予想どおりに不合理  行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 [Kindle]

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  • 一般的な経済学だけでは説明しきれない、お金にまつわる人間心理の働きを、ユニークな研究実験を交えて解き明かす、行動経済学ブームを先導した著書のひとつです。

    選択肢A'を含めるとAを選ぶ確率が高くなる「おとり効果」から、最初の決断がその後に強く影響する「恣意の一貫性」、有名な「プラセボ効果」などといった様々な人間の行動パターンが紹介されます。同時に人間の行動が、場合によっては進んで自らに不利な条件を引き受けるように、人が決して利己的な動機だけを指針として行動しているわけではないことも示唆されます。

    本書を読むことで通常は意識し難い人間の心理パターンを知り、それを意識することで欲望からある程度は距離を取って適切な消費行動の選択を促すのが、本書が含むもうひとつのテーマであるように見受けられます。

    経済学よりは心理学的なものに対して好奇心をもつ方にとって、より興味深く読むことのできる著作でしょう。

  • 1章 相対性の真相
    値の張るメイン料理をメニューに載せると、たとえそれを注文する人がいなくても、レストラン全体の収入が増えるということだ。
    →メニューの中で1番高い料理は注文しなくても、次に高い料理なら注文するか。そのため、値段の高い料理を1つ載せておくことで、2番目に高い料理を注文するようお客を誘うことができる。

    4章 社会規範のコスト
    「お金vsプレゼント」
    何かしてもらったお礼にお金を渡すことによって気分を害することはあっても、ちょっとしたプレゼントで気分を害する人はいない。

    「デート相手には金額を伝えるな」

    7章 先延ばしの問題と自制心
    「決意表明で、なりたい自分になる」
    デザートの誘惑から逃れてみせると心に誓うダイエット中の人、消費を抑えて貯蓄を増やそうと誓いを立てる家族。自制との戦いはまわりにあふれている。
    →高圧的な「外からの声」が命令をくだせば、ほとんどの人が気をつけの姿勢になるということだ。

    10章 予測の効果
    「雰囲気が高級なら味も高級に感じる」
    私たちの味覚でさえ、ちょっとした情報で大きく影響を受けてしまう。

    11章 価格の力
    プラセボ効果や高いものがよい品質だと思い込みやすい特性が示されている。本来は、何の意味もない薬であっても私たちが価値があると思い込むことで、本当に価値があるものになってしまう。

  • 人間の行動が元来合理的なものではなく、不合理なものであるという主張が様々な実験をもとに実証されている。普段何気なく行動し、選択していることが根拠に基づいた不合理な判断であるということがわかった。身の回りにある様々なサービスや商品もこのような特性に基づいてデザインされているのだろう。

  • 行動経済学の入門書的な位置付け。時間のない方はエッセンスだけ読み飛ばしても良いと思います。

  • 行動経済学の幅広さが全面的に出ている本で、一般的なイメージの経済学よりかは心理学の側面が強いなーと感じた。
    身の回りの小さなことを扱っているのであるある!と共感できたり、それはどうなん?と思ったりっていう感じで自分に置き換えて考えられるところが面白かった。
    最後のあたりの不正に関する章はぜひオンライン試験でも取り入れてほしいと思えるような不正対策に関する話があった。十戒を試験直前の日本の大学生に読ませても意味はないと思うので、不正することで生じる他の学生への不利益を意識させるくらいがちょうどいいのではないだろうか。

  • 非常に良書。古典経済学との差異の説明もさることながら、実験手法から一般化まで丁寧に解説していて理解しやすい。これも科学なのだなぁ、と改めて実感。

  • 行動経済学が面白そうだなぁと書店をうろうろ
    とりあえず購入
    それぞれの人間の不合理な行動を解き明かす実験が具体的に書かれていて面白い
    ちょっと読むのに時間はかかった

    以下概略
    1相対性の真相
    人は自分の求めているものを、はっきりと分かっていない
    状況と絡めて、相対的に見たときに求めているものを知る
    松竹梅の竹を選びがち
    応用:サービスを提供する側では
    AとBにA´を加えるとAが売れやすい
    自分としては、周りと比較をしてしまうので「周り」を選ぶ
    手が届かないような人の生活は見ない

    2需要と供給の誤謬
    その商品群の価格は刷り込まれている(アンカリング)
    それと比較して高い安いの判断をする
    応用:日々の生活で無意識に習慣になっているものはアンカリングの影響でないか見直すと無駄が省けるかも?

    3ゼロコストのコスト
    人は失うことを本質的に恐れている
    お金を払うことに精神的な痛みを感じる
    だからこそ、無料に対して過剰に反応する

    4社会規範のコスト
    人は市場規範の中だけでなく、社会規範の中で生活してる
    社会規範の中でのほうが有意義に感じる
    (だからボランティアにやりがいを感じる?やりがい搾取?)

