったジャ ーディン ・フレミング投信 ・投資顧問などが統合

    ブラックロックは 1 9 8 8年に設立された債券専門の運用会社のブラックロックが 、 2 0 0 6年にメリルリンチの資産運用部門であるメリルリンチ ・インベストメント ・マネジャ ーズと合併してできた会社であり 、運用資産は 1兆ドル ( 1 1 5兆円 )超である 。

    投資家が純投資型である場合 、株主名簿には信託銀行 (いわゆるカストディアン )名義での記載が多く 、実質的な株主が誰なのかわかりにくい 。

    チェ ース ・マンハッタン ・バンクとステ ート ・ストリ ート ・バンクは外国人投資家がよく使うカストディアン 、日本トラスティ ・サ ービス信託銀行と日本マスタ ートラスト信託銀行は日本の機関投資家がよく使うカストディアンである 。

    カストディアンは証券の保管業務 、元利金 ・配当金の代理受領 、預かり運用資産の受渡し決済 、運用成績の管理などを行なう 。

    5 %大量保有報告制度は実質名義で提出しないといけないので 、 5 %以上保有した投資家が誰かはわかる 。

    外国人の業種別保有状況をみると 、
    2 0 0 7年 3月末の業種別の外国人保有比率は 、
    ①その他金融の 3 6 . 8 % 、
    ②証券の 3 6 . 7 % 、
    ③医薬品の 3 5 . 9 % 、
    ④保険の 3 5 . 8 % 、
    ⑤電機の 3 4 . 6 % 、
    ⑥不動産の 3 4 . 4 % 、
    ⑦その他製品の 3 3 . 2 % 、
    ⑧精密の 3 1 . 9 % 、
    ⑨輸送機の 3 0 . 7 % 、
    ⑩海運の 3 0 . 0 %の順に高い 。
    外国人保有比率が高い業種は 、外国企業の子会社が多い業種や 、国際競争力がある業種などが多い 。
    逆に 、外国人保有比率が低い業種は 、
    ①空運の 8 . 5 % 、
    ②鉱業の 1 2 . 4 % 、
    ③紙パルプの 1 6 . 6 % 、
    ④電気 ・ガスの 1 7 . 2 % 、
    ⑤水産 ・農林の 1 7 . 3 %の順である 。
    外国人保有比率が低い業種は 、規制業種や経営が評価されない業種が多い 。

    米国の投資家は 、米国以外の株式をまとめてグロ ーバルに運用していることが多く 、 M S C I ( M o r g a n S t a n l e y C a p i t a l I n t e r n a t i o n a l )の E A F E ( E u r o p e , A u s t r a l i a , F a r E a s t )と呼ばれる世界株価指数をベンチマ ーク (目標とする運用対象 )にすることが多い 。米国の投資家は資金規模が大きいうえ 、日本株だけでなく 、欧州株やアジア株も一緒に運用していることが多いので 、日本株の運用は大型株が中心となり 、中小型株まではあまり手が回らない 。大企業の国際競争力やバリュエ ーションの国際比較を重視する 。

    米国の投資家はボトムアップ運用 、バリュ ー投資家が多いという特徴がある 。

    米国の投資家は株主重視の考えが極めて強く 、アクティビスト ・ファンドが多いという特徴もある 。米国の投資家は M & A (企業の合併 ・買収 )への関心も高く 、 R O E (株主資本純利益率 )を重視する 。

    欧州の投資家は 、英国を中心に日本株専門家も多いため 、米国の投資家よりは日本に対する知識水準が高く 、中小型株への興味が高かったり 、トップダウン型の投資家が多いという特徴がある 。

    アジアの投資家の華僑などは 、日本のネットトレ ーダ ー並みに投機的な投資家もいる 。米国の機関投資家が企業業績を重視し 、株価が適切と考えるファンダメンタルズ ・バリュ ー (公正価値 )へ回帰するのを辛抱強く待つ一方 、アジアの投機的な投資家には 、ファンダメンタルズはあまり重要でなく 、かればいいという投資家もいる 。中国の株式や不動産投資で大金をけた華僑にとって 、日本の資産は安くみえるようで 、最近日本株に関心を示す中国系の投資家が多い 。

    外国人による日本株投資で 1企業の株式を 1 0 %以上取得する場合には 、国際収支統計上は証券投資ではなく 、直接投資に分類される 。日本は諸外国に比べて 、対外直接投資ばかりが多くて 、対内直接投資は極めて少ないという問題があった 。 2 0 0 6年は対外直接投資が 5 . 8兆円もあったのに対し 、対内直接投資は 7 , 5 7 0億円の流出になった 。 2 0 0 7年には対内直接投資が増えたものの 、依然として対外直接投資の半分以下という状況に変わりはない 。 2 0 0 7年上期の個別案件で 、米国シティグル ープによる日興コ ーディアルグル ープへの投資額が大きかった 。

