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感想・レビュー・書評
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前嶋信次「イスラム世界」河出、つながりで。10世紀バグダードとコルドバに焦点をあてた、詩情豊かな、味わい深い、生活の世界歴史シリーズ。最近こういうのあまりないような気が。新版の中公の世界歴史が1、2章さいてやってるぐらいか。12ヶ月つづった田園賦は単調だったけど、イブン・ハズムをとりあげた恋愛賦は興味深く。また、後ウマイヤ朝の歴史を簡易に知れたのもよかった。人種宗教に寛容とされた後ウマイヤ朝なのに、返す刀で、父はムスリムでも祖父がキリスト教徒だと、キリスト教徒の孫、とさげすまれた高官サンチュエロが出て来るあたり、矛盾を感じる。/財宝を隠してると疑われた盲目の元カリフが、その気に入った庭園を現カリフに使わせないように案じた一計。ビザンツから入ってきたという廃カリフを二度とカリフ位につけまいとする目を潰す行為。自分たちの固有の言語に対する再評価、シュービーヤ思想、イランの民の間にだけ起こったわけではないが、特にイラン人の間に強く、シリア語、ヘブライ語、トルコ語を固有とする人々の間にも動きは見られた。思いがけず金持ちになった人が、焦って使い果たそうとするのはなぜなんだろう、と思わされるエピソード。そして栄達し零落しまた復活した際、自分を見捨てた元の友人がすり寄ってきたのを、受け入れるふりして叩きのめすエピソードも。茴香を入れた二種のザクロジュースが眼病によく効いた、という話。嘘を言うのはその人の魂に暗い裂け目があり、恐るべき精神的奇形に悩んでいる明らかな証拠である。
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