    5無料のクッキーのちから
    お金で何かを購入するときは市場規範の中で考える
    無料でもらうときには社会規範で考える
    応用:プレゼントもお金よりものを送るほうが社会規範の中で考えるので
    ありがたみが増す

    6性的興奮の影響
    情熱が判断に与える影響は自分の創造を超える
    応用:感情が高ぶっているときには行動、判断を控える
    運転はしない

    7先延ばしの問題と自制心
    現在バイアス⇒今の楽しみを優先する
    応用:自分で自分を統制するのではなく、外部の統制を利用することが先延ばしの回避につながる
    遠い将来の利益を確保するために(将来のための貯蓄)目先の利益も用意しておく(いくらたまったらご褒美とか)

    8高価な所有意識
    3つの奇癖
    ・すでに持っているものに愛着を感じる
    ・失うものに注目してしまう
    ・相手も自分と同じ目線だと思う
    応用:サービスを提供する側として
    1か月お試し利用で愛着を生ませる
    一度生活水準を上げるとそれを失うことを恐れる

    9扉を開けておく
    価値のない選択肢だとわかっていても、それを失うことを恐れる
    応用:定期的に不要な選択肢を消していく決断が必要

    10予測の効果
    自分が予測したとおりに現実を認識する
    応用:レストランオーナーとして
    店内の雰囲気、お皿、グラスまで気を使うことでお客様の予想を上げておく
    料理もそれなりの味に感じてもらえる
    ※面白い実験
    有名なバイオリニストを名前を伏せてストリートミュージシャンのように演奏してもらうと⇒他の無名のストリートミュージシャンと同額のお金しかもらえなかった
    でも、肯定的な予測は人生に楽しみを与える、つまり、有名なバイオリニストと知って聞いたほうが感動が得られる

    11価格のちから
    高い薬は効果を感じられる プラセボ
    実際に数値的にも効果が見える、そのくらい自己暗示が効果を引き出す
    だからジェネリックはなかなか浸透しない(この解決案はまだ出ていないらしい)

    12不信の輪
    共有地の悲劇の話・公共財ゲームの話
    応用:一度失った信用を回復するには、透明性と自己犠牲
    だから、食品の異物混入などは即座に公開して全品回収が理想

    13私たちの品性その1
    大きな犯罪よりも日々の雑多な不正のほうが多い
    人は少しのチャンスがあれば、かんたんにごまかしを実行する
    人は小軸であろうとする生き物だが小さな不正に対しては自分の中の正直監視モニターが作動しない
    ただし、道徳基準について思いを巡らすだけで、不正行為を抑える効果がある
    応用:聖書の朗読、会社の理念の唱和、選手宣誓、機密保持の署名など道徳基準に思いをめぐらせる仕組みづくり
    (スーパーに入る前に「万引きしません」と言う、書くとかすると万引きは減るのだろうか??)

    14私たちの品性その2
    ごまかしは、その対象が現金から離れるほど発生しやすくなる
    これから現金以外のクレジットや仮想通貨が多く使われる時代には、より人が不正をしやすい生き物という認識が必要

    15ビールと無料のランチ
    一般の経済学では人は合理的に判断、行動するものと考える
    しかし実際の人間の行動はさまざまな外部要因からの影響を受ける
    人の実際の行動から考えるのが行動経済学
    これを学ぶことで、人が心から望んでいることを達成するためのサービスを見つけられる、かも
    自分としては(消費者)自分が不合理な生き物であることを認識しておく

    以上

    各章にいろいろな実験が出てきたけど、その実験内容が面白かった
    行動について把握するために、どのような実験を行えばいいのかって考えるのが大変そうな学問だと思った
    すぐに応用に結び付けられるとは思わないけど、自分の自然な行動を見直してみるいいきっかけになったと思う

  • めちゃくちゃ面白い!行動経済学の本だが、難解さは皆無でユーモアもありとても読みやすい。自分自身の不可解な行動や選択の種明かしをしてくれているようでくまなく読んだ。人間って本当に不思議で面白い。。

    ・先延ばし癖に効くのは事前の決意表明(学生にレポートの納期を決めさせた実験)

    ・前もって予測したことの効果(美味しいと思って食べると美味しくなり、不味そうだと思って食べると不味くなる、ビールの実験)

    ・プラセボ効果、信念(強烈な思い込み)と条件付け

  • 行動経済学の入門書、ストーリー仕立てで分かりやすく、知識のない発売当初は非常にためになりました。

    およそ10年たち再読してみましたが、ある程度知識のある段階では、ストーリーが長く読むのが億劫になってしまいました・・・

    行動経済学ブームから時間もたち、今となっては多くの良書が出版されていますので、すでにこの分野の本を数冊読んでいる人にはおすすめしませんが、最初の1冊には最適です。

  • 認知バイアスを理解するのに読みやすい本

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