    日本政府は投資を促すため 、 2 0 1 0年の対内直接投資残高を G D P比で 2 0 0 6年末の 2倍の 5 %にする目標を設けている 。 2 0 0 6年の直接投資残高の G D P比は英国 3 7 % 、ドイツ 1 8 % 、米国 1 3 %に対し 、日本はわずか 2 %に留まる 。諸外国でも対内直接投資は経済効率化や経済成長に寄与してきたことが知られており 、日本も対外資本に対するオ ープンな政策が求められる 。

    人口動態に注目する投資家は英語で “ 〝 D e m o g r a p h i c i n v e s t o r ” 〟と呼ばれ 、同名の本も出版されている 。外国人投資家は人口動態に対する関心が高い 。人口動態は個人消費や不動産価格に影響を与えるし 、日本は世界一のスピ ードで少子高齢化が進展しているので 、日本の事例を研究することは 、日本より遅れて少子高齢化が進んでいる他先進国への投資にも活かせるためだ 。

    東証 3 3業種中で 、不動産は 2 0 0 6年度に外国人投資家の保有額が最も増加した業種で 、外国人保有比率は前年度末の 3 1 . 2 %から 3 4 . 4 %へ上昇した 。大手の三井不動産では外国人保有比率が 4 7 . 7 % 、三菱地所では 4 1 . 2 %まで上昇した 。丸の内の不動産含み益が大きい三菱地所は 、外国人投資家による買収を恐れて 、 2 0 0 7年 5月に買収防衛策を導入した 。外国人投資家が日本の不動産価格は国際比較で割安と考えたうえ 、日本の内需拡大や東京への人口流入で 、都心部を中心に不動産価格の上昇が続くと期待したためである 。

    日本株の先行きを考える際には 、世界景気の先行指数が重要である 。 O E C D景気先行指数は世界景気の先行指数であり 、 T O P I Xとの相関係数も高いが 、発表が遅い (例えば 、 2 0 0 7年 9月の O E C D景気先行指数が発表されたのは 1 1月 9日だった ) 、景気先行指数の 1系列に株価指数が含まれるため 、株価で株価を説明してしまうという自己矛盾がある 。

    先進国の中で 、日本は中国に最も近い隣国であり 、経済のみならず 、軍事や環境面でも中国の影響を受けやすい 。日本は今後 、長期にわたって 、巨大化して世界的に影響力を増す中国に対処していかなければならない 。

    外国人投資家と日本株について議論する際に 、常にアジアの中の日本という視点が必要になってきた 。中国株の P E R (株価収益率 )は約 4 0倍に達し 、バブルの可能性が高いだろう 。上海株の急上昇の影響を受けて 、香港株の P E Rも東証を上回ってきたが 、韓国など他アジア市場の P E Rはまだ日本株より低い市場が多い 。アジアにはオ ーナ ー系企業で 、株主の利益と経営者の利益が一致し 、文字通りの株主重視の経営を行なっている企業が多い 。情報開示は日本企業の方が優れているが 、株主重視の経営では 、日本企業もアジア企業を見習うべき面がある 。

    北京市の G D Pが中国全体の G D Pに占める比率は 4 %程度であり 、東京が日本全体の G D Pに占める比率やソウルが韓国経済全体の G D Pに占める比率に比べて極めて低い 。

    オ ープン経済を掲げた安倍前内閣は 、 2 0 0 7年 5月にアジア ・ゲ ートウェイ構想をまとめた 。政府の文書は楽観的になりやすいが 、同構想は日本の将来に対して 「アジアにおいて日本が唯一の巨人である時代は終わったことを明確に認識する必要がある 」という厳しい認識を示した 。アジア ・ゲ ートウェイ構想は 「日本の将来像をアジアと世界の架け橋となるゲ ートウェイ国家として示し 、社会の開放のスピ ードを加速化し 、近隣諸国との絆を強化することで 、日本はアジア諸国と繁栄を共有することができる 」とし 、アジアとの経済関係の強化を通じて 、日本経済の成長を維持する目標を掲げた 。安倍前内閣が 1年も持たずに退陣してしまい 、アジア ・ゲ ートウェイ構想は持続性が危ぶまれた 。

    2 0 0 6年度に日本の全輸出の 2割強が中国 (香港を含む )に向けられたのに対して 、
    ロシア向けはわずか 1 . 2 % 、
    インド向けは 0 . 8 % 、
    ブラジル向けは 0 . 5 %に過ぎなかった 。
    但し 、輸出伸び率をみると 、ロシア向け輸出が前年比 5 9 %増 、インド向けが 3 6 %増と 、中国向けの 2 1 %増を上回った 。

    英国を訪れる企業経営者やアナリストはロンドンのみならず 、スコットランドのエジンバラを訪れることが必須である 。エジンバラはロンドンに次ぐ資産運用の中心都市である 。

