フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠 [Kindle]

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  • この本では、アメリカ食品業界の歴史に沿ってなぜ糖分や脂肪分、塩や食品添加物がこんなに大量に使われるようになったかを説明している。

    第二次世界大戦終了後、女性の社会進出が進み、より手軽に食べられる加工食品のシェアが急増したこと、糖分や食品添加物の過剰使用について食品業界が立ち止まって考える転機は何度もあったが、その都度利益優先の考え方に押されて自主規制には至らなかったことなどが、筆者独自の細かい取材により克明に記されている。

    筆者が取材をおこなった相手はアメリカ内外の大手食品会社の元幹部で今は内部告発者となった人など、何人もの人に詳細に取材をしており、その内容が紙の本換算で524ページにもわたって書かれている。

    情報量も多く、大変読み応えがある。

    加工食品の歴史と現状をこの本できちんと学んだ結果、自衛策として加工食品を極力避ける、という結論に自分の中では至った。

  • 数年前に借りて読んだが読み終わらず、再度借りて読み終えた本。改めて読むと、糖、脂肪、塩の魅力とリスクがよくわかる一冊。そして魅力的な素材だけあり、この素材に依存させらえるトラップの数々。リスクを理解しつつ付き合っていきたいと思う。

  • 一消費者として自分の健康に配慮しながら食べ物を買おうとするときにとてつもなく参考になる、食品を作る側の闇と葛藤を暴いた一冊。

  • 勧められて読み始めたけど、面白くなくて挫折。

  • 目的:食べ物を気を付けるために知識を付けたかったから。依存症のあるものと上手く付き合うには知識が不可欠
    要約:
    砂糖・塩・脂肪は次の性質をもつ
     1.安価である
     2.互いに補いあう
     3.食べ物に強力な「エネルギー」や「魅力」を与える
    一つ目の性質から、経済的に余裕がない家庭や住んでいる地域にスーパーが無ければ、砂糖・塩・脂肪が多く入った食品に頼り、健康状態を害してしまう。一般に新鮮な野菜は砂糖・塩・脂肪を多く含むジャンクフードよりも高価である。
    二つ目の性質から、低脂肪でもたくさんの砂糖を入れることで「魅力」を維持できる。
    三つ目の性質から、人々(特に小さい子供)は砂糖・塩・脂肪に対して摂取しすぎると依存してしまうようになる。また食品メーカも最小のコストで最大の魅力を生み出すためにはこの三つに依存せざるをえない。

    具体的なフードトラップ
    ・陳列棚の見えやすいところには砂糖・塩・脂肪が多い商品がある(逆に健康的な食品は隅の方)
     対策:必要なものをあらかじめ考えてから買いに行き、衝動買いをしない
    ・健康的な成分を見えやすくし、全体の砂糖・塩・脂肪の使用量を確認させるのを怠らせる
     対策:加工食品を買わないようにする。買うにしても砂糖・塩・脂肪が多く入っていることを意識する

    食品メーカに期待するのではなく、自分が食品を選ぶ選択権をしっかり持つことが大切である。逆に食品メーカは砂糖・塩・脂肪を巧みに活用し、この選択権を奪おうとしてくる

  • 砂糖・脂肪・塩と加工食品メーカーの切っても切り離せない暗い関係性を、膨大なインタビューや開示情報に基づき明らかにしたノンフィクションのお手本的な一冊。登場するメーカーは、今ではM&Aによって社名が消えたものもあるが、ケロッグ、クラフト、ゼネラル・ミルズ、コカ・コーラ、ペプシコなどの名だたるグローバル加工食品メーカーである。

    ”暗い関係”と明記したのは理由がある。この3つの原料は、いずれも多量摂取すれば人間の健康に害が出るものばかりである。一方、メーカーがこれらを少しでも減らそうものなら刺激的な味は消え失せてしまい売上は失墜、結局はウォール街からの厳しい圧力を受けざるを得なくなる。自社単独での削減の取組には限度があり、人々の健康を犠牲にしながら、食品メーカーはカネを稼いでいる、といっても過言ではない。

    本書では、この3つのそれぞれごとに、科学的な見地からなぜ多量摂取が人々の健康に害を与えるのか、加工食品メーカーの食べ物にはどれだけ多量の砂糖・脂肪・塩が入っているのか、政府や消費者団体による規制強化の動きとそれに対するメーカー側のロビイング活動など、多面的な観点から、この問題が解きほぐされている。

    食と健康に興味がある人であれば必読といえるし、ビジネス観点でいかにグローバル加工食品メーカーがここまでの成長を遂げたかに興味がある人にとっても、その鍵は彼らが得意とする消費者向けマーケティングの巧みさだけではなく、多量の砂糖・脂肪・塩で人々をジャンキーにさせたという製品開発にあるということを理解できる点で極めて示唆に富む一冊であると思う。

  • 食品会社は「食べたい」という欲求の元になる塩、脂肪、砂糖を大量に使って、消費者の胃袋を掴んでいる。
    「食べすぎていてもなお空腹を感じさせる作用がある」加工食品の存在が恐ろしい。
    そんな食品を売っている会社やその経営者が実名で出てくる本。
    政府と複数企業が出資して作られた研究機関モネルには、企業に都合のいい研究が行われている。
    各食品メーカーは「手軽さ」「コスト」を追求するために化学薬品を大量に投入している。

    糖や塩分は入れすぎると美味しさを損なうが、脂肪は入れれば入れるほど消費者に好まれる。そして、この3つの成分は、食品を長期間保存できるようにするために欠かせない。
    手軽で便利で長持ちする食品に、添加物とともに大量に入れられるようになり、アメリカ人の健康状態は悪化した。
    スイーツやスナックよりも、チーズや赤身肉のほうが飽和脂肪酸の量が多く、身体に悪いのは意外だった。
    農務相は食品業界寄りで、チーズや赤身肉を推奨している。

