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感想・レビュー・書評
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世界最大のイスラム人口を抱えるインドネシア。その国に14年間住んでいるが、いまだイスラム教のことを体系的に勉強したことがない。まずは、歴史から始めようと本書を取った。
本書は、定評ある河出書房の「世界の歴史」シリーズの第8巻。イスラム前史であるササン朝ペルシャの興亡から始まり、預言者マホメットの生涯から、15世紀のオスマン帝国によるコンスタンティノープルの攻略までを描く。
著者の前嶋信次氏は西域及びイスラム世界史の専門家。「アラビアンナイト」の翻訳も手がけられていて、本書も無味乾燥な歴史教科書に留まっていない。
「その時代の特徴をつかむにもっとも適当と思われる部分に照明をそそぎ、いわば局部描写というべきものを積みあげていくという方針」で、西アジア、中近東、北アフリカ、スペインでイスラム教が拡大していったかが描かれる。
読み物としても、娯楽性の高い歴史書になっている。
それにしても、カリフ(イスラム国家の最高権威者)に変態や奇人が多かったことに驚かされる。
「赤覆面の怪人物」「死者をムチ打つ」「おそろしき一夜」「奇人カリフ、アル・ハキム」というような小見出しを見ると、子供の頃読んだポプラ社の「江戸川乱歩・少年探偵団シリーズ」を思い出してしまう。
本書の中心は、いわば、イスラム世界の栄光の時代。イスラム文化もヘレニズムに培養されて育っていく。写真、地図も多く、良書であると思う。
個人的な興味は、そのような栄光が西欧の帝国主義に蹂躙されていくかであるが、それは19巻の「インドと中近東」に記されるようだ。
イスラム世界の歴史に興味のある人はお勧め。物語としても面白い。ただ、アラブ人の名前は追っていくのが、難しく、集中して読まないとわからなくなる。。詳細をみるコメント0件をすべて表示