    日本でも四半期決算が義務化されたが 、米国企業の決算の方が 1 ~ 2週間早いので 、米国企業の決算が日本企業の決算のヒントになる 。

    世界最大の株式市場である米国株の株式時価総額が増えると 、外国人投資家がリスク許容度を高めて 、出遅れ感が生じる日本株を買い越す傾向がある 。日経平均を T O P I Xで割った指数は頭文字をとって N Tレシオというが 、 S & P 5 0 0を T O P I Xで割った指数は S Tレシオと呼ばれて 、外国人投資家の日本株買い越し額と高い相関がある 。

    I S M製造業景況指数が回復してくると 、タイムラグを伴って日本の米国向け輸出が回復する傾向がある 。日本の自動車販売は長期間にわたって不振であり 、日本の自動車メ ーカ ーの収益は米国市場に大きく依存している 。自動車メ ーカ ーの収益を予想するうえで 、国内市場の分析の重要性は極めて低く 、米国市場と為替が最重要になっている 。

    企業の乗っ取りを目的とする投資家は 「レイダ ー 」 、株価を吊り上げて保有株の引き取りを求める投資家は 「グリ ーンメ ーラ ー 」と呼ばれる 。

    買収防衛策としての株式持合の強化を明言する企業もある 。積極的な海外 M & Aが評価されるダイキン工業の井上礼之会長は 「当社ぐらいの規模だといつ買収されてもおかしくない 。安定株主作りは必要 。今後は増資で 3 5 %程度まで下がった安定株主比率を 4 5 %まで高めたい 」と述べた ( 「日本経済新聞 」 2 0 0 7年 8月 3日 ) 。

    外国人投資家は日本企業同士の株式持合が増えていることを懸念している 。米国の大手公的年金の T I A A - | C R E F (教職員保険年金連合会 ・大学退職株式基金 )の企業統治責任者のヘイウォン ・チョイ氏は 「持合は経営者が説明責任を放棄しており 、強く反対したい 。 2 0 0 6年の王子製紙による北越製紙への買収提案は株主を意識した買収合戦になると期待したが 、北越による安定株主工作に阻まれ 、残念だった 」と述べた ( 「日本経済新聞 」 2 0 0 7年 6月 2 1日 ) 。

    いちごアセットマネジメントの社名の由来は 、果実の 「ストロベリ ー 」ではなく ( 「スティ ール 」 〈鉄 〉より柔らかいイメ ージがあるが ) 、 「一期一会 」であり 、過小評価されている日本企業の株式に投資する 。 「物言う株主 」ではなく 「物を聞く株主 」として 、経営陣との対話を通じて 、株主だけでなくあらゆるステ ークホルダ ーの利益追求を目指すという 。

    日本企業の投資先から歓迎されるアクティビスト ・ファンドには 、 ①投資ファンドの代表者が日本語を話し 、日本の事業をよく理解している 、 ②投資企業とのコミュニケ ーションが巧い 、 ③日本企業の意思決定の遅さにあわせた長期的投資期間をもつ 、 ④株主の利益だけを主張せずにステ ークホルダ ーにも気配りするという特徴がある 。日本の企業経営者や持合株主も 、アクティビスト ・ファンドや外国人投資家には様々なタイプがあることを理解すべきだろう 。

    日本企業同士の過去の敵対的 M & Aの失敗の背景をみると 、日本で敵対的 M & Aが成功しないのは 、 ①日本の事業法人や金融機関が敵対的買収者に株式を売却しようとしない 、 ②買収者も買収価格を大幅に引き上げるなどしておらず 、アグレッシブさが足りない 、 ③経営陣や従業員の反対 、 ④敵対的に買収されようとする企業に対する世間の同情 、などがあるためだろう 。

    米国議決権助言会社で 、日本株に投資する外国人投資家の議決権行使に大きな影響を与える I S S ( I n s t i t u t i o n a l S h a r e h o l d e r S e r v i c e s )は買収防衛策の承認条件として 、 ①社外取締役が 2人以上で全体の 2 0 %以上 、 ②取締役の任期が 1年 、 ③独立委員会の設置 、 ④社外取締役や独立委員会の構成員に経営関係者がいない 、を挙げた 。 4条件全てを満たす企業が少ないため 、 I S Sは多くの買収防衛策に反対を助言したようだ 。 I

    M B O増加の理由としては 、物言う株主の増加 、敵対的 M & Aの出現などによって 、企業上場の意味が問われていることが挙げられる 。 M B Oによる非上場化を発表した企業の経営者は 、って短期的な利益を求める株主の意向に左右されることなく 、中長期的視点から企業経営に専念できることを M B Oのメリットとして挙げる 。四半期決算の義務化や S O X法 (内部統制の強化を求める法律 )導入で 、上場のコストの増加が嫌気されている面もある 。


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