    新鮮で健康的な食べ物にはお金がかかる。肥満問題は経済問題でもある。
    経済格差による知識の差も、食料選択に関わってるかもしれないな。
    食品会社の戦略を理解した上で、食べるものを選択したい。

  • 食の問題に関しての『ニューヨーク・タイムズ紙』記者マイケルモスの力強い調査と追求力は眼を見張るものがある。渾身の筆圧が感じられる。日本にも、このようなジャーナリストが欲しいなぁ。
    フードカンパニーは、研究をして戦略立案とマーケティングを行ない、広告宣伝によってターゲットを陥落させる。企業の論理は、収益獲得に徹底してこそ、はじめて生き延びる。
    砂糖、脂肪、塩をめぐって、フードカンパニーのジレンマを深く掘り下げる。健康を蝕む可能性があることを知っていても商品を送り出すのである。
    砂糖には『至福ポイント』がある。そのポイントを正確に把握することが、食品会社にとってのコストダウンとなる。沢山砂糖を入れればいいというわけではない。
    子供は生まれた時から糖を美味しいと思う。3歳から5歳の時に塩味を覚えるようになる。塩味は、後天的な味とも言えるが、際限なく食べてしまう。食べ始めたら、とまらないのだ。
    子供の甘いものが好きな理由が明らかになり、それをどうやって飼いならすかが食品会社のテーマだった。『人が食べ物を選ぶ時に真っ先に考えるのは、栄養のことではありません。考えるのは、味や風味つまり満足感です。』糖分だけでは食べ物を魅力的な味にならない。人々を夢中にさせるには、糖分と脂肪分が両方含まれている必要がある。
    「なぜあなたは、痩せたいと思いながら、コーラを飲むのをやめられないのか?なぜあなたは、体脂肪を気にしながら、ポテトチップスの大袋を食べ切ってしまうのか?」
    コカ・コーラ北南米部門の元社長、ジェフリー・ダン。彼は同社屈指のコカコーラのセールスマンとして、ティーンエイジャーへの販売戦略を熟知し、飲料のスーパーサイズ化1リットルサイズを手がけ、「ヘビーユーザー」と呼ばれる人々の取り込みに奔走した。砂糖と炭酸をたっぷり飲ませることに成功した。現在ダンは償いのために、コカコーラを離れ、ミニニンジンを販売している。
    パフ状のコーンスナック「チートス」は欲しくてたまらなくなるような特徴を備えていて、そのひとつが「カロリー密度消失」という現象だという。チートスは口の中で溶ける。すると脳はカロリーが消え失せたと勘違いしてしまい「食べすぎだよ」という信号を発しない。
    お腹がすくから買うのではない。お腹がすく予定があるから、それを想定して買う。食品の選択は偶然が多い。必然的買い物は少ない。近くにある便利さとフードカンパニーの罠にハマってものを買ってしまうのだ。
    日本で発売されたのが、2014年なので、ここで指摘している問題は大きく変化している。糖質制限ということが言われ始めた頃に出されている。グッドジョブ!

  • ニューヨークタイムズのジャーナリストによる,加工食品業界の裏側に迫った一冊.

    安価で簡単,そして美味しい加工食品を研究開発しているメーカーがどのようなモチベーション,方法を用いて人々に製品を届けているのか,大手企業の重役や研究者にインタビューをしつつまとめている.

    企業の一番のモチベーションは利益であり,人々の健康はあくまで消費者の責任である,のは当然であろう,という前提意見をもち読み始めたが,研究され尽くされた人間の本能に訴えかける味付けや食感.
    無意識のうちにたくさんの加工食品を食卓に紛れ込ませるための多様なマーケティング方法をこの本で読んでからは,多くの一般市民がこれに対して,"自己責任"として対応していくことは困難であろうと感じた.

    IT 業界に規制が現在入ろうとしているターゲティング広告とかの議論と類似している気がする.

    加工食品メーカーの重役や研究者が,自社の製品をひたすら避けた食生活を送っていることも,すティーズジョブズが自分の子供には SNS は使わせないと言っていたことを思い出させる.

    本書では加工食品に多く使われる,塩分・脂質・糖分を柱として話が進んでいくのだが,まとめとして登場するポテトチップスは,研究され尽くされた味の吸収が良い塩の形状を利用し,最高の感覚を与える硬さを出すために利用される脂質,最後に原材料であるイモに含まれるデンプン(糖質)により更なる欲求を生み出す,この食べ物に対して人間は抗う術を持たないであろうことを事実をもって理解した.

    一消費者としては,便利さや美味しさには現時点では基本的に対価が伴うことを知ることが第一歩であると感じた.

  • タイトルをぱっと見たときの印象は、加工食品や食品添加物について執拗にディするような本かな~とも思ったが、そういうわけでもなかった。

    アメリカの食品会社のマーケティング戦略などビジネス的な視点の語り口もあり読みごたえがあった。

    舌先は甘味を感じやすい、といった小学校で習うアレ(味蕾地図という)は実は間違っていてホントは。。。
    ということを知りいろんな人にどや顔で真実を語りたい気分にさせてくれる。

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著者プロフィール

ニューヨーク・タイムズの敏腕記者。2010年に食肉汚染の調査報道でピューリッツァー賞を受賞。2006年にもイラク戦争の報道で、ピューリッツァー賞の最終候補になった。ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・ニュースデイ、アトランタ・ジャーナルコンスティチューションなどを経て2000年より現職。

「2014年 『フードトラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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