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- / ISBN・EAN: 4988104087393
感想・レビュー・書評
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近未来、システムにより個人の「犯罪係数」を管理することで平和な社会を実現した日本の話です。詳細はネタバレになるので省きますが、「何が誰にとっての本当の正義なんだろうか。真に従うべきは何なんだろうか。」といったことを考えさせられました。与えられたルール・与えられた情報を疑いなく受け入れて、果たして本当に生きていると言えるのか。システムで管理されている事実はないものの、今の世の中は似たようなものなのではないでしょうか。大きな力に操られずに生きることは難しいと思いますが、何でもかんでも受け入れず、疑いながら主体的に生きようと思いました。
いやー!それにしても、シビュラシステムとかドミネーターとか、この設定・世界観大好きです!すごく面白かった!ただ、面白かっただけに「2」以降が下降線をたどらないかが心配…。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
SFにはディストピアものというジャンルがある。
AIに管理された完璧な理想都市を舞台に、社会の歪みやシステムの暴走を描く話だが、本作もディストピアものの系列に位置する。
時代設定がまた絶妙で、他のSFに比べ比較的近未来。人々の生活様式もそこまで変わってなくて乗りやすい。
新人管理官・常守朱を視点に据え、一係のドラマが展開するが、シビュラという神が君臨する社会の歪みが引き起こす事件は、現代に通じる病巣も孕む。
正義感が強く真っ直ぐだが、青臭く未熟な朱とタフな咬噛のコンビは秀逸。年の差体格差はもちろん、背景も価値観も異なる二人が様々な事件を経て互いへの信頼を深めていくのがイイ。それぞれの過去を背負った一係の面々も個性的で、特に征陸と宜野座のドラマには打たれた。
なにより面白いと思ったのは世界観。
ディストピアものの定石を押さえているのだが、登場人物が皆「シビュラとは何か」「シビュラの存在は個人に、そして社会にとっては是か非か」を考え抜き、自分の意見を持っている。
異分子として革命を望む槙島の存在が象徴的だが、人が人を裁くことに対する責任と覚悟が、この作品ではストイックに問い直される。
何故ドミネーターに引き金があるのか。
神=シビュラに判断を委ねても、最後に決断するのは人だからだ。
シビュラがもたらす功罪、それが生む悲劇と喜劇。
本作は人が人を裁く矛盾から逃げるなと痛烈なメッセージを突き付けてくる。
目の前で今まさに人を殺そうとしている人間を殺すのは正義か悪か問われれば必要悪と言うしかないが、必要悪が必要な理由を咬噛と槙島の関係性を軸に描ききり、ぬるま湯に浸かった善悪の価値観に容赦なく揺さぶりをかける。
骨太の刑事ドラマ、さらにはヒューマンドラマとしても見ごたえあり、終盤道を分かった登場人物たちの選択は胸が熱くなる。
惜しい点を上げれば、後半突然言及されるハイパーオーツ関連の食糧問題。
たとえば朱が自室で見てるニュースや新聞などで、クローン麦の存在や栽培法などの伏線が撒かれていたら違和感もないのだが、大詰めにさしかかった所で「実は食糧事情はこうなってて、アイツはこんな陰謀を企んでるんだ」と後出しされても唐突な感が否めない。
視聴者おいてけぼりというか、そこに繋げるならもっと上手い演出あったろうに(槙島が食に言及するとか、それを示唆するような本の話に絡めるとか)なんかアンフェア。
気に入ってるシーンは色々あるが、朱が部屋で寛ぐシーン。テイストを選べるオートサーバーとか、まさしく近未来!
ホロで模様替えしたり、全身ホロでコーディネートを変えたりなど、あと十年二十年先には一般市民にも浸透してそうな生活スタイルが楽しい。
雑賀が言ってた、祖父母と仲がいいほどホームユニットアバターとの関係が良好な根拠は何なのか気になる。 -
取り逃がしすぎ
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【成しうる者が成すべき事を成す】
攻殻機動隊のようなSFながらもサイマティックスキャンなどの技術背景、世界観が見事に作品に活かされた作品。
3の最後まで見て、1のキャラ達のその後なども踏まえてもやっぱり1が最高の内容でした。刑事物の追い詰める感・謎解き感が感じられてGoodです。
そしてやっぱり槙島。
なぜ犯罪係数が低いのか、そのカラクリを模したと描かれた(実際は模してない)ヘルメットの謎。それを解く刑事課メンバー。
少しずつ明かされる世界の全貌、槙島と狡噛の読み合いをたどる展開に高揚する。OPや音楽も良かった。 -
よく描けた世界観とストーリー。
冲方さんも関与しているのね。
なるほど。
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近年こんなに色々考えさせられたテレビアニメ作品て他にない。正義、秩序の在り方、思考の自由とコントロール、法とは何か。人間はみんな、育った環境や文化、そこで良くも悪くも育まれた価値観に左右される。培われた常識と良識(と思い込んでいる)ものの外にさえ出なければ、特別悩むことも苦しむこともない。占い師に「A ではなくBにしなさい」と言われ従うことは、とてつもなく楽な生き方だが、自分の意思は消え失せる。選択の自由があることは、劇中でもあるように苦しみだ。それでも選ぶことができるのは、人間の喜びであり、「選ぶという行為」そのものが、とてつもなく大きな価値ある行動だと思える。槙島は怪物だが、「人は、自らの意志に基づいて行動した時のみ価値を持つ」という持論は、色んな見方もできるけど、概ねわかる。
そして人間は、意外と知らぬ間、自覚ないままに社会にコントロールされていることも理解できる。奥深い。。。
劇中に登場する、狡噛と槙島が読んでいる作品群も、読んでみたい。 -
見終わって全体の流れを見直してみると、割とよくあるストーリー展開なんだけども。
一人の女の子が、新しい環境に入り、師匠について修行し、仲間と共に助け合い、出会いと別れがあり、成長していく。
とまぁこうなんだけども、そこを色んな要素で新しさを出してここまで面白いんだからホントに世の中捨てたもんじゃないわよ。
どうしても終盤の記憶が鮮明だからそこしかよく思い出せんけども、とっつぁんの話はコテコテ過ぎてむしろアリだし、最後の唐突なお色気シーンは、ここで今さら?的などうでもいい感だし、ついついニーチェとか言っちゃうのはご愛嬌だけども、やっぱり主人公の、田舎に帰ったら、おめぇ変わっただな、って言われそうな変わりっぷりが一番気に入ったのかな。
法律に対するコメントが熱くて好き。