だまされ上手が生き残る~入門!進化心理学~ (光文社新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 進化心理学の入門書。進化心理学は、「遺伝子に還元できるところがあればそこに着目し、還元によって「人間にかんする諸科学の見通しをよくすること」」を目指す学問とのこと。「ヒトは文化で進化した」、「ヒトは〈家畜化〉して進化した」、「進化を超える進化」などに通じる内容だった。分かりやすくて、とても面白かった。

    「吐き気は、食中毒の防衛装置」で「現代の車酔いは、平衡感覚の混乱を食中毒によるものと誤認して、吐き気の反射を起こしてしまっている」、いじめは「動物時代のなごりで、誰かが犠牲になれば自分は安全だ」という心理の賜物、「派手な装飾をもつオスはふつう、子育てをあまりしません。子育てをしない種類だからこそ、外見で生殖競争が決まるのです」、現代社会では女性が養育資源を持てるようになったので「女性が男性を選ぶ、生物本来のありかたに戻ってきて」きている(選ばれる側の男性が着飾るようになる?)、「一夫一妻制に向けた文化形成によって、女性をめぐる男性の闘争が小さくなると、男らしさへの淘汰圧は極度に低下します」、「メスは子どもに母乳を与えないとなりませんので、栄養がそれほど豊富に摂取できない環境では、大きな体格を維持しないほうが進化のうえで有利であったにちがいありません」などなど。進化心理学、恐るべし。

    意識の役割についての著者の仮説は、特に興味深かった。人類などは社会集団を営むようになり「自己の欲求と調和しにくい社会的環境におけるストレスにさらされ、いやおうなく意識を生みだした」、「自己の内側にある「心のモジュール群」を統率すると同時に、外側の社会にむけて自己の行動の方針や姿勢を表明する「コミュニケーション」の必要にせまられ、登場した」、「意識は、社会的な場で協力をとりつけるときは、他者をだますのが上手に、すすんで協力をするときには、他者からだまされるのが上手にならないといけないようです。また、そうした社会的活動をしているあいだは、自己の内側にむかって、さらに、自分をだますのが上手になる必要があるようです」とのこと。要するに意識は自己欺瞞を生み出すために培われた能力ということ??

    関連する書籍がたくさん紹介されている。ジャレド・ダイヤモンドやスティーブン・ピンカーのものもあった。どれも読んでみたいな。

  • 進化心理学という学問分野があるそうだ。暗闇や高いところ、ヘビやゴキブリを怖がる人が多いのは、人間が進化する過程でそういう場所や動物が危険だったから。言われてみればもっともで、見通しの効かない暗闇を警戒しないものは闇に紛れて襲いかかってくる猛獣にやられてしまう可能性が高かっただろうし、ヘビを怖がらないものは噛まれて毒にやられてしまうことが多かっただろう。人間の腕とか、鳥の羽根とか、動物のデザインが環境に合わせて進化するのだったら、心の動き方も環境に合わせて最適化されて不思議はない。さらに人間は集団生活をする動物なので、それに必要な感情や心理があるようだ。そういう考え方をしたことはなかったので、新鮮だった。
    感情は理屈ではないと言われるが、進化とセットとして考えると理屈が通るのかもしれない。進化心理学の本を少し読んでみようと思った。

  • 進化心理学の入門前の入門書。

    自分としては進化心理学というのは心理学とは異なる、どちらかというと生物学寄りで「生得的開発機構の研究分野」のイメージがあります。

    本書は「高所恐怖症」や「食べ物の好き嫌い」などは心理学のオーソドックスな解釈から大きく離れているので、著者の「進化心理学は直観に合わないので学びづらい」という嘆きは自分も感じたりしました。

    著者も書かれている通り、じっくり学ぶには教科書の『進化と人間行動』のほうが良かったきもしなくもないですが、こちらの著者の幅広い知識が気持ちが良いといえば気持ちが良いので、もう何冊か読んでみたいと思います。

  • ファスト&スローのシステム1とシステム2につながるお話。もっといろんなパターンが知りたくなった。

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著者プロフィール

1959年東京生まれ。明治大学情報コミュニケーション学部教授。東京工業大学理学部応用物理学科(生物物理学)卒。同大学院物理情報工学専攻、企業の研究所や政府系シンクタンクをへて、1997年に明治大学に赴任。人工知能技術を遺伝子情報処理に応用する研究で博士(工学)を取得。専門は認知科学で、生物学と脳科学と心理学の学際領域研究を長年手がけている。著書に、『生きづらさはどこから来るか』(ちくまプリマ―新書)、『人間とはどういう生物か』(ちくま新書)、『ざんねんな職場図鑑』(技術評論社)、『なぜ疑似科学が社会を動かすのか』(PHP新書)、『だまされ上手が生き残る』(光文社新書)ほか多数。

「2022年 『だからフェイクにだまされる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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