吸血鬼ドラキュラ (角川文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • スティーヴン・キングが「死の舞踏」で頻繁に取り上げていたものだから読んでみることに。今まで夏休みのテレビの洋画劇場でしか観たことのなかったドラキュラの原典に触れた!こんな話だったのね!読んでみると思っていた以上にモダンホラーのテイスト。19世紀に書かれたものとは思えないようなエンタメ性。蒸気機関に始まり電気もふんだんに使用されるような科学文明化した西ヨーロッパと旧トルコ支配の東ヨーロッパの伝統との断絶がまだ深かった時代。その当時の科学対伝説の闘いとも読めます。猛烈な低気圧の暴風雨で部屋に閉じこもって読みましたが雰囲気盛り上がります。これをテキストにキングがどのような講義を行なっていたか興味がわいてきます。
    電子書籍があったため角川版を読んでしまいましたが表紙絵が最悪。東京創元社版で読みたかった。

  • 現代、吸血鬼という概念は広く認知されすぎている。ハロウィンのコスプレでは定番だろう。吸血鬼が威厳を失ったこんな時代でも、本作はちゃんと不気味であり、サスペンスものとしてぐいぐい面白く読める。

    セクシーでダンディなドラキュラ伯爵を期待していたが、それは映画が作り上げたイメージだったようで、この原作の伯爵には色気はない(残念なことに口が臭いらしい…)。

    序盤、ジョナサンがドラキュラ城に軟禁されるところは不気味で、いいようもない不安感が漂う。
    ルーシーの容態が一進一退し、男たちが連日かわるがわる大量に輸血してなんとか助けようとするシーンも、看病する側の必死さが伝わってくる。輸血なんてそう何度もそう協力できることではない。

    伯爵は、終始、狡猾で非人間的なキャラクターとして描かれている。が、彼自身も、他の吸血鬼たちと同じく、終わりのない地獄に囚われている存在ではあって、最期には安らぎの表情を見せる。そこにはやはり少し切なさがある。

    伯爵の苦しみを一番理解していたのはおそらくミーナだ。復讐に燃える男たちに対し、伯爵にも憐みを持つように説くシーンは良い。ミーナの高潔さは、この話の希望の星である(本当にミーナは高潔である。そもそも、「3人から同時に言い寄られて困ってるの」という女友達の話を真摯に聞いてあげている時点で、ミーナの性格の良さは鉄板であろう。)。
      
    ただ実は、一番ぐっときたのは訳者あとがきだった。
    訳者・田内志文氏は、一転、実は「幽霊の正体見たり枯れ尾花」だったのではないか、という解釈の可能性を示す。
    本作は、全編を通じて手紙や日記の形で語られており、語り手の主観を域を出ない。つまり、必ずしも真実でなく、ギリギリの精神状態におかれた者たちの集団妄想の可能性もあるのだ。
    言われてみれば、日記や手紙には、何度も何度も「自分は頭がおかしくなっているのかもしれない」とか、「気が狂ったと思わずに聞いてほしい」といった言葉が出てくる。ジョナサンなんて、極度の恐怖と不安のあまり、白髪になっている。とても普通の精神状態とはとてもいえない。
    もしかすると、不安や妄想に憑りつかれた人たちが、よってたかって1人の異国の老人をつけ回し、ついには殺す話を読まされていたのではないか。怖ろしいのは結局人間なのか。
    あとがきで二重にぞっとさせられる仕組みが面白い。

  • 書簡体の文章は退屈し易いのだが、意外と抵抗なく読み進める事が出来た。
    吸血は想像しただけで吐き気に襲われる体質なので、生々しいシーンはなくて安堵した。
    しかしドラキュラ伯爵の弱点の多さには驚いた。
    十字架とニンニクが苦手で目にしただけで逃げたり、日が昇っている間は自力でしか移動が不可能?だったり、無敵なイメージとは正反対な点が却って魅力に感じたりもするのだろうか。
    打倒する一団からすれば運が良かったとも言えるだろう。
    人里離れた僻地?に聳えるドラキュラ城もなかなか不気味で惹かれた。

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