ヴァリス〔新訳版〕 [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 前半、これは薬物中毒者の幻想の話なのだろうかと思うスロースタートなのだけれど、60%程読み進めていくとジェットコースターに乗っちゃった感じ。
    これは著者のディックの神秘体験とそこから出てきた神学哲学に関することがめちゃくちゃ乱暴だけどカラフルなビジュアルで迫ってくる。文字情報読んでるのに…というもの。仏陀もでてくる。ディックの宗教観もすごいのだが、これ陰謀論につながるやつではないかと思ったら、やはりご本人が襲撃されたことがあり、それについて陰謀論の傾向にあったと。なるほど。著者の人生を色濃く反映した作品なのだな。重い。重いよ。自分が正常だっておもってることなんてほんと不確かだわとしかいいようがない。そんな不安定な感じで最後まで読んでいくしかないのだ。
    宗教的なものに興味がある人は、個人の宗教観をのぞきみる気持ちで読めると思う。本当に個人的なものが反映されていると思う。生後一ヶ月で死別した双子の妹の死について彼はずっと考え続けているのだ。それが登場人物に反映されている。

  • 新訳の電子書籍版が出たので、旧訳を読んでからほぼ30年ぶりにこの小説を読んだ。口語体の訳の精度を上げたという話で、確かに旧訳ではさっぱり分からなかった本の内容が新訳ではよく分かるようになった。そして非常に面白い読書体験だった。

    『ヴァリス』を楽しめるようになったのは、訳の違いもさることながら、自分自身がこの30年の間に精神疾患やクスルク戦車戦など本書を読むのに必要な知識をより多く取り込んでいることも大きい。

    訳者解説でははっきり書いていなかったが、ファットの妄想は統合失調症の典型的な症状に見えるし、ファットが強制入院させられた精神病院の描写もものすごくリアルだ。

    覚醒剤中毒者が統合失調症患者と似た症状を呈することがあるというので、著者が元から病気であったのか、ドラッグの影響の方が大きいのか、そこまではディックに詳しくないので自分には分からない。

    素人の印象ではあるが、ディック氏はもとから統合失調症を患っていて、それがドラッグで悪化した、というものではないかと思う。

    しかし驚くべきことは、作者がファットとして完全に狂った状態を経た後に描かれているにもかかわらず、本書はまともに読める「小説」として完成していること。奇妙な小説であることは否定しないが。

    ネットで時々見かける、妄想にとらわれてしまったような人は、そうそう人をひきつける文章を書くことはできない。

    フィリップ・K・ディックの才能と障害については、おそらく専門家が病跡学的な研究をかなり進めていると思う。氏の本が電子書籍として次々に出されているので、それを読みつつ、いずれはそういう研究成果に触れてみたいと思う。

  • 膨大な情報が人を狂わせる、という小説。

    フィリップ・K・ディックは高校くらいのころから個人的なアイドルだ。全部は読んでいないが、いろいろと読んではいる。そういう自分から見て、本作はディックの円熟というか、今までにない壊れっぷりがとてもよかった。ただ、ディックの小説をいくつか読んでいる人でないと、本作は楽しめないのではないかという気はする。

    主人公はホースラヴァー・ファットというヒッピーくずれの男だ。実は彼はフィリップ・K・ディック自身でもある。つまり、ディックの別人格がファットなのだ。ディックはファット(つまり自分)が狂っていることを知っていて、客観的な視点でファットの行動を記録する、というのがこのヴァリスという本のスタイルだ。
    ファットはグロリアという女友だちの自殺によって狂気が深まっていく。彼はヴァリスと呼ばれる情報を発信するシステムから、啓示を受けたと信じている。自分の神学体系を作り上げていく。その過程で救世主と出会う。救世主はファットとディックが同一人物であることを指摘し、ファットは消える。
    しかし、救世主が殺されて、再びファットが戻ってくる。ファットは救世主を探して世界中を旅する。ディック自身もテレビから流れる映像にヴァリスからのメッセージを発見し、啓示を待ち続ける。

    現実のディックが書いてきた小説にはいつも模造品があふれていた。「電気羊」では、デッカードが最後に発見した本物のカエルが、実はロボットだということがわかるところで終わる。今までは、本物だと思っていたものが模造品だとわかったところで、解決になっていた。
    ヴァリスでも模造品は出てくる。ヴァリスと呼ばれるシステム自体、妄想の類なのだろう。しかし、おもしろいのは、模造品だとわかった時点で解決するのではなく、ファットを客観視していた(登場人物としての)ディック自身が啓示を待つことになる、つまり、模造品を本物だと信じてしまう。このあたりが今までのディック作品と違うところで、一歩踏み込んだ印象があった。そういうこともあって、今までにない感動があった。

    ディックの作品にはいつもある種の悲しみがある。そして、人間に対する深い洞察もある。これはディックの人間味であり、そういうものを作品に持ち込み、滲み出させることができたのが、ディックの持ち味だったのだと思うし、自分が魅了されるひとつの要素なのだと思う。

  • 難しかったけど面白かった!
    いやこれは後書きにあったとおり、読み方は人それぞれでしょう……新訳の解説を読んで納得しました。最初から最後までなんだかゾワゾワする小説でした。
    三部作の1冊目なんですね あと2冊も読みたいですね。

    1章を読み始めた時点で、真剣に読んだら精神をやられるんじゃないかと不穏な気配を感じ、ちょっと距離おいて読もうかと思いましたが、内容の難解さに頭をひねるうちに真剣になって読んでました。笑
    地球外から来た存在、人間は情報であり(情報になり)統合される、過去の声がリアルタイムに聞こえる 等々

  • 【由来】
    ・hontoの30%セールで。本を購入済で50割の上に30%なので。

    【期待したもの】

    ※「それは何か」を意識する、つまり、とりあえずの速読用か、テーマに関連していて、何を掴みたいのか、などを明確にする習慣を身につける訓練。

    【要約】


    【ノート】


    【目